FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION 百“靴”争鳴

【ブーツブランド、ホワイトクラウド】ドレスワークというあらたなスタイルを創造した後藤庄一の物語 Vol.1

百靴争鳴。日夜美しい靴作りに情熱を燃やし合う、異色の靴職人たちへのインタビュー集。

後藤庄一さんが手がけるホワイトクラウドは規格外のかたまりです。

丸ごと一足ひとりでつくってエントリープライスはアンダー10万円。ワークブーツが欲しいと思っているなら、素通りしたら後悔すること請け合いです――

丸2日かけるヒール仕上げ

ホワイトクラウド(WHITE KLOUD)の意味は文字どおり、白い雲。雲のように自由でいたいという思いで名づけました。“C”を“K”に置き換えたのは、1950年代のカスタムカーカルチャーへのオマージュです。彼らは“KUSTOM KULTURE”と表記することで、そんじょそこらの改造車とはわけが違うぞと高らかに宣言しました。こっちは知人からもらったアイデアでした。

看板倒れにならないよう、ものづくりもこれまでの常識にとらわれずやっていたら手間のかかることばかり増えて、うれしい悲鳴をあげています。

これは納品前のブーツ。お客さんは外国人です。素材は水染めのコードバン。わたしが愛してやまないレザーです。

(アッパーの美しさもさることながら、ヒールのしたたるような光沢に見入っていると)

ヒールまわりはホワイトクラウド自慢のパーツです。

ここまで光らせるのは並大抵のことではありません。まず、グラインダーで荒削りをしますが、番手は60、100、150、240の4種類。グラインダーが終わったら今度は手仕上げです。サンドペーパーで240、320、600……とやっぱり徐々に細かくしていきます。この下準備があるかないかで仕上がりは がらりと変わります。

色づけも すんなりとはいきません。イメージと違ったらやり直すことも しょっちゅうです。

わたしの手が離れるまでゆうに2日はかかりますね。我流でたどり着いた、もっとも美しいと信じるヒール仕上げのプロセスです。

この仕上げ(ハイシャイン)は別料金で2万円頂戴していますが、正直、割に合わない。でも割に合わないからって辞めるのは違う。それに水染めコードバンのアッパーとの相性が最高なんですわ。そんなわけで辞めたくても辞められません。

世界でもレアな水染めコードバンのアッパー

コードバンは姫路の名門、新喜皮革で鞣してもらっているもの。従来のイメージを裏切る繊細な佇まいが最大の特徴です。そしてその繊細さを何倍にも高めてくれるのがレーデルオガワという仕上げ専門の工房が得意とする水染めです。業界ではアニリン染めとも呼ばれるその仕上げは、文字どおり水面を思わせる美しさをコードバンにもたらします。京都帝国大学、いまの京都大学で学んだ創業者が20年かけて完成させたそうです。

この釣り込みがとっても骨が折れる。オイルをたっぷり含ませたコードバンと違って、水染めのそれはなかなかいうことを聞いてくれません。つま先のシワを均すように釣り込み、甲の傾斜は前もって癖づけすることでかたちにしています。ほかにはないアッパーですからね。これも我流で編み出したものです。

風合いが揃っているのもホワイトクラウドのこだわりです。仕入れる革は一枚一枚、自分の目で確かめて選んでいます。ふつう、革屋さんはやらせてくれません。信頼関係があるからこそ許してもらえる特権ですね。

そのほかのラインナップはイタリアのブリターニャ社のアリゾナ、同じくイタリアのバダラッシ社のミネルバリスシオ、アメリカのホーウィン社のクロムエクセルあたりです。ラインナップに共通するのは耐久性が高く、経年変化が味わえて、手入れがしやすいこと。この3つです。

360度、手間暇かけています

本音をいえば、できるだけ手を省いて数を稼ごうと思っていました。ほら、そのほうが儲かるから(笑)。だけどだめなんですよね。より良い方法を知ってしまったら、見なかったことにすることはできませんでした。

ハンマリングもそう。ハンマリングとはアッパーをハンマーで叩いて木型に沿わせるプロセスです。叩いているとね、音が変わるんです。はじめはコンコンコンって鈍い音。それがあるときを境にカンカンカンって透き通るような音に変わる。革が木型にぴたりと沿った証です。これは職人仲間から教わったことでした。

先芯や月型芯には通常の倍近い5㎜厚のベンズを使っています。ホールド力が高く、歪みを抑えてくれるからです。そのまま釣り込んだら まとまりませんので、釣り込むまえに癖づけをしなければなりません。やっぱり我流の材料であり、工夫です。

糸はいちからつくっています。いわゆる3plyで、3本の糸を撚って、チャンを塗り込んでいきます。出来合えの3plyは細い。うちの3plyは出来合えの6plyに相当する太さがあります。

はじめのうちは出来合えを使っていましたが、強度に難があった。チャンも松脂を煮出すところからつくっています。

底付けはハンドソーンウェルト、ノルウィージャンウェルト、ステッチダウン……ひと通り揃えています。

ステッチダウンは名だたるワークブーツメーカーが採り入れてきた製法。ラインナップしてしかるべき製法ですが、リペアには向いていません。

これを克服すべく考案したのが一発目を手縫い、二発目をミシン縫いで仕上げたダブルステッチ。少々専門的な話になりますが、手縫いを採り入れることでアッパーにかかる負担を最小限に抑えることができるんです。つまり、度重なる修理にも耐えられるコンストラクションです。

手間暇をかけたものづくりは、目指す世界をかたちにしようと思えばもとより避けては通れない道でした。

日本のブーツに欠けていた味が、ホワイトクラウドにはある

目指したのは、わたしが学んだドレスシューズの思想、技術でアメリカ生まれのワークブーツをつくること。ホワイトクラウドを立ち上げることを決めた時分は ちょうどホワイツのセミドレスが注目を集めていて、しみじみ美しいと思ったものでした。セミドレスを見て、わたしがやりたい方向性がくっきりとした輪郭を伴いました。

味があるといっていただけるのはうれしいんですが、意識したことはありません。手の仕事は嘘をつきません。この手間が(インタビュアーのいう)味につながっているのかも知れませんね。

そうそう、フックの菊割(固定部分)は日本の職人さんにつくってもらった打ち具で叩いています。叩く(割る)とハトメの足が咲いた菊のように広がるので、菊割。立体感が欲しかったので細かく注文をつけています。フック本体は米国製ですが、我ながらいい感じです。

日本人だって、けっこうやるもんでしょ。

クラプトンのようなものづくり

オリジナリティということもことさら考えていません。デザインもつくりもウエスコやホワイツ、レッド・ウィングをお手本にしている。木型もそう。

でね、自分なりにつくり続けているうちに、こうしたほうがいいんじゃないか、というところが出てくる。そういうマイナーチェンジの積み重ねが、ホワイトクラウドを形づくっています。

スクエアラストはウエスコをベースにしています。エッジを利かせたボリューミーなあのフォルムがたまらなく好きだったからですが、サイドビューをもう少しすっきりさせたかった。そこで足のかたちにあわせて つま先を斜めに落としました。

(後藤さんのものづくりは、なにかで読んだエリック・クラプトンの生き様に通じるところがあった。彼はマディ・ウォーターズを“ぼくが実際にもったことのない父親の姿”といい、ブルースミュージシャンの先達に憧れて、真似て、自分のものにして、世界に誇るミュージシャンになった。プロフェッショナルの理想像がそこにはあった。「まるでクラプトンのようですね」というと、後藤さんはニコニコと笑った)

後藤庄一(ごとう しょういち)
1972年山梨生まれ。高校卒業後、ビジネス英会話スクールを経て1993年、イタリアのレーシングブーツ・ブランド、シディを扱う輸入代理店の岡田商事に就職。1998年、接骨院に転職。2001年、ハーレーダビッドソンジャパンに転職。2003年、サルワカフットウェアカレッジに入校。2005年、ホワイトクラウドを立ち上げる。屋号には空に浮かぶ雲のように自由でありたいという思いが込められている。

【問い合わせ】
WHITE KLOUD CUSTOM BOOTS
埼玉県越谷市蒲生東町5-38
048-985-9816
info@88.whitekloud.jp
https://whitekloud.com

Photo:Shimpei Suzuki
Text:Kei Takegawa
Edit:Ryutaro Yanaka



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