木型を使いまわさない
ハロゲイトの木型の特徴の第一に挙げられるのはモデルごとに木型を削っているということです。
単純な話、スリップオンと紐で調整できるオックスフォードがおんなじ木型でいいわけがありません。構造が異なればフィッティングの考え方も変わってしかるべきです。
例外は外羽根とサイドゴア。このふたモデルのみ、おんなじ木型を使っています。前者は紐で調整できるのみならず、羽根の可動域も大きい。後者は(甲が多少緩くても)足首でフィットさせることができる。フレキシブルなデザインなんです。ただし おんなじサイドゴアでも筒丈が長いモデルは それ用の木型をつくっています。そのままだとスネにあたる可能性があるからです。
多くのブランドはひとつの木型を使いまわしています。いちいち木型を起こしていたら金がかかって仕方がないんです。ハロゲイトは自分がやっているブランドですからね。そこは採算度外視です。
3次元でねじれを処理
ベース木型は、あおり歩行をサポートするボトム、過不足なくフィットする踵とボールジョイント(親指と小指の付け根をぐるっと一周させた部位。靴づくりの要)をその特徴としています。勘どころは、仕上がってみれば抑揚を抑えたフォルムにあります。
昔の靴は左右同型でした。つまり、酔っ払って左右あべこべに履いてしまう、という失敗が存在しなかった(笑)。
足は内に振ったシルエットを描きます。フィット感を考えれば、左右同型は よろしくありません。長じて足のかたちを踏まえた設計思想が生まれます。最初に考案したのはチャーチといわれています。1850年のことでした。
これはハロゲイトの型紙です。ねじれているのがわかりますよね。内に振った構造なのにすらりとみえるのはなぜか。そのねじれを3次元で処理しているからです。こいつが、第二の特徴。
この木型はグッドイヤーウェルト製法を前提につくられています。コルクフィリングと革の中底で構成されたグッドイヤーウェルトは履き込むうちに沈んでいきます。沈むことでよりフィットしていくように設計されているんです。セメント製法でつくったら この木型のポテンシャルはほとんど生かされません。