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FASHION 百“靴”争鳴

【レーデルオガワのコードバン】 工場の新設とオリジナルブランドは三郎の夢だった。Vol.3

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百靴争鳴。日夜美しい靴作りに情熱を燃やし合う、異色の靴職人たちへのインタビュー集。

ひとりの職人としてコードバンに向き合った20代、レーデルオガワを背負って立つ後継者として悪戦苦闘した30代を経て、飛田さんは満を持して三郎さんの悲願を叶えました――

人に使われる人間にはなるな

われわれの工場は水質検査で引っかかったことがありません。染料は都度使い切りますからね。こいつは開封すると腐っちゃうんです。一枚だけその色が欲しいという場合は数がまとまるまで待ってくれるようお願いしています。

環境問題には真摯に取り組んでいますが、どうしたって工場は肩身がせまい。見渡すかぎり原っぱだった(創業の地の)流山はいまや住宅が増えて、子育てに やさしいまちといわれるようになっています。建物も古くなり、手狭にもなっていた。そんなわけで流山から東に10キロほどのところにある工業地帯に工場を建設しました。

Courtesy:LEDER OGAWA

我が家は埼玉にあります。片道50キロ。毎日2時間かけて通っています。すぐ近くに妻の実家があるんです。そこは家族優先、職人優先です。

起床は5時。起きると そっとベッドを抜け出して、そのまま工場へ向かいます。始業時間は8時半ですが、簡単な食事を済ませると8時には作業着に袖を通します。

仕事終わりは6時過ぎ。まっすぐ帰っても8時を回ります。そこから食事して、風呂に入って……睡眠時間は5時間がいいところです。

この生活を10年つづけていますが、辛いと思ったことは一度もありません。

あれもやりたい、これもやりたいと次から次へと to do リストが更新されていくんです。そしてこれを一つひとつ潰していくのが楽しくて仕方がない。

三郎は ひょっとしたらぼくの性格を見抜いていたのかも知れません。

おまえは人に使われる人間になるんじゃない―― 三郎が中学生のぼくを手招きしてそういったのは親類縁者が集まった正月のことでした。三郎はつづけていいました。なにか商売をしたいなら2000万円までなら出してやるぞって。すでによい感じで酔っていたから どこまで本気だったのかはわかりません。ただ、ぼくにかけてくれたこの言葉は いつまでも心に残っていました。

(現社長の)母から継ぐ気はあるかと尋ねられたとき、二つ返事で手をあげました。ぼくは学校を出て介護の仕事をしていました。いつかは起業を、と考えていましたが、家業を継ぐ発想は微塵もなかった。そもそも母方の実家がコードバンを生業にしていることさえ記憶の彼方でした。それまでのコードバンの思い出といえば 石ころ代わりに蹴飛ばしたランドセルくらいですから(笑)。でも、やってみたかった。家業に入ったのは25(歳)の年です。



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