言いづらいことを言わなければいけないとき、どうしていますか?
ビジネスでは、言いにくいことを言うのも仕事のうち。とはいえ、ストレートに言って自分勝手なやつだと思われたり、一つ間違えば嫌われるかもしれない、相手が根に持つかもれない、などと考えて、つい「モゴモゴ・・・・・・」と口ごもってしまう人も多いことでしょう。
失礼にあたることもなく、上から目線だとも思われないためには、言いにくいことを「やんわり」伝えることが重要です。具体例を見ながら、説明しましょう。
上司に言いにくいことを言うときは「部分肯定」を意識した返事を
上司の的外れな意見やアドバイスに対して「そういうことじゃないんだよね」という場面に出くわしたとき、どう返事をしたらよいのか困りますよね。たとえば営業活動の場だと仮定して、上司に次のように言われたらあなたはどう答えますか?
上司「なんだかんだ言ってもさ、営業は足で稼がないと。訪問する回数、増やしたら? 少ないんじゃない? なんなら俺が同行するけど、どうする?」
あちゃー、という気持ちはぐっと押さえつつ、返事の仕方を考えましょう。AとB、どちらか正解だと思いますか?
A「いや、そういう時代じゃないかと・・・・・・。それにA社と価格の折り合いがついていないんで、先方の解決待ちの段階なんですよね」
B「ご心配ありがとうございます。価格の折り合いがついていない段階でして・・・・・・、もう少し任せてもらえれば。頑張ります」
この場面では、Bの伝え方が正解です。
Aは、全体として否定のニュアンスが強いのがお分かりですか? 冒頭「いや、」という否定の言葉から入っているのがよくない点。「いや、」が口癖になっている人も多い一言なので、注意が必要です。
このように否定から始まり、否定のニュアンスが含まれる返事は、相手にとって否定された・批判されたと受け取られる可能性があります。さらに、否定のニュアンスに対して否定の返事が返ってくることも。
改めてBの伝え方を見てみましょう。
冒頭は「ありがとうございます」と心配してくれたことに対するお礼から返事を始めているのが分かりますよね。その一方で、アドバイスの内容については肯定していない、というのがポイントです。
上司に対しては、この「否定はしない、けれど肯定もしていない」部分肯定の言い方を心がけて、的外れなアドバイスをいなすことがおすすめです。
取引先に催促するときや断るときは「柔らかさ」を意識しよう
「仕事なのだから、言いにくいことほどハッキリ言わねば」だったり、「仕事なのだから、ファクトだけ伝えてしまおう」という気持ちが強まって、ストレートすぎる言い方になってしまう人が増えていると感じます。
ストレートな言葉は「ほかに言い方あるよね?」と思われたり、よろしくない印象を残してしまいがち。できるだけ、柔らかい言い方を覚えましょう。
具体的な言い換え方をご紹介しますね。
入金の遅れ、納品の遅れなど、やんわりと「催促」する場合
【ストレートな催促】
「振り込みの期日は昨日でしたが、どうなっていますか?」
↓
【柔らかい催促】
「まだ入金が確認できていないようで、なにか手違いでもあったのではないか、と連絡いたしました」
ストレートな催促は、文字だけ見るとなんの問題もないように思えます。しかし、質問形は相手を責めるニュアンスが含まれてしまう点に注意が必要です。
質問形で責めるニュアンスが含まれる言葉は、話し言葉で多く聞かれるもの。「なんで終わってないんでしたっけ?」「このままだと無理だと思えるんですけど?」など、あなたも《詰められた》《ダメ出しされた》と感じたことがあるはずです。
責められた、と感じると、人は無意識に心のバランスをとろうとします。「場面が変われば態度も変わるヤツ」と印象が悪くなることもありがちです。
一方、柔らかい催促は「確認できていないようで」と曖昧な言い方ですが、伝えたいことは伝わっていますし、タイムラグや行き違いの可能性を考慮しているニュアンスも含まれます。
他意はない遅れの場合であれば、このような柔らかい催促で十分事足ります。また、自分の勘違いだった場合も、ダメージが少なくて済むというメリットも。無用なトラブルを防ぐためにも、柔らかい催促の言い方を覚えておきたいところです。
締め切り、納品日など、やんわり「進捗確認」する場合
【ストレートな確認】
「昨日が締め切りの件、まだいただいていませんが、いつになりますか?」
↓
【柔らかい確認】
「今、進捗はどのあたりでしょうか? できる限りリカバーしたいと思っています」
進捗管理は大事な仕事です。スケジュールが狂うことで、多くの人に迷惑がかかることになります。また、信頼を裏切られたと怒りを覚えたり、軽んじられていると感じてイラッとすることもあるでしょう。
しかし、相手に何らかの事情が出来して苦しんでいたり困っているかもしれません。ここはあえて柔らかく切り出すことで、今後のやりとりをスムーズに運んで、なんとか納品してもらうメリットを取りましょう。締め切りを厳守してほしいという話は、トラブルが解決してから改めてしても遅くありません。
柔らかい言い方で進捗確認をすることで、どのように進めていくか、最終的にいつ納品してもらうのかという相談がしやすくなります。厳しい話のときほど、やさしく穏やかなトーンを心がけることが大事なポイントです。
新規案件のオファー、頼まれ仕事などを、やんわり「断る」場合
【ストレートな断り】
「すいません、月末は無理なんです」
↓
【柔らかい断り】
「せっかくのご依頼なので何とかしたいのですが・・・・・・、逆にご迷惑をかけてしまいそうです。頼っていただいたのに、すみません」
ストレートな断りは、センテンスが短いせいもあって、とりつく島もないぶっきらぼうな印象を与えてしまうことがあります。たとえば「来月ならなんとかお手伝いできそうなのですが」「調整はしてみたものの、やはり難しく」といった前置きをするとよいでしょう。
柔らかい断りは、依頼された内容はきちんと断っていますが、相手を軽んじているわけではないと伝わります。また今後も頼まれたくない場合は、できない理由をなるべく説明しないこともポイントです。
事実誤認、間違いなどを、やんわり「指摘」する場合
【ストレートな訂正】
「いや、それは○○ではなく、××ですけど」
↓
【柔らかい訂正】
「もしかして、××のことでしょうか?」
ストレートな訂正は、相手の間違いをズバッと指摘しています。相手によっては間違ったことを指摘されて恥をかかされたと思うことも。また、あなたが自信満々で間違いを指摘する人に見えることもマイナス点に。見ていて気持ちのいいものではありませんし、誤解されてしまう可能性もあります。
柔らかい訂正は、間違いを指摘しながら、正しい内容を伝えることができます。相手にショックを与えることもありませんし、周囲に残す印象もとてもスマート。品や教養を感じさせることもできます。
「言いにくいことほどハッキリ、事実だけを」という気持ちから、過剰にストレートな表現を選びがちなビジネスパーソンは意外に多いもの。しかし「言い方に傷ついた」という経験もまた、ビジネスパーソンなら誰しもあるはずです。
言いにくいことほど、やんわりと。やんわりとした言い方でも、必要なことを十分きちんと伝える技術があるのです。同時に、言い方一つで周囲と差をつけることも可能に。この機会に「やんわり」とした言い方をぜひ身につけてください。
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