トヨタのAIカー『LQ』は愛の結晶なんです。
令和3年7月7日。この夏、七夕を迎えてもいまひとつピンとこないのが東京オリンピックの開催です。日常的にTVをご覧になる方はそれなりに盛り上がっているのでしょうが、ネットの世界ではイマイチ不発。ポータルサイトを見回してもバナー広告すら見た覚えがありません。
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東京2020オリンピック競技大会の公式ウェブサイトでは、現在、開催までの残り時間を絶賛カウントダウン中。しかし、各競技大会の開催スケジュールを確認すると8月2日までしか掲載がありません(7月6日午前10時時点)。ちなみに開会式は7月23日で閉会式は8月8日(パラリンピックは9月5日まで)。この期に及んでまだ暫定スケジュールの可能性があるのでしょうか?
各ジャンルの競技を別とすれば、自動車趣味人が注目すべきはオリンピックで使われるオフィシャルカーの存在です。「最近、お台場周辺で未来ちっくなクルマを見かける」なんて声を聞きますが、そのクルマの正体はトヨタのBEV『TOYOTA Concept-愛i』の公道実証実験モデル『LQ』なのではと思います。
じつはこのモデル、当初の予定はマラソン大会の先導車なんだとか。しかし、そのマラソンといえば札幌へ場所移動したはずなのに、公式ウェブサイトのスケジュール欄を見てもマラソンという4文字がありません。このまま出番なく愛は終わってしまうのか?
気を取り直して日本陸上連盟公式サイトにアクセスすると、マラソンの日程が掲載されていました。具体的には女子大会が8月7日(金)午前7時、男子大会が翌8日(日)同時刻のスタート予定であることを告知。ただし、この情報も7月5日現在と注意書きがありましたのでどうなることやら。でもね、クルマ好きとしてはこの『TOYOTA Concept-愛i』の先導シーンが見てみたい。
『TOYOTA Concept-愛i』が発表されたのはラスベガスで開催された2017年のCESでした(米国現地時間同年01月04日)。CESとはConsumer Electronics Showの略で、毎年ラスベガスで開催されるのですが、わかりやすくいうと、いまどきのハイテク見本市で世界最大級の規模を誇ります。
当時のプレスリリースによれば、『未来のモビリティを具体化したコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i」をCESで公開-人工知能により人を理解し、ともに成長するパートナーを目指す-』とあります。要するにAIを活用した近未来カーなのだと思います。
トヨタが目指す方向性はさておき、シームレスなデザインは同社米国のデザイン拠点Calty(Calty Design Research, Inc.)が担当しました。どうですこのデザイン? 自動車の電脳化が義務ならば、このレベルの未来感、将来性をイメージできるクルマを売って欲しいと思いませんか? そうでなきゃBEVに乗り換えようなんてオジサンは思いませんね。
この車両は2017年10月25日開催の東京モーターでもお披露目されましたが、その後約2年の月日を経て、2019年10月11日発表のプレスリリースでは『トヨタ自動車、「新しい時代の愛車」を具現化した「LQ」を公表』へと進化し、現在に至ります。
トヨタは当初より「数年内に公道実証実験を計画」とアナウンスしていましたので、もし湾岸エリアやマラソン大会の舞台となる札幌で目撃するとすれば、この『LQ』なのでは? と思います。正確を期するためにプレスリリースの冒頭部分を抜粋しましょう。
“トヨタは、モビリティカンパニーとして、あらゆるお客様に移動の自由を提供することを目指しています。移動には、文字通りの移動だけではなく、心の移動(感動)も含まれており、「移動そのものが感動をもたらすものであってほしい」、「クルマは“愛”がつく工業製品であり続けてほしい」と考えています。
「LQ」の開発にあたって、“Learn, Grow, Love”をテーマに、お客様一人一人の嗜好や状態に合わせた移動体験の提供を通じて、時間とともにより愛着を感じていただけるモビリティを目指しました。「LQ」という車名には、新しい時代の愛車(Beloved Car)を提案するきっかけ(Q/Cue)になればとの想いを込めています。”
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トヨタが東京2020大会に提供するオフィシャルカーは約3700台。FCVのMIRAI、プリウスPHV、ミニバンのアルファード(HV)などはお馴染みのモデルでしょうが、専用車として『APM』や『e-Palette』、『歩行領域EV』(座り乗りタイプ/立ち乗りタイプ/車いす連結タイプ)など、未来都市をイメージさせる先進モデルも投入されます。
賛否両論、悲喜こもごも。しかし、いざ開催されるとなればクルマ好きが注目すべき点はモビリティのニューワールドです。口角泡を飛ばす上層部はさておき、帳尻合わせで大変なのは現場の皆さんです。末筆ながらその舞台裏で大会を支える方々にエールをお送りするとともに、感謝の意をお伝えしたいと思います。
Text:Seiichi Norishige