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「狂った宴」で筋肉恐怖症になった女の話

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

「狂った宴」で筋肉恐怖症になった女の話

人には嗜好というものがある。多くの人が好きだから、あなたも好きだろう、そう解釈するのはとても危ない。その観点からしたことが人に恐怖を与え、トラウマにしてしまうこともあるのだから。

今回は、あるサプライズがトラウマになってしまった女の話をしよう。

※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
 

加奈(仮名)35歳、独身。
化粧品会社で総務の仕事をしている。社内で仲が良いのはPRで働く同期の亮子(仮名)だ。鼻が高くスラッとした彼女は、美人で仕事もできるうえに信頼が厚いと社内でも評判だ。

ある日、そんな亮子の誕生日会に参加した。

多業種の人が楽しくお酒を酌み交わす立食の誕生日会は、異業種交流会でもあり、多くの人が名刺交換に勤しんでいた。

その中に体格の良い男性がいた。年末に近いというのに、Tシャツ姿。いかにもボディービルダーといった体型は、Tシャツがピチピチになるほど盛り上がり、加奈の心に威圧感をあたえた。

「Aさん、マッチョですね、すごい筋肉。もしかしてボディビルダーですか?」


ⒸGetty Images

近くにいた女子たちが目をハートにして話しかけた。Aは待っていましたと言わんばかりに、「はい、やっています。大会でも優勝したりしたことあるんですよ、見ます?」と得意顔に答えながらTシャツを脱ぎだしだ。

「きゃー!すごい!私、筋肉大好きなんです。ちょっと触っていいですか?」と言いながら楽しそうにボディタッチする女子たちを尻目に、加奈はどんどん後退りを始めていた。

そして、「加奈さんも触らせて貰えばいいじゃないですか!こんな機会滅多にないですよ」との言葉に、忘れられない過去がフラッシュバック…。気分が悪くなりそのまま会場を後にした。

友人の結婚式。二次会の余興がまさかの……


ⒸGetty Images

5年ほど前。加奈は高校時代の友人である樹里(仮名)の結婚式に参列した。新郎はメーカーに勤務する32歳の会社員。婚活アプリで知り合ったという、最近よくあるタイプのゴールインだ。友人代表のスピーチを任された披露宴では、緊張のあまりドッと汗をかき、ヘトヘトだった。

そして二次会で事件は起こった。

小洒落た会場には、披露宴に参加しなかった新郎新婦の会社同僚や友人が100名ほど集まっている。二人の門出を祝うべく装飾された華やかな店内に、余興の開始がアナウンスされた。聞けば、会場のボルテージを上げるため、プランナーにより練りに練られた、嗜好を凝らした余興だそう。

そう、今も加奈の頭から離れることのない、あのゲーム。魔のゲームがスタートした。


ⒸGetty Images

まずは、参加者決めのための新郎新婦によるくじ引き。どんなゲームに参加するのかわからない恐怖……パッと目を引く容姿とは真逆に、派手なことを好まない加奈にとって、この手のイベントは苦手だ。必死に当たらないことを願った。

しかし、そんな気持ちなんか知らないと言わんばかりに、新婦が満面の笑みで加奈の名を呼ぶ。見事に当たったのだ。

始まったのはお姫様救済ゲーム。わかりやすく言えば、古典的な宴会ゲームのドンケツだ。ビールケースを逆にして板を敷き、その上で女子が背中向けに立ち、落とし合うというものである。ホテルの宿泊やレストランご招待など豪華な景品が当たるということで、周囲の女子たちは参加を羨ましがった。

だが加奈は、え?この上に乗るの?と動揺を隠せない。そこへアントニオ猪木の登場曲に合わせて、パンツ一枚と覆面マスクを被ったマッチョな男子10人が、覆面レスラーの如く登場した。中にはボディビルをしているような、筋肉隆々な体にオイルを塗りたくっている人までいる。まさに勘違い連中だ。加奈には何がなんだか理解できない状況だった。

この人たちはこのゲームに何の関係があるの?
なに?どういうこと?盛り上げ隊ってこと?

覆面レスラーもどきがグルっとお立ち台を囲んだと思ったとき、曲が掛かりゲームスタート。状況が飲み込めないまま唖然としているうちに、加奈は台から突き落とされてしまった。

落ちる!と思った瞬間、周囲にいた覆面レスラーもどきが、加奈をしっかりと抱き抱えた。そう、これがその名の如く、お姫様救済ゲームだったのだ。


ⒸGetty Images

加奈は覆面レスラーもどきに抱き抱えられて会場を一周。もちろん周囲は熱狂するがごとく盛り上がった。加奈は合計三人の覆面レスラーもどきに抱き抱えられ、しまいには下ろす直前で赤い覆面レスラーもどきには頬にキスまでされてしまった。

お祝いの場ということもあり、されるがままだった加奈は怒ることもできずショック状態。
セクハラの極致だ。

呆然としたままトイレに駆け込み、今起こったことを、なかったこととして自分に言い聞かせ、なんとか落ち着きを取り戻した。それでも恐怖と恥ずかしさが混在した最悪な気分が加奈の心を支配し続けていた。

お祝いの会だが、もうこんな気持ちではいられない。そっと一人で先に帰ろう、そう思いトイレを出たところに、泥酔した赤い覆面レスラーもどきの一人が立っていた。

最高に嫌な予感がして加奈は怯んだが、知らぬふりをして通り過ぎようとした。だがその瞬間、すごい力で腕を掴まれて壁に押しつけられた。

「俺のこのカラダ、気に入った? 結構いいだろ? あっちもすごいんだぜ。どう? 試してみない?」と。

加奈は恐怖のあまり声を出すこともできず、掴んだ手を振り切ってその場から逃げた。


ⒸGetty Images

その後しばらく経って友人の樹里にはあのゲームが恐怖だったことを話したものの、彼女は全く悪びれる様子もなく笑い飛ばした。さらに、あの中の一人が加奈のこと気に入ったみたいよ、一度会ってみれば?と言うほどだった。

もちろんそんな気にはなれるわけもない。あの悪夢を思い出すだけでも、鳥肌が立つほどだったからだ。

結局この事件がトラウマになり、加奈はすっかりマッチョな男性が苦手になってしまった。痩せ型の親しい同僚男子がいたおかげで、なんとか男性恐怖症にはならなかったが、たくましい男性が半径1m以内にいると動悸がするようになり、友人のドクターは軽いPTSDだと診断した。

男らしい逞しさの象徴とされる筋肉も、一歩間違えると恐怖の対象になり紙一重であることをわかって欲しいと願ってならない。

 

Text:女の事件簿調査チーム

 

“女の事件簿” 調査チームとは?

「酸いも甘いも噛み分けてきた、経験豊富な敏腕女性ライターチーム。公私にわたる豊富な人脈から、ごくありふれた日常の水面下に潜む、女たちのさまざまな事件をあぶり出します。

「女の事件簿調査チーム」への取材依頼はこちらまで→forzastyle.web@gmail.com



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