ハンティングやゴルフなど欧州由来のクラススポーツとは?
日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。
そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。今回は、ドクトル赤峰がお得意の“クラススポーツスタイル”を解釈。着こなしのキーになるのは、上に羽織るモノ=ジャケットなので、ぜひみなさんも参考にしてみてくださいね。
めだか荘でオーダーできる「AKAMINE CLASS SPORTS」の源流
いわゆる「カジュアル」というと、ルールのない自由な着こなしが許されると思われていますが、欧州の人たちは、オフの服装をカジュアルなどとは思っていません。彼らは、ビジネス以外の普段着を“スポーツスタイル”として捉えていて、コーディネートで大事なのは、日本でいうブルゾンやジャンパー、アメリカではスポーティングジャケット、イタリアならジャッコーネやジュッビーノと呼ぶ、上に着る羽織りものです。
not casual but class sport styles──昨年私がローンチした、カジュアルのビスポーク「AKAMINE CLASS SPORTS」は、そんなクラススポーツスタイルをベースにしていて、テニス、ヨット、ゴルフ、ポロ、スキー、ドライビング、ハンティングなど、欧州貴族たちがこぞって遊んだ、それぞれの世界での正装をオーダーで表現しています。
アイテム1:ハンティングジャケットを上手に着こなそう
クラススポーツでは、春夏はマリン、秋冬はハンティング(=狩猟)がその象徴で、ヨーロッパの9月、10月には、店頭にハンティングジャケットがたくさん登場します。今は、ヴィンテージブームと相まってアウトドア系アウターが大人気ですが、まず着てほしいのは、ハンティングジャケットです。
狩猟のときに着るスポーティーなジャケットですから、ライフルを構えるときの補強のためのガンパッチをはじめ、手が入れやすいようにアールがついて丸くなっているポケットは、獲物も入れられるなど収納力に優れていて、それがデザインのアクセントになっています。
そのような機能性が施されているポケットを持つアウトドアジャケットは、ボトムスにはニッカボッカを穿いたり、ハンティングブーツを履いたりします。クラススポーツスタイルの基本であるハンティングジャケットを普段着に取り入れてみてください。
アイテム2:バラクータ「G9」のようなブルゾンを着こなすコツ
次にご紹介するのはゴルフジャケットですが、世界的に有名なのが、英・マンチェスター生まれのバラクータが、1948年に発表した「G9」です。私が着ているのは約45年前のもので、今のG9とは、デザインも大きさもまったく違います。
G9のようなブルゾンを上手に着こなすコツは、「腰を上げて、前を下がり気味で着る」こと。ベストのような状態で着るのがブルゾンのカッコイイ着方になります。お尻を隠すように着るとブサイクになりますからご注意を。「着丈をやや短めにして、前を下げて着る」のがポイントです。
もう一つ、これは「G11」で、日本では流行りませんでしたが、ゴルフをやるときの基本のモデルです。バラクータ社が40数年前に作った無双の生地のブルゾンで、ポケットに手が入れやすいデザインは個人的にお気に入りです。
英国生まれのバラクータG9に比べて、カジュアルな雰囲気があるのが、アメリカ製のマックレガーのジャケット、通称スコティッシュドリズラージャケットです。これは表地がコットン、裏地がレーヨンなので、着るときに滑りやすくて、ポケットの周りに凧(タコ)糸が入っていて膨らんでいるのも特徴。ゴルフ用に着るモノとして一般化した定番です。
こちらはロンドンフォグというコートメーカーが作った「シティジャケット」です。ロンドンフォグと言いますが、1923年創業のアメリカブランドで、アメリカ海軍のために防水コートを生産する本格的なメーカーです。私が着ているのは、1940年代のシティジャケットですね。
男性は、「襟を立てる」ことで安定感が出ると思っていますが、ポロシャツの襟立てはNGで、トレンチコートやステンカラーコートなども襟を立てればいいわけではありません。某副総理のようにならないように注意してください。
今回のジャケット紹介のインナーはすべてポロシャツでカバーできます。ぜひみなさんも参考にして、クラススポーツスタイルを自分のモノにしてみてくださいね。