通りに面したガラス張りの建物、ヴァルカナイズ・ロンドン@THE PLAY HOUSEは、未来のアンティークとなる英国プロダクツを数多くそろえるスペシャリティショップ。同店および銀座、名古屋で運営されるヴァルカナイズ・ロンドン、その代表を務めるのが田窪寿保さんです。
田窪さんは007フリークとして知られ、同店が扱うグローブ・トロッターの本国副社長も兼任していました。その関係で、007の撮影スタジオへもおもむき、ダニエルクレイグとも対面したといいます。
また、田窪さんはカーエンスージアストとしても知られています。25歳のときに、父親が新車で買ったホンダNSX NA-1を現在も所有していて、まさにフィーチャーアンティークとして人生をともにしています。
最初期のAT仕様で、当時の車載電話のアンテナ跡があったりする1991年型。当時は馬力規制が緩和され、280PSが認められるようになりましたが、こちらはATのため265PSを発する、と田窪さんはいいます。
空力とエンジン内の防熱から生まれたリアのオーバーハングによって、トランクも確保され、「本当に快適で、オートマでパワステもある。ビジネスマンエクスプレスとして重宝しています」と田窪さん。「ディーラー工賃もステップワゴンと同じで、懐にも優しい」と続けます。
一方、田窪さんはロータスフリークでもあります。1956年型イレブン、1959年型エリートSr.1、1962年型タイプ22 フォーミュラジュニア、同年型23、1965年型エランSr.2、そして2019年型エリーゼスプリント220と6台。
今回、通勤で乗ってきたエランは所有して26年になるといいます。英国で120万円で購入して、ヴァーミンガムで100万円ほどのレストアにかけ、日本に持ってきたのです。その後はライトウエイトスポーツカーの歓びを日々享受していますが、もちろん、トラブルが皆無というわけではないようです。
「LOTUSというのは、Lots Of Trouble,Usually Serious(多くのトラブル、いつも深刻)の略なんです」と田窪さんは笑います。でも、愛おしく、ハンドルを握ると口角がゆるむのです。いわゆる旧車ブームにのったビカビカの仕様でない点にも好感を得ます。「As it is.../ありのまま」を楽しむ、英国ならではの風情があふれています。
英国にはエランやカニ目、MGミゼットのような古典的なライトウエイトスポーツカーがありました。一方、現代ではマクラーレンやアストンマーティンのようなヘビー級スーパースポーツカーも存在します。それらスーパースポーツは前者のようなライトウエイトスポーツがあったからこそ誕生できたといえるのではないでしょうか。スポーツカーの方程式が英国では脈々と受け継がれているのです。
また、旧車やビンテージ服・時計を手に入れて楽しむのもありですが、自分がアンティークとなるまで使い倒す、というのが英国人のライフスタイルにはあるようです。田窪さんの愛車はまさにその通りであり、ヴァルカナイズ・ロンドンにそろう英国プロダクツは未来のアンティークに適したものばかり。南青山骨董通りには未来の骨董がひろがっています。
Video&Photo: Naoto Otsubo
Video Edit: Kabuto Ueda
Text:Takashi Ogiyama