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FASHION 僕が捨てなかった服

盗まれても戻ってきた! B品のような味が功を奏した、ポール・ハーンデンのバッグ

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人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。

買ったときから既に、キズや汚れがあったのには驚かされました

バーニーズ ニューヨークの顔的存在として、PRや自社メディア、オンラインストアを統括する中野光章さん。インディアンジュエリーに対する造詣が深いのは業界内外でも有名で、数多の名作を備えています。

ファッションにおいても、モードにとどまらず、古着、ストリート、はたまたアルティザンまで幅広いジャンルに精通する中野さんが、思い入れが強くて捨てられなかった服をご紹介する企画の第10回目は、ポール・ハーンデン(Paul Harnden)のバッグです。

「20代後半くらい、ちょっとギラギラしてるときにポール・ハーンデンのジャケット着て、このバッグを持ってというスタイルをしていたんですが…

このバッグはインナーのない一枚革仕立てで、朱色に染められた革なので、ものを入れておくと移染して真っ赤になってしまうんです。

途中から、大きめの巾着に中身を入れてからバッグに入れていました。当然巾着は真っ赤に。ラフな見た目なのに、使用時に注意しなければいけない刺激的なバッグでした。

こんなB品みたいなバッグ作るブランドあるのか?って驚きましたし、現時点で付いてるキズやシミっぽい汚れみたいなものも7割くらいは買った時点で既に付いてたもの。

使い込まれたのか? 土にでも埋めてたのか?ってくらい、衝撃を受けたのを覚えています。それでも売れるパワーみたいなものを感じられたから、買ってはいるんですが。

そして当時は、週3くらいで渋谷・桜ヶ丘のクラブ、ルーム(THE ROOM)に通っていて、ある日いつものように遊んだ後、家には帰れないのでタクシーに乗って友人宅に泊めてもらいに行ったんですが、かなり酔っ払っていて部屋まで辿り着けず…

マンションのオートロックの前で力尽きて座って眠ってしまい、「大丈夫か?」の声で目を覚ますと、置き引きに遭っており、このバッグごと盗まれてしまいました。

鍵も財布もなくなってしまったので相当落ち込み、警察に届け出をしたら、なんと3日後くらいに中目黒駅構内のトイレに捨てられていたのが見つかったと連絡が入り、受け取りに。

バッグの中に手帳は残されていたものの、そこに入れていた映画の前売りチケットを含め、金銭的価値のあるものはすべて抜かれていましたが、バッグは戻ってきた。

確か当時7〜8万円しましたし、わかる人にとってみたらそれ以上の価値があるバッグだったと思うんですが、B品みたいなバッグだったのが功を奏したのか、持っていかれずに済みました。

不幸中の幸というか、そういった思い出もキズと一緒に刻まれており、手放すことはできません。

ただ、入れたものが真っ赤になってしまうので、恐らく今後も使うことはなさそうではありますが…」。

中野光章
バーニーズ ニューヨーク クリエイティブサービス部 兼 EC部 アシスタントディレクター

1996年バーニーズ ジャパン入社。新宿店デザイナーズフロア、PR、セールスプロモーションの各マネージャーを経て現在はPR、自社メディア、オンラインストアを統括。インディアンジュエリーに深い造詣を持ち、座右の銘は「インディアンジュエリーは出逢ったときが最安値」。

Photo:Shimpei Suzuki

Edit:Ryutaro Yanaka



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