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車のヘッドレストに隠された役割。追突事故のケガを最小限に抑えてくれる!?

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

運転中、並走するクルマのドライバーの姿が見えなくて、驚くことがまれにある。シートを倒して、寝そべったような姿勢で片手運転をしているドライバーだ。平然と運転しているが、こんな状態で前が見えるのか、そっと並走をやめるしかない。

仮に、これで安全運転できたとしても、この崩れた姿勢で運転することの危険は、ほかにもある。とくに、身構えることが難しい追突事故の際、崩れた姿勢では身体への被害がかなり大きくなってしまう。全ドライバーに知っておいてほしい、ヘッドレストの役割について、ご紹介する。

 

■追突事故に遭った方の9割が「首」を負傷

クルマに乗っていて後ろから追突されると、乗員の体はいったん前方へと投げ出され、その後シートベルトによって身体は後方へと戻される。ヘッドレストは、この後方へ身体が戻される際に、頭部が後ろへ投げ出されるのを最小限に食い止めてくれる、という重要な役割をもつ装備なのだ。単に「頭を休ませるもの」ではない。

人間の頭部の重さは体重の8~10%ほど(体重70kgならば6~7kg)。そのため後突の衝撃が加わると、頭部は身体よりも動きが遅れて「むち打ち」の原因となってしまう。

クルマのヘッドレストは、英語の「ヘッドレストレイント(head restraint)」を略したもの。「restraint」とは「拘束」という意味であり、直訳すると頭の拘束で、「休憩」ではない

日本全国で1年間に発生する交通事故は、43万601件。このうち、35%にあたる14万9561件が追突事故だ(平成30年、内閣府統計データ)。この追突事故に遭った方がケガを負う部位は、9割が「首」だという。

ご存じの通り、筋肉と神経が複雑に絡み合う首は、人間にとって非常に重要な部位。万が一、むち打ち(頚椎捻挫)になると、首の痛みの他にも、頭痛や肩こり、めまい、吐き気などを引き起こしてしまう。多くは軽い症状で完治するというが、重症となると、背中や腰が重い、重度の肩こり、上半身のしびれ、眼精疲労、理由のないだるさ、ひどい場合には、うつ症状などを誘発してしまうこともあり、回復までに相当な時間がかかってしまう。

むち打ちにならない、もしくは最小限に食い止めてくれるアイテムであるヘッドレスト。重要な装備であるのにその重要性が軽視されがちなのは、非常に残念なところだ。

 

■後頭部の出っ張りがヘッドレストの中心にくる高さに

「ヘッドレストがあれば万事OK」というわけでなく、ヘッドレストの高さが適切であることが必要。ヘッドレストの正しい位置は、「後頭部の一番出っ張っている部分に、ヘッドレストの中心がくる」位置だ。

後頭部の一番出っ張っている部分が、ヘッドレストの中心にくるように。これがいちばんヘッドレストを効果的に使用できる高さだ

ヘッドレストと頭部が離れていると、後ろへと頭部が投げ出されるため、さらに強いむち打ち状態となりかねない。そのため、背もたれを起こして、後頭部がヘッドレストへつく角度が適切だが、ピタっと付けると車体の振動が頭に伝わるため、ちょっとだけ浮かすようなポジションが良いとされている。

 

■乗員を守りたければ、全員の姿勢にも気を配るべし!!

現在は多くのクルマに、アクティブヘッドレストという装置が付いている。追突の衝撃が加わり、シートバックが乗員を受け止める力を利用して、ヘッドレストを車両前方へ押し出し、頭部の後傾を防ぐ装置だ。

だが、この装置は、適切な高さや位置にヘッドレストとシートバックの角度が調節されていることが大前提だ。冒頭のように、シートバックを倒して片手運転をしてしまうような、大間違いを起こしているドライバーには、何の効果もない。

万が一、追突事故の被害に遭ったとしても、正しい位置に調節しておくだけで、被害は軽減できる。乗員全員のヘッドレストの高さや、シートバックの角度を適切に調節させることは、ハンドルを握るドライバーの責任として、しっかり気を配るようにしてほしい。

Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:AC,MMM-Production
Edit:Takashi Ogiyama

吉川賢一ポートレート吉川賢一(自動車ジャーナリスト)1979年生まれ。元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けています。


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