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FASHION 百“靴”争鳴

【ハロゲイトの木型職人、松田哲弥の哲学】靴の良し悪しを決めるのは、木型が5割! Vol.3

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アメリカの木型がスクエアになるわけ

シューデザイナーにも木型を削る人がいます。つま先が時代感を表現する部分だからです。ロングノーズ、ショートノーズ、ラウンドトウ、スクエアトウ。制約の多い紳士靴にあって、つま先にはたしかに時代があらわれます。

木型を削るといっても、彼らがいじるのは つま先だけです。履き心地を決めるつま先から後ろは木型屋の聖域だから、というのが その理由です。

しかし自分にいわせれば つま先だって手を出しちゃいけません。なんとなれば、すべては紐づいているからです。つま先をいじればボールジョイントからなにから見直さなければならないのが ほんとうです。

アメリカの靴を例に考えてみましょう。あの国の靴は基本、スクエアです。ラウンドと呼ばれている靴も、実際にはラウンドスクエアといったほうが正しい。アメリカの靴は木型の構造上、スクエアにならざるを得ないんです。振りの大きい木型は角を残さないと さまになりません。

アメリカの履き心地、フランスの見栄え

アメリカと対照的な国がフランスです。フランスの木型はきれいなラウンドを描きます。ご推察のとおり、振りが小さいからです。

木型には中心線というものがあります。アメリカの木型は3本、フランスのそれは2本です。つま先に向かう前半部の真ん中、土踏まずの真ん中、それが中心線です。土踏まずが大きく屈曲しているアメリカの靴はここに2本の中心線が入るので、全部で3本になります。

フランスの木型といえば直線的なアウトラインも特徴です。直線にみえて、じつは定規で引いた線ではありません。いってみればフリーハンドで引いた線のよう。自分は有機的直線といっています。

ハロゲイトは3本のラインを入れる構造を採りつつ、フランスに負けないラウンドトウと有機的直線をかたちにしています。

木型の正解をかたちにしているだけ

ハロゲイトには これまでの紳士靴にはない新しさがある? (スニーカーに代わる靴として注目を集める)オールデンやパラブーツといった名門老舗の定番とも異なる雰囲気をたたえている? なんだか酒が呑みたくなってきました(笑)。

ありがたいお言葉ですが、自分らしさということは考えていません。手を介したものは意図せずともその人らしさがあらわれるものでしょう。

自分にとっては それよりも木型の正解を導くことのほうが重要です。足とデザインをつなぐ役割を果たすのが木型。つなぐための正しいかたちを追究するだけです。

自分の木型には奇を衒ったところがありません。設計思想に従っているから、引っかかりがない。引っかかりは場合によっては その靴のキャッチーになりうる部分です。ただただ設計思想に忠実に削ったその木型は、いってみれば無味無臭。新しく感じられたとすれば、そんな木型は これまでなかったということでしょうね。



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