ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
CAR 得するクルマ生活

オートザムAZ1とスズキカプチーノはどんなクルマだったのか?いま、いくらで買えるのか?

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

日本経済の絶頂期ともいえる1980年後半から1990年代初期にかけて開発・生産された軽スポーツカーABC(AZ-1、ビート、カプチーノ)。もっとも「売れた」のは、ホンダビート(3万4000台)であったが、カプチーノ(2万6000台)やAZ-1(4400台)にも、非常に濃いファンがいた。

カプチーノのルーフは取り外し可能で、クローズドのほかに「フルオープン」、「タルガトップ」、「Tトップ」という3種類が選択できる

なかでも、伝統的なFR方式で登場したカプチーノは、「軽FRスポーツの名作」といわれ、いまでもクルマ好きの中では人気がある一台だ。一方、軽自動車なのに、ミッドシップ&ガルウイングドアという、「超」マニアックな内容で登場したのがAZ-1だ。この2台、デビュー当時は、一体どんな存在であったのだろうか。

 

■まさかそのままの姿で出るとは!!衝撃の「オートザムAZ-1」

その初登場となったのは、1989年秋の東京モーターショーの場であった。マツダが発表したコンセプトカー「AZ550スポーツ」は、超軽量なフレームに着せ替え可能なFRPのボディを被せたもので、3タイプが展示されていた。よもや、市販はないとみられていたが、なんと3年後の1992年10月に、「オートザムAZ-1」として発売するまでに至った。

排気量660㏄の軽自動車で2シーター、さらにはガルウイングかつ、ターボ付エンジンをミドシップに搭載、44:56という前後重量配分、車重は720kgぽっち。ロック・トゥ・ロック2.2回転。マニアックにもほどがあるスペックだ

ちなみに、市販型で変更された点がいくつかある。コンセプトカーが登場した翌年(1990年)の春、軽自動車の規格改定により、排気量は550ccから660ccにアップ、またボディサイズも現在の規格にサイズアップされた。また、リトラクタブルヘッドライトが固定式に変更されている。

ボディの骨格は、スケルトンモノコックと呼ぶフレーム構造としたことで、剛性が驚くほど高く、ガルウイングドアにしても、ボディが悲鳴を上げることはなかったという。また、まるでレーシングカートのような低い位置にレイアウトされたシートや、高いサイドシルは、乗り降りの際には苦労し、サイドドアのウィンドウはほんの少ししか開かないなど、苦労するところはあったが、返ってそこが「ホンモノ感」が漂うところでもあった。

89年のコンセプトカー発表後から3年後、1992年10月にデビューした「オートザムAZ-1」。タイヤは前後とも155/65R13であった

搭載されていたエンジンは、タコメーターは1万1000回転まで刻まれ、レッドゾーンは9000回転という、超高回転型だ。当時、提携していたスズキから供給されたもので、アルトワークスやカプチーノと同じ、F6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボ(最高出力64ps/6500rpm、最大トルク8.7kgfm/4000rpm)に、5速MTの組み合わせだ。

排気量660㏄の軽自動車で2シーター、さらにはガルウイングかつ、ターボ付エンジンをミドシップに搭載、44:56という前後重量配分、車重は720kgぽっち。ロック・トゥ・ロック2.2回転という超クイックなステアリングギア比。これらが組み込まれた「オートザムAZ-1」は、切れ味鋭いカミソリ(失敗すると大怪我をすると意味も)のようなハンドリングマシンだった。バブル経済真っ只中の、イケイケ時代であったからこそ、誕生できた採算度外視のクルマであった。

 

■正統派「FR方式」のカプチーノは、自在なハンドリングを魅せた

スズキカプチーノも、国産スポーツカー黄金時代のど真ん中の1991年10月、約146万円という価格で登場した(ちなみにAZ-1は新車価格約160万円、ビートは約140万円)。ロングノーズ&ショートデッキの古典的なFRフォルムは、今見てもスタイリッシュでカッコいいが、カプチーノの凄さはその中身だ。

1991年10月に、約146万円という価格で登場したスズキ・カプチーノ。ロングノーズ&ショートデッキの古典的なFRフォルムは、今見てもスタイリッシュでカッコいい

1990年当時、スズキのスポーツモデルとして、「アルトワークス」はすでに人気モデルとなっていたが、カプチーノでは、そのアルトワークスのエンジン(657cc直3 DOHCインタークーラー付ターボ)を縦置きにレイアウト。5速MTと組み合わせ、前後とも専用のダブルウィッシュボーン式サスペンションに、四輪ディスクブレーキを採用する、という本気ぶりを魅せた。

車両重量は700kgと超軽量。ルーフ、ボンネット、リアフェンダーの一部にアルミニウムを使用し、ホイールや駆動系にもアルミニウム素材を採用するという、今のスズキのクルマからは考えられないほどの、豪華な造りであった。ちなみにルーフは、3分割ができて着脱も可能なアルミ材パネルであった。

アルトワークスの直3インタークーラー付ターボを縦置きにレイアウト。5速MTと組み合わせ、前後とも専用のダブルウィッシュボーン式サスペンションに、四輪ディスクブレーキを採用する、という本気ぶり

エンジンブロックは、1995年5月のマイナーチェンジで、鋳鉄製から、軽量なアルミニウム製へと置き換えられた。これによって、エンジントルクが向上(7.5kgfm→10.5kgfm)し、車重も10kg減量して690kgという、さらなる超軽量が実現できた。

「エンジンブロックをアルミ化する」という変化の大きさは、自動車製造からすると、かなり衝撃的な変化だ。あのコストに厳しいスズキですら、専用パーツへかけるお金の額が尋常ではなったことがわかるエピソードであった。

超軽量ボディ、パワフルなターボエンジン、そして後輪駆動―これらが組み込まれたカプチーノは、パワースライドからドリフトに持ち込めるほど、自在なハンドリングを有していた。ミッドシップのホンダのビートとは、またひと味違う、正統派FRとして、大いにヒットをした一台であった。

だがバブル景気崩壊とともに、市場は低迷。AZ-1は1995年9月、ビートは1996年10月に、相次いで販売終了となるなか、カプチーノは販売を継続していたが、1998年にとうとうカプチーノも販売を終了。軽オープンスポーツはここでいったん絶滅となった。

 

■いますぐ欲しい!!では中古車相場はいくら?

ではこの2台の中古車は、一体いくらで手に入れることができるのか。大手中古車サイトで調査すると、カプチーノは全142台が出品されており、本体価格相場は、30万円(1992年式、18万km)~220万円(1994年式、距離3.5万km)という全体像で、100-140万円が台数の多い価格帯となっている。

またAZ-1は、26件が出品されており、179万円(1992年式、10.4万km)~398万円(1994年式、4.2万km)が全体像で、200-250万円が台数の多い価格帯となっている。何とも驚きだ。ちなみに、AZ-1のOEMとしてスズキが販売したキャラも中古車があった。こちらも200-250万円が相場。

AZ-1のOEM、スズキキャラはさらにカルトな存在だ

30年近く昔のクルマであるが、既にプレミア価格が付いており、定価を越えた価格設定となっている。当時、憧れていたが乗れなかった方や、「もう一度乗りたい」といったオーナー、そして海外輸出需要など、今後も相場が下落する気配はない。「欲しいときが買い時」と言えるだろう。

[オートザムAZ-1 主要諸元]
販売期間:1992年10月~1995年9月
全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1150mm
ホイールベース:2235mm
車両重量:720kg
エンジン:F6A型 657 cc直3 DOHCインタークラー付きターボ
最高出力:64 PS/6500 rpm
最大トルク :8.7 kgf·m/4000 rpm
燃費:18.4km/L(10・15モード)
タイヤ:(前後)155/65R13
新車価格:149万8000円(1992年式)

[スズキカプチーノ 主要諸元]
販売期間:1992年10月~1998年10月
全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1185mm
ホイールベース:2060mm
車両重量:700kg
エンジン:F6A型 657 cc直3 DOHCインタークラー付きターボ
最高出力:64 PS/6500 rpm
最大トルク :8.7 kgf·m/4000 rpm
燃費:18.0km/L(10・15モード)
タイヤ:(前後)165/65R14
新車価格:149万8000円(1991年式)

Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:MAZDA,SUZUKI
Edit:Takashi Ogiyama



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5