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車のスマホ化?トヨタEVは圧倒的な質と量でライバルを叩きのめす!あとは日本政府次第ではないか

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

「EVに消極的」と思われていたトヨタが、2021年12月、2030年までにグローバルで30車種の純EV車を発売、同年には350万台の純EVを販売するという、衝撃のバッテリーEV戦略を発表した。

豊田章男社長自らが壇上に立ち、開発中のトヨタ&レクサスブランドのバッテリーEV15車種を公開。2025年ごろまでに順次投入する計画だという、トヨタ。これまでの戦略から一転したようにも見える今回の発表の真意とは!? また、このタイミングでの投入で、バッテリーEVで先行するテスラや欧州勢、中国メーカーに勝つことができるのだろうか。

 

■2021年末のトヨタショック!! 2030年までに30車種発売の計画

今回の豊田章男社長によるスピーチは強烈だった。当初は、すでに発表している「bZ4X」を含むbZシリーズ5台が展示されていたが、途中から背面にあったベールが解かれ、トヨタとレクサスブランド併せて全16台を公開。しかもすべてが、市販化を前提としたコンセプトモデルだというから驚きだ。

2021年内、いや、過去10年間に筆者が見てきたプレゼンテーションの中でも、ナンバーワンのインパクトだった。発表された内容のホットポイントは以下のとおりだ。

●2030年までにグローバルでバッテリーEVを新たに30車種、乗用・商用各セグメントにおいて、フルラインでバッテリーEVをそろえる
●トヨタ&レクサスブランド全体で2030年までに、バッテリーEV(FCEV含め)を350万台販売する
●レクサスブランドは2035年にグローバルで販売する新型車を100%、バッテリーEVにする
●バッテリー開発関連にかける新規投資額を(9月に発表した)1.5兆円から2兆円に増額する

トヨタ&レクサスブランドのEVラインアップ。しかもすべてが、市販化を前提としたコンセプトモデルだという。最終的には、2030年までに30車種にまで増やすというから驚きだ。

今回の発表会で公開されたのは、bZ4を含む16車種。これだけでも壮観なのだが、2030年までのあと8年ほどで30車種、つまり年平均で3車種以上のバッテリーEVを出すことになる。また350万台という販売台数目標のインパクトも強烈だ。トヨタの2020年グローバル総生産台数は790万台、つまり約3分の1を超える規模だ(※コロナ禍の前の2019年は905万台)。

ちなみに日産の2020年グローバル販売台数は419万台、ホンダは439万台、トヨタの目標の大きさがお分かりになるだろう。なお、フォルクスワーゲングループの2020年グローバル販売台数は約1000万台、そのうち電動車(EVとプラグインハイブリッド車)は約21万2000台だ。2021年(1~9月)は16万7800台程度なので、EVの販売台数自体は、さほど伸びていないことになる。

 

■日本政府への強烈なメッセージでは!?

豊田章男社長は冒頭に、「カーボンニュートラルの実現に向けたトヨタの戦略、その中で、有力な選択肢であるバッテリーEVの戦略について、お話をさせていただきます」と前置きをし、続けて、「多様化した世界で、何が正解か分からない時代を生きております。その中では、1つの選択肢だけですべての人を幸せにすることは難しいと思います。だからこそトヨタは、世界中のお客様に、できるだけ多くの選択肢を準備したいと思っております。」という趣旨でプレゼンを進めている。

豊田社長は、ちょうど1年前の2020年12月17日、自工会(一般社団法人日本自動車工業会)の豊田章男会長として行ったオンライン記者会見で、(当時の菅首相の「2035年には新車販売の100%を電動車にする」という発言を受け)2050年にカーボンニュートラルを目指す総理の方針に全力でチャレンジする。ただし、国内の乗用車400万台をすべて電動化したら、原発が今よりも10基、火力ならばプラス20基が必要となる規模となる。それらを覚悟のうえで、他国(米中欧州)と同様の政策的な財政支援を要請したい、としていた。

レクサスブランドは2035年にグローバルで販売する新型車を100%、バッテリーEVにすると発表した

筆者は、今回のトヨタの発表は、「自動車業界は、ハイブリッド車もバッテリーEVも燃料電池も水素燃料エンジンも、カーボンニュートラルを目指して全部やる。だから日本政府も、政策的な財政支援の構築を約束して欲しい。でないと、これまでのような日本の産業や経済モデルは崩壊するよ」という、強いメッセージだと受け止めている。100%バッテリーEV化することは、少なくとも現時点において、CO2削減のための正解ではない。それを知ってか知らでか、「全車バッテリーEV化せよ」とする政治家たちに、豊田社長は、釘を刺したのではないだろうか。

 

■圧倒的な量とクオリティで叩きのめしにくる!!

他メーカーがやっとの思いで1~2車種のバッテリーEVを出すのを横目に見ながら、今回の発表会で「私たちの未来のショールームへようこそ!」と、16車種のEVフルラインアップを公開するインパクトは、まさに戦略家「トヨタ」だと認めざるを得ない。圧倒的な量とクオリティで、中国勢やテスラ、欧州勢などを叩きのめしていくことだろう。

「経営的な話で言うなら、選択と集中をしたほうが効率的かもしれません。しかし、私は、未来を予測することよりも、変化にすぐ対応できることが大切だと考えております。だからこそ、正解への道筋がはっきりするまで、お客様の選択肢を残し続けたいと考えています。」と話す豊田章男社長。

これらの豊田社長のメッセージに対し、日本政府はどう答えてくるのか。政府の賢明な方策を期待したい。果たして、発電をどうするのか、充電設備をどうするのか、車を電力化する前に解決しなければならないことはたくさんあるのではないか。

 

Text:Kenichi Yoshikawa
photo:TOYOTA
Edit:Takashi Ogiyama



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