革も作りも既成靴の中では最高レベルです!
さて、2022年最初となる249回目も やっぱりエルメス。ジョンロブ(John Lobb)が手掛けていたシューズ「ジョン(JOHN)」です。
ちょっとだけジョンロブのお話を。1866年にジョン・ロブ(John Lobb)氏がロンドンのリージェント ストリートにビスポークを専門とする靴の工房を開くことでスタートしたジョンロブは、2代目ウィリアム・ロブ(William Lobb)氏のときに 満を辞してパリに進出するんですが、紆余曲折あって経営難に陥ってしまいます…。
そんなジョンロブに白羽の矢を立てたのが、あのエルメス。職人の技術力や質の高さに惚れ込み、閉鎖寸前だったパリの店と商標権を買い取り、1976年には傘下におさめるわけです。
1981年からはエルメスの指導により既製靴のラインをスタートさせ、これが"ジョンロブ・パリ"となります。現在、既製靴として販売されているジョンロブは このジョンロブ・パリを指しており、ビスポークシューズ(注文靴)専門の店としてロンドンのセントジェームス ストリートで創業家によって経営されている「ジョンロブ・ロンドン」とは異なるんですね。
こんな流れもあって、エルメスでもジョンロブが生産を請け負うMADE IN ENGLANDの既成靴が展開されていました。
さすがジョンロブが手掛けているとあって、質剛健でありながらエレガントさも備えていたんですが、どうも革の色が独特…。デザインもひとクセあるものが多くて、なかなか琴線に触れるものに出逢えなかったんです。
ところが、ある日パリの友人から「MADE IN ENGLANDのエルメス、オーソドックスな黒のウィングチップがあるけど、興味ある?」との一報。
ふたつ返事で購入を依頼し、すぐに発送の手配をして貰いました。
一時期アメトラに傾倒していたので、外羽根のウィングチップは幾足も履いてきましたが、内羽根は お初。シャープなノーズに打ち込まれたメダリオンも新鮮でしたし、アメリカ製の革靴とは一線を画すピッチの細かさ、仕上げの美しさにもあらためて感動しました。
そして、モデル名の「ジョン(JOHN)」。これが初代ジョン・ロブ氏から名付けられたのかは不明ですが、なんだか夢がある。
1976年生まれなため、同年エルメス傘下になった"ジョンロブ・パリ"には並々ならぬ思い入れがあって、なにかの記念やご褒美的に靴を買い足してきたんですが、この「ジョン(JOHN)」に関してはネーミングに加え、エルメス名義というのも重なる。
購入してから数年なかなか履きおろせない状態が続き、後に追い討ちをかけるように「ジョンロブが手掛けるMADE IN ENGLANDのエルメスは 今後展開する予定がない」というウワサが…。真意は明らかではありませんし、こういうのは意外とくつがえったりもするんですが(笑)。
ますます履けなくなっていましたが、"良い靴は素敵な場所へと連れて行ってくれる"と言いますし、"靴魂"企画を始めて、やっぱり靴は履いてこそナンボだなと思いましたので、45歳を機におろし、2022年はコレを履いて精進したいと思います。
だいぶ物欲は枯れ、必要なもの、欲しいものは既に手元にある気がするのですが…、301回以上は続けていきたいので、ぜひお付き合いください。
2022年もよろしくお願い致します!
Photo:Shimpei Suzuki
Text:Ryutaro Yanaka