【後編】「IT系社長の妻」全てを手に入れたはずの女、その末路とは？

「舞香さん、結婚を前提に付き合いませんか。お金には苦労させません」

出会った日にホテルへ。翌朝突然のプロポーズ。

最初は冗談でしょ、と受け流していた舞香だったが澤田は本気だった。しかも女性慣れしていないせいか、引き際も分かっていない。澤田があまりに粘り続けるため、舞香は根負けする形でOKした。

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「……いいよ、楽しかったし。でもひとつだけ澤田さん、約束してください。私を絶対に寂しくさせないで。お金よりも何よりも、私を寂しくさせないってこと……。ねぇ、お願い」

澤田は強く頷き、舞香をそっと抱きしめた。

入社半年で退職することになった舞香は、澤田の所有しているマンションに転がり込む形で同棲を始め、出会ってから３ヵ月で入籍。舞香の願いで、インスタ映えするような、大きなダイヤの指輪も購入した。

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仕事から逃げたかった寂しい女と、女性経験はないが地位のある男のふたり。

「心から愛し合って」ではなく「タイミングと立場がぴったりと合ったから」という結婚。だが、それなりに相性は良かったのだろう。舞香は毎日、澤田のために夕食を作る。日中は毎日のようにヨガや英会話、エステなどに通い、のんびりと疲れた東京での日々を癒していた。お金ならいくらでも澤田が出してくれる。

帰宅すると美しいパートナーが待っていることに、澤田も喜びを感じていた。偶然出会ったふたりの日々は、しばらくは穏やかに過ぎていった。
 

しかし、上場を目前にしているという澤田の会社が忙しくないわけがない。