2021年11月11日、ホンダのインドネシア法人は、新型「SUV RS CONCEPT」を世界初公開した。この2カ月前の9月、同国で新型「「BR-V」が発表された際、赤いベールに包んだSUVをちら見せしており、そのクルマが登場した、ということだろう。「RS」ということなので、おそらくスポーティ路線のSUVであることもうかがえる。
日本では、CR-Vとヴェゼルの2車種しかSUVをラインアップしていないホンダだが、このタイミングで、日本で「ZR-V(ゼットアアルブイ)」という商標をホンダが出願したことで、「ホンダに新型SUVが登場か!?」と話題になっている。この「SUV RS CONCEPT」が、新型SUV「ZR-V」として、国内登場することはあり得るのだろうか。
■若者に向けた直球ど真ん中のスポーティSUV!!
ところで、日本とインドネシアでは、ホンダの路線がかなり異なっている。日本ではe:HEVをはじめとしたクリーンなイメージを打ち立てて、スポーツ路線はそっと活動しているホンダだが、インドネシアなどの新興国では、スポーティに走らせたい若者世代をターゲットとした「RS」を打ち出す、といった戦略を取っている。シビックセダンにはRSとTypeR、ハッチバックにはRS、シティハッチバックにはRS、といった具合だ。
特にインドネシアでは、日本のようなベースグレードが存在せず、「RS」のワングレード構成となっていることから、現地では、スポーツモデルへの注目度が相当高いのだろう。
今回、初公開となった「SUV RS CONCEPT」は、BR-Vとも異なるスタイリングをしていることから、新たなモデルになることが予想される。短い全長と、傾斜の強いリアウィンドウ、大径タイヤを装着し、フロント周りは、アキュラを彷彿させるような細めのヘッドライトや、ドット柄の入ったメッシュグリル、バンパー下にはスキッドプレートまでも装着。ルーフにはシルバーのルーフレールを採用するなど、スポーティでタフな雰囲気を演出している。リアには、横一文字のリアコンビネーションランプを採用、リアバンパー下部のスキッドプレートが勇ましい。
派手な外観と、コンパクトでいかにも走りそうな雰囲気、若者向けのSUVとしてど真ん中に打ち込んできた、といったスタイリングだ。
■モデューロとは異なる方向性となるはず!!
プレゼンテーションに登場したホンダの渡辺武弘社長によると、スポーティなクルマの味付けを好むインドネシアのユーザーに向けて、この「SUV RS CONCEPT」を開発したそうだ。日本では、先代のヴェゼルには「RS」モデルがあったが、現在、日本のホンダラインアップには、「RS」の冠が付くSUVはない。
ホンダのスポーティグレードといえば、国内では「モデューロX」シリーズを、フィット、S660、フリード、そしてステップワゴンへと展開している。しかしモデューロXは、車体やシャシーの小変更といったライトチューンにとどめており、先代のフィットRS(力の入ったホットモデルだった)のようにエンジンの改良までは行っていない。
ヴェゼルも、先代にモデューロXが設定されていたことから、現行にもモデューロXが登場することが予想され、そうなると、今回の「SUV RS CONCEPT」を、なんとしても国内導入してほしい、と思ってしまうところ。現時点の情報で予測するのはかなり難しいところだが、国内とインドネシアをはじめとした新興国とで、ここまできっちり「色」を使い分けていることを考えると、「RS」として導入されるのはなかなか難しいが、スポーティ路線を少し落として導入される可能性は、あるかも知れない。
■直球勝負するホンダを見たい!!
2020年と2021年の国内販売を振り返ると、トヨタの独壇場であるなかでも、特に、ライズやヤリスクロスといった、欧州Bセグメントクラス(全長4100mm以下)のコンパクトSUVが強かった。価格の安さもさることながら、日本での使い勝手の良さ、若々しいSUVデザイン、といった面も人気の理由であろう。
そう考えると、今回の「SUV RS CONCEPT」も、価格次第では、国内でヒットする可能性が高いのではないだろうか。
ホンダは2020年に新型フィットを、2021年には新型ヴェゼルを投入したが、その陰では、NSX、レジェンド、オデッセイなど販売が伸び悩むラージサイズのクルマたちを次々終了し、ラインナップを見直している真最中。だが、かつてのような元気なホンダを取り戻すため、ここはあえて奇をてらわず、「SUV RS CONCEPT」そのままを投入し、ライズやヤリスクロスに直球勝負を挑んでほしい、と思う。
ちなみに、ホンダは「ZR-V」の出願と同時期に「FR-V」という商標も出願している。発表予定のモデルに対して申請をしたのか、遠い将来に使う可能性のあるモデルに対して出願したのか、そこまではわからないが、なにかしらの動きがあることを期待して待とう。
Text:MMM-Production,Tachibana Kazunori
Photo:HONDA
Edit:Takashi Ogiyama