ライフスタイルは十人十色。おひとりさまもおふたりさまも大いに結構ですが、結婚というゴールをめがけて不幸なひしめき合いをしている男女のなんと多いことか。
そんな婚活のお悩みを、“女のプロ”川崎貴子がズバッと斬ります。
今回の相談者は、抜群にコミュ力が高いバツイチ美女。初対面の人にもスッと懐に入り、敬語から、やや崩したタメ口に切り替えるタイミングも絶妙。
空気をサッと読み、周囲の人が心地よく過ごせるように、さりげなくグラスを倒れない位置に移動させたり、おしぼりを追加したり。
しかし、我らが川崎貴子は、優等生女子の「自己犠牲的」な気遣いに気付く。話に集中する前に、アレコレとさりげなく手を動かす彼女に「お気遣い、ありがとう。でも今は話に集中しましょう」と優しく、そして厳しい口調で言い放った。
雷に打たれたかのように、目を見開く彼女。彼女の装着していた鎧がばらばらと落ちる音が聞こえた……。
【川崎貴子】
２度の結婚を経験し、現在の夫は８歳年下のイケメンの元ダンサー。二女の母。乳がんの闘病経験も持つ。経営者、結婚コンサルタント、コラムニストとして多ジャンルで活躍中。
今回の相談者は、佐藤夏美さん（仮名・32歳）。
夏美さんのスペックはこちら！
年齢：32歳
職業：外資系金融関連企業の事務職
恋人：なし
交際人数：4人
結婚暦：アリ
結婚願望：強い
顔：おっとり系で目が大きい整った顔
川崎：それにしても“気遣い上手”ね。私、これまでで多くの“察しがいい女性”に会ってきたけれど、あなたの気遣いは名人芸並み。「お茶もってきて」と言ったら、冷・温両方持ってきて、さらにそれぞれに合う茶菓子と、こぼした時のふきんまで持ってくるというか。
夏美：ありがとうございます。でも、お茶菓子を食べる時の手拭きと、黒文字を忘れていますよ。
川崎：あ、そうだったわね……じゃなくて！ その気遣いは素晴らしいけれど、時として男性をダメにしてしまう可能性は否めないわ。なんでもあなたがやってくれると思うと、周囲の人はあなたにさまざまなことを期待するようになる。あなたは能力が高いから、どんどん引き受けてしまう。そして、周囲の人の能力がどんどん退化していく……。
夏美：お見通しでしたか。それは私の結婚生活そのものです。最初はとても楽しくて、夫もとても優しくて最高だったのですが、別れるときは借金まみれになって「お前のせいだ」と泣かれました。怒鳴ったり暴力を振るってくれれば、心の整理もついたかもしれない。「お前に会わなければよかった」って、本当に傷つく。離婚してから２～３ヵ月は泣いて暮らしていました。
川崎：自分で借金しておいて「お前のせいだ」とは、くだらない男ね。彼はどんな人だったの。よかったら聞かせてくれる？ 言いたくなければ言わなくていいからね。
夏美：いいえ、言いたくて吐き出したくてたまりません！ まずは、結婚についてですが、私は29歳で結婚して、１年も経たずに離婚しました。
川崎：いわゆるスピード離婚ってやつね。
夏美：元夫は、大学時代からのサークルの仲間で、同級生です。ホントにモテる人だったんです。実家も都心にあり、ご両親もそれぞれが会社を経営していて成功している。しかも、誰もが知る会社の創業一族なんですよ。
彼自身は、大手広告代理店に勤務し、サッカーでインターハイに行ったりもしているイケメン。しかも次男です。兄も超スーパーエリートなんですよ。だから当然、彼はあらゆる女性が狙っていました。それなのに、私を選んでくれたんです。
川崎：スパダリ……いわゆる、スーパーダーリンね。でもねえ、表がキラキラしている人は、闇も深いことも多いのよね。もちろん、例外はいるけれどね。でも、あなたはその夫と、短期間で離婚した。光が強いほど、影もくっきり出たんじゃないかな……と思うのよ。
夏美：その通りでした。結婚すると彼は豹変したんです。彼は決断力と行動力がある人なのですが、裏を返せば相手の気持ちを気にせず、自分勝手にどんどん決めてしまう。
川崎：あ～わかるわ。あなたの好みを全くリサーチせずに、とんでもない高価なプレゼントを買ってきて、「買って来てやったぞ、喜べ」みたいな。
夏美：私の結婚生活、見ていました？？？ 怖いんですけど。
川崎：私も経験者なのよ（笑）。それで、プレゼントを喜ばないとふてくされる。察しがいいあなたは、彼が喜ぶように大げさに喜び、家には使いたくもないアクセサリーやバッグが増えていく。
夏美：そうなんですよ。それに、一昔前に「男らしい」と言われていたこと……例えば、大盤振る舞いをしたり、思い切って後輩を助けたりする行動を、意外としているんですよ。自分の生活の基盤も考えず、そういうことをする。
川崎：元夫はあなたの同級生ってことは、29歳で結婚したのよね。カッコよくて、スポーツ万能で、勤務先もよくて、実家が名家であるのに、そこまで独身でいたのは、何かがあったのよね。
というのも、この婚活道場をやっていて感じるのは、他者に共感ができ、自分を認めており、気持ちが安定している男性は、25～28歳くらいの間に結婚しちゃっているのよ。経験を重ねて気持ちが安定した男性は、35～40歳くらいで結婚する。アラサーの男性の結婚って、お互いによく考えなくてはいけないのかもしれないけれど、焦りと感情が先に立つというか……。
夏美：そうなんです！！！ 私はアラサーになって結婚をめちゃくちゃ焦っていました。周囲には、結婚話にとどまらず、出産話も来て、「なんで私はダメなんだろう」と思っていた時に、彼から「ずっと好きだった。結婚しよう」と言われて、飛びついた。友人期間が長いから、ソッコーで入籍してしまったんです。
川崎：あなたの察しの良さ、頭の回転の速さは、彼が求める理想の妻だったのかもね。だって、何もしなくていいじゃない。帰ってきてソファに座れば、自動的に冷えたビールと冷えたグラスが出てきて、そこに彼の顔色を見て、ちょっとした漬物とかクラッカーとか添えて出しそうだもの。
夏美：………息が止まった。そうしていました。まさにそうです。尽くしても尽くしても、彼の心は離れていく。
川崎：そう言えば、最初のほうに借金問題で離婚したって言っていたよね。
夏美：はい。彼はストレスを解消するように、浪費をしだしたのです。飲み会、服、バッグ、家電など、気になるものは何でも買う。私の収入も借金返済や生活費に回さなくてはならなくなり、私の楽しみだった地元の飲み会も行けなくなりました。
それに、「男がいる飲み会に行かないでくれ」と行動を束縛してきたし。私は自由を制限されたくなかったけれど、彼のために頑張ったんです。彼にもタバコを止めてもらったり、ビールを発泡酒にしてもらったりしたのですが、借金がどんどんできていくから、節約しても追いつかないんです。
川崎：尽くしたのね。大変だったわね。これもパターンなのだけれど、そうするうちに、彼は家に帰ってこなくなったんじゃない？
夏美：びっくりした！ まさにそうです。音信不通になることが増えた。彼は浮気をしていたとかではなくて、会社に泊まったりしていたみたいです。一度話し合おうということになり、彼から「お前が俺をダメにした」と離婚になりました。
川崎：いい切り上げ時だったのかもしれないわね。そのまま行くと、お互いに自滅していたかもしれないもの。
夏美：そうなんですよね……離婚すると割とスッキリして、私は転職も決めて、今の会社に入りました。それから２年、コロナ禍があっても変わらず、仕事は充実しており、毎日楽しく過ごしています。
川崎：ところで、あなた、既婚者の男性と付き合ったこと、ある？
夏美：ないです！ それだけは言えます。でもめちゃくちゃ誘いはあります。とんでもないプレゼントをもらったりとか、1泊30万円のホテルに誘われたりとかはありますが。
川崎：よかった。あなたはとても気が付くし、頭がいい。不倫願望がある男性にとって、格好の相手なのよ。それに、あなたの周辺の業界は、不倫願望がある手練手管の持ち主の男性がうようよいる。離婚歴があるってことは、言葉は悪いかもしれないけれど、「男に慣れている」と思われてしまうのよ。
夏美：あ～～～～。離婚したと言ったとき、さまざまな既婚の男性からめちゃくちゃデートに誘われたのは、そのせいだったんですか。私、どうしても断れない人からも誘われて、一日２回ディナーを食べたことありましたよ。それで太ったら誘いが来なくなった。今はもう体型は戻りましたが。
川崎：あなたは運がいいわねえ。不倫は時間の無駄だからね。不倫男の優しさはイリュージョンだから（笑）。それに慣れてしまうと大変なのよ。
夏美：それで、今日、婚活道場に来たのは、結婚したいから。今、仕事もプライベートも楽しくて、親ともいい関係で、このままだとずっと独身だと思うようになったんです。やっぱり私は「まともな結婚がしたい」と思うようになったんです。
川崎：あなたが思う「まとも」って何かしら？
夏美：きたきたきた！ その質問！ いただきました！ そう言われると思って、あらかじめ「まともな結婚生活ができそうな相手の条件」を書いておいたんです（スマホのメモを立ち上げる）。
川崎：本当に察しがいいわねえ（笑）。
夏美：え～と、金銭感覚がしっかりしていて、頼りがいがあり、仕事のグチを家に持ち込まない人と、穏やかで、落ち着いた結婚生活をする。
川崎：いいわね。でも、その相手の条件、太平洋くらい広いわよ。その条件で絞り込もうとすることは、海に落としたサングラスを拾うようなものだと思ったほうがいいわ。
夏美：え!? そうなんですか？
川崎：そうよ～。では、それぞれ理由を聞かせてくれる？
夏美：まず、お金のことは元夫で大変な思いをしたから、分相応に使う人がいいな、って。そして、頼りがいがある人と言うのは、私は兄が２人いて、兄たちがいろいろサポートしてくれたから。ウチの兄たちは、ホントにいい人で、奥さんも甥っ子や姪っ子もいい感じなんです。そんな兄や兄嫁から可愛がられている、妹キャラが染みついているので、頼りがいがある人がいいんです。仕事のグチについては、これは私がどうしても聞きたくないから。
川崎：夏美さん、あなたの背景がよくわかったわ。あなたの察しの良さ、人の懐にグッと自然に入って行く能力は、３人兄弟の末っ子ってことも大きいのね。
夏美：はい。そうかもしれません。
川崎：あなたは、結婚がしたい。それならば、婚活にエッジを立てよう。漠然と相手を探すことをやめて、あなたが望む男性がいる場所に行けばいいの。
夏美：どうすればいいんですか？ とりあえず、マッチングアプリをやってみて、相手を条件で切ってみたんですが、体目的の人ばかりで……。
川崎：あなたの場合は、そんな有象無象の人がいる海で泳いだら遭難するわよ。夏美さんのね、池を探すの。あなたはまず、「長男の池」に行こう。頼りがいがあり、金銭感覚がしっかりしている人は長男に多いわ。そこから、仕事のグチを言わない人を探せばいいの。
夏美：なるほど。歴代の彼で、「この人いいな」と思った人は、みんな長男でした。
川崎：そして、あなたにかけられた元夫の呪いを解こう。トラウマと呪いを引きずった婚活は、失敗する確率が高くなる。「また失敗するんじゃないか」とか「元夫みたいな人は嫌だ」という気持ちで相手に会っても、その人の本質は見えなくなる。
夏美：うわ～。グサグサ刺さりすぎて怖い。
川崎：それに、あなたと話をしていると、「みんなにいい顔をする病（やまい）」にかかっている気がする。これは“ド末っ子”の女性に多いのだけれど、万人受けをしてしまうあまりに、多くの男性が殺到してしまう。それであなた自身が“合う人”を見極めにくくなってしまうのよ。あなたの魅力をやみくもに銃乱射をしているような感じ。焦点を定めないと。何度も言うけれど、マッチングアプリはあなたには向いていないと思う。
夏美：もう、白状しますが、私、実は離婚届けを出した日に、マッチングアプリに登録したんです。元夫を引きずって泣いているのに、寂しくて、不安で、どうしようもなかった。
川崎：いいのよ。さみしいときは、なんだってすがればいいの。でも、離婚から２年、どうだった？
夏美：何もないです。夜景＋筋肉＋高級時計をプロフィール写真に使っているハイスぺ系の男性の誘いばかり来ています。「こんな男子にモテているんだから、まだ本腰入れなくていいかな」と思っているうちに、あっという間に２年が経ちました。秒でした。
川崎：コロナもあったしね……ってところで、あなたのマッチングアプリのプロフィールって、どんな感じなの？
夏美：見てください！ そして意見をください。
川崎：あ～～～。これは何というか、「自作自演 高嶺の花」というか。このリゾートの自撮り、このパンケーキ、この花！！！ 「マッチングアプリはこうあるべき」というセオリーに則っているだけで、あなたの人間性が見えないじゃない。「会って話す相手」の第一印象がここなのよ。人柄が見え隠れする要素がないと。
夏美：あ……確かに、会うんだった……。でも、どうしていいかわからないんですよね。婚活でのキャラ設定もできないし。
川崎：この連載で初めて勧めるけど、まずは「魔女のサバト」に入って、元夫の呪いを解こう。そして、そのうちに、「サバサバ系リア充キャリア女子」をテーマに婚活でのキャラを作り上げていくといいかもしれない。私、あなたの本質は、さっぱりしていてこだわりがない、素直な性格にあると思うの。
夏美：泣きそうです……そうです。私、素直なんだと思うんですよ。でもそれを言われたことがなくて。
川崎：素直さは、得難い資質であり、婚活では最強の武器になるのよ。あなたは、その素直さがあるから、勝ったも同然、必ず結婚できるわよ。
夏美：よかった！！！ 確かに、元夫の呪いはかなり強かったことがわかりました。
川崎：それは自分ではなかなか気づけないからね。気持ちの部分が整ったら、あなたのいいところをもっと探していこう。等身大の自分がわかれば、婚活はグッと前に進むわよ。
記事へのコメントもドシドシよろしくお願いします。川崎先生が答えてくれるかも？
Text:Aki Maekawa
Photo:Yuji Hirose
婚活道場では、川崎貴子先生にご相談なさりたい男女を募集しております。
また、家族の不和、夫婦間の不協和音などに関する「家族再生工場」という新企画も進行中。プライバシーには十分配慮しますので、お気軽に下記編集部のメールにご連絡ください。
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【川崎貴子 プロフィール】
女性に特化した人材コンサルティング会社、リントス株式会社代表取締役。経営者歴23年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は2万人以上。婚活結社「魔女のサバト」働く女性の為の婚活サイト「キャリ婚」主宰。「女のプロ」「黒魔女」の異名を取る。15歳と8歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』（総合法令出版）、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』（KKベストセラーズ）『私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由』（大和書房）『上司の頭はまる見え。』（サン マーク出版）『モテと非モテの境界線』（講談社）など。
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