勇気をもらえるレタードニット
青山の骨董通りにある「Vandori(ヴァンドリ)」は、世界中の最高級原料の天然繊維を選定し、熟練した日本の職人が丁寧に編んだニットを扱うお店。
「Blu Bre(ブルブレ)」はそんな同店で人気のオリジナルレーベルです。雑誌編集者時代から十数年のお付き合いで、過去にコラボ商品をつくったこともあったこともあり、このレタードニットのプロジェクトがスタートしました。
エアコンで室温調整しているため、僕は家の中では年中Tシャツと短パンというスタイル。でも、こうも外出しないと、服装でシャンとした気分を味わえる日は、極端に少ないですよね。だからといって、自宅でテイラードを着るのも変だし、日常のなかでラグジュアリーな気分が感じられて、モチベーションになる何かが必要だと思ったんです。
今回のレタードニットは、世界トップレベルの100%カシミヤを使い、普段使いを想定したデザイン。しかも偶然なのですが、Vandoriで打ち合わせをしているときに、僕が懇意にさせていただいているヴァイオリニストの葉加瀬太郎さんがお店の前を通りかかったのを見つけ、これも縁だと思うので一緒にニットをつくりましょう、と口説き落として葉加瀬さんにも参加してもらいました。
インターシャジャカードで施された葉加瀬さんのメッセージは「Keep Calm and Carry On(平静を保ち、普段の生活を続けよ)」。これは英国政府が第二次世界大戦前に、開戦した場合のパニックや戦局の悪化に備えて作成された広告の一部みたいですが、ロンドンにも制作拠点をもつ葉加瀬さんには身近な言葉だったようです。
一方の僕が選んだ言葉は「Heaven is now」と「WALK ON」。「Heaven is now」は、僕が口癖のように言っている「天国NOW」から。人はよく、死んだら天国に行く、とか言いますけど、僕は信じません。人生は一度きり。だから、いまを思いっきり楽しむことを大切にしています。
もうひとつの「WALK ON」は、僕が敬愛するブルース・リーの名言。どんなときでも歩みを止めず、前に進み続ける彼の決意を胸に刻みたいという思いでこの言葉を選びました。
もうひとつの「EVERY DAY IS A NEW DAY」は、Vandoriの代表兼デザイナー笹岡昌平さん作。笹岡さんが大好きな小説家アーネスト・ヘミングウェイの小説『老人と海』の一節から選んだこのメッセージは、“毎日が、とにかく新しい日なんだよ!”と、頑張って続けることの大切さと喜びを意味しています。
コロナ禍の影響で、外出自粛生活が余儀なくなされていますが、いちばんコワイのが心が折れてしまうこと。そのためにも、ファッションの力も利用して、あるときは勇気をもらい、あるときはガス抜きしながら、一歩一歩前に進んでいければいいなと思います。
各4万9500円 Blu Bre/(Vandori 青山本店)
【問い合わせ】
Vandori 青山本店
03-6418-7832
Photo:Ikuo Kubota(OWL)
Text:Toshiaki Ishii