車をこよなく愛する中年たちの、“少年時代”のバイブル、『頭文字D』。
このたびヤングマガジン編集部全面協力のもと、FORZA STYLEで、『頭文字D』の第一巻が読めるようになりました。お見逃しの方へ、第1話はこちらでどうぞ。
「頭文字D」1巻 Vol.2「最速!! ロータリー・ブラザース」を読む
FORZA STYLEで車と言えば……中年A・荻山尚と中年B・教重誠一。第一話に引き続き、第二話を読んだ荻山尚が心惹かれた一コマとは?
【『頭文字D』第二話】中年A・荻山尚が選ぶ1シーン
90年代当時、東京で生まれ育った私のまわりに走り屋と呼ばれる人はいなかった。バブルの残り香がまだあり、フェラーリテスタロッサ、メルセデスベンツSクラス(W140)が白金プラチナ通りのオープンエアカフェ前に、ずらり路駐している姿を横目に、ユーノスロードスター(NA)でデートに明け暮れていたような記憶がかすかにある。
そんなドライブデートの延長で、深夜の首都高を流しているときだった。後方からリトラクタブルライトの閃光が見えた、と思った瞬間に、その車は左ウインカーを1度だけ灯らせ、あっという間に私を抜いていった。
その先は、難所で知られる大曲のきついコーナーであったが、タックイン状態で難なくクリアしていった。その車こそ、高橋涼介も駆るマツダRX-7(FC)であったのだ。そんな走りをする車を今まで見たことがなかった。NA乗りの私は、心の中で「アニキ」とつぶやいたのだが、まさに高橋アニキじゃん!
その後、自動車雑誌の編集者となり、ジムクラークゆかりのドライビングレッスンで、アンダー・オーバーステアや、アクセルとステアリング角度の関係などを学ぶのだが、なかなか理論を操作で表現するのは難しく、今に至る。走り屋ってのは文武両道なんです。
Text : Takashi Ogiyama