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FASHION 百“靴”争鳴

【ハロゲイト 松田哲弥】丸2年家に帰らない!? クレイジーな下積み時代を通してたどり着いた木型つくりの高み。最終回

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シェイプひとつで勝負できる木型は潔い

エスぺの先生が声をかけてくれて、中退してから製甲(アッパーを縫製するプロセス)の取り仕事をやったことがありました。これがね、なにをやっているか さっぱりわからなかった。釣り込まれるまえの革ですからね。それもあって なおさら木型を面白いと思うようになりました。靴をつくる道具のひとつとはいえ、木型はプロダクトとして完成している。

神戸レザークロスを辞めたのは自分が考える理想の木型をかたちにしたかったから。自分はなにかに突き動かされるように あてもなく辞めました。

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木型の生産は中国に移行しつつありました。たとえ量産の機能が よそにもっていかれたとしても、マスターラストのニーズはなくならないはずだ。だから食いっぱぐれることはないだろうというのが自分の見立てでした。といっても それはまだずっと先の話です。

当座をどうしのぐかという心配は杞憂に終わりました。次から次へと仕事が舞い込んだんです。寝ずに木型を削っているというのは知れ渡っていて、「あいつは死に急いでいる。なんとかしなければ」と思われていたそうです(笑)。

いまも昔も木型はメーカーがつくるものです。自分が知るかぎりピンの木型職人というものは存在しません。20代で独立した海のものとも山のものともわからない人間にみんなは仕事を振ってくれたんです。感謝しかありません。

坪内浩氏

レディス畑でキャリアを積んだ自分がメンズに足を踏み入れるきっかけはツボさん(坪内浩)。「うちの木型を削ってみないか」って声をかけられたんです。ツボさんは自身の名を冠したブランドで知られる大御所ですね。こうしてクラシックな紳士靴の世界と向き合うことになりました。

すでに独立していた自分は誰かに教わる環境にはありません。古い木型を買ってきては研究を重ねました。

少しだけ、余裕が生まれた

久しぶりにガキのころの趣味だった釣りを再開しました。毎週末のように通っているのは御殿場。ターゲットはニジマスです。12時間休みなしで釣り糸を垂らしていますが、帰るときには後ろ髪が引かれます(笑)。いまはルアーをつくっています。リングづくりで培ったノウハウを駆使して。

ようやく余裕ができたのかも知れません。さいきんは人並みに寝るようになりましたしね。そうそう、少しまえには結婚もしました。

 

松田哲弥(まつだ てつや)
1979年神奈川生まれ。高校卒業後、地元東京シューズの横浜ルーインズのアルバイトを経てエスペランサ靴学院入学。半年足らずで中退し、アルバイト先だった神戸レザークロスに2002年に入社。木型部門に配属される。2005年、木型職人として独立。2020年、仲間とともにハロゲイトをローンチ。

【問い合わせ】
HARROGATE
https://harrogate.jp
 

Photo:Simpei Suzuki
Text:Kei Takegawa
Edit:Ryutaro Yanaka



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