今や絶滅危惧種になってしまったメンズショップをめぐる「山ちゃんの洋品天国」、今回は初の地方取材ということで、鎌倉にやってきました。お邪魔した店は「ナミキヤ」。そう、連載の第一回で紹介した両国の名店が、この街に移転したのです!
前回は、なんと動画をアップした一週間後に、道路拡張工事の影響をうけて突然の閉店。店主の中嶋博さんはしばらくの充電期間を経て、この春に地元である鎌倉に、新店舗をオープンさせたとのこと。
しかも移転先は、東京でいえば明治通り的存在であるメインストリート、若宮大路! 中嶋さん、すごいなあ……と思いきや、表通りには看板を掲げておらず、通りすがりでは絶対にわからないという、安定のナミキヤスタイル。僕だったらド派手な看板をかかげて、ついでにタピオカでも売っちゃいそうだけれど、それが常連さんを大切にする中嶋さんのやり方なのです。DADAという超人気のピザ屋さんが目印なので、ぜひ行ってみてくださいな。
ナミキヤといえば、往年のアメカジから伝統の英国製品まで、奇跡的なデッドストックの品揃えによって好事家たちを虜にしてきた店ですが、この連載の影響によって、幸か不幸か(?)めぼしいところはかなり捌けたとのこと。残念っちゃ残念ですが、これによって名バイヤー、中嶋さんの気合の入ったバイイングが楽しめるわけですから、これからが楽しみですよ!
というわけでそのリスタートの目玉アイテムといえるのが、ホッファのチロリアンジャケット。こちらは山岳国家オーストリアを代表する由緒正しき名品でして、80年代半ばのセレクトショップ界隈で、大ヒットを遂げたシロモノ。僕はオーストリアには行ったことがないのですが、ミラノあたりの老紳士がよく着ています。
実はホッファはずっと前に廃業してしまっていたのですが、中嶋さんは創業家のコネクションによって、なんと80着もの買い付けに成功! ナミキヤと、中嶋さんの息子さんが高崎市で経営しているショップ「CLOWER HOUSE」でしか買えません。正真正銘、新品を買うのは最後のチャンスですから、絶対にお見逃しなきよう!
実を言うと、僕も新品状態を見るのはじめてだったのですが、その圧縮具合は、インターナショナル仕様にアップデートされた現代のチロリアンジャケットとは、まったくの異次元。ギュンギュンに目が詰まっていますから、正直いってめちゃくちゃ重いし暑いです!
でも質感といい配色といい、チロル文化を濃厚に感じさせるこれこそが本物。着ていくうちに伸びるから、今時の若者みたいにオーバーサイズで着るのはダメよ。ジャストサイズを選びましょう。
本日はこれに加えて、両国時代に買い漏らしていたギャリックアンダーソンのジャケットも試着。こちらは80年代に一世を風靡したアメリカンデザイナーズブランドなのですが、シャツなら英国のターンブル&アッサー、ジャケットならイタリアのセントアンドリュースといった名門ファクトリーを使った英国テイストのコレクションを発表し、当時の服飾変態たちにこよなく愛されていました。
そんなこちらのグレンチェックジャケットは、広い肩幅といい、やわらかなコンストラクションといい、バストまわりのドレープといい、英国よりも英国的! ラルフよりもラルフ的!! 現代のアンダーソン&シェパードよりもアンダーソン&シェパード的!!!
しかもお値段が4万4000円ときたら、買うしかありません。なぜかというと、ここだけのハナシ、セントアンドリュースといえば、あのラルフローレンの最上級ライン、パープルレーベルのファクトリーとしても知られた存在(※現在は不明)。名前のとおり英国テイストのものづくりを得意としており、ナポリスタイルのアットリーニなどとは比較できませんが、その仕立てのクオリティは世界トップクラスなんです!
結局のところミイラ取りがミイラに、ということで2着購入。秋には本チャンもののグルカパンツが入荷するとのことで、それも買ってしまいそう。中嶋さんのセンスとネットワークには感服です!
実はこの鎌倉には、ナミキヤのほかにもう1店、私が愛する洋品店が存在します。アメリカのアウトドア〜ウエスタン洋品から英国製のハットに至るまで、とんでもない品揃えの名店なのですが、前回の「松崎商店(上野)」以上にクセが強い。中嶋さんのお力も借りて取材交渉に臨んだのですが、残念ながら今回はNGでした。引き続き交渉してみますので、次回もよろしくお願いいたします!
【詳しくは動画ご覧ください】
Text:Eisuke Yamashita
Video:Yoshihide Shoshima
Edit:Takashi Ogiyama
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