いま見るとあらためて新鮮なド定番の一足
イタリアが誇る不朽の名作スニーカーといえば、真っ先に名前が挙がる「SUPERGA(スペルガ)」ですが、定番の「2750」が最初に登場したのは90年近くも前。
にもかかわらず、いまもほとんどデザインが変わっていないというのは驚きの事実です。それだけ、完成度が高いということなのでしょう。
確かに、ヨーロッパでは古くから人気があるらしく、モナコやカプリなどのリゾートを訪れると本当によく見かけます。
僕と2750との出合いは、ビームスでアルバイトをしていた約30年前。当時は、コンバースやトップサイダー、ヴァンズなど、アメリカ勢のスニーカーが全盛で、ヨーロッパものは珍しかったこともあり、とても新鮮に感じた記憶があります。
しかも、僕が初めて触れたメイド・イン・イタリーの製品(笑)。そのせいで、その後もスペルガは、自分のなかでは「これぞ イタリア!」というイメージを保ち続けています。
いまもピッティ・イマージネ・ウオモ(フィレンツェで年2会開催される世界最大級のメンズファッション見本市)に取材に行くと、このスニーカーをスーツやジャケットに合わせているファッション関係者がたくさんいるんですよ。
しっかりとした厚手のキャンバス地は、履くほどに味わいが増すだけでなく、耐久性も抜群。ソールは、ゴムの弾力が上がり安定性が向上する、製造工程で靴に無理をさせないため型くずれが少ない、加硫圧着によってソールとアッパーが強く結合されているため底が剥がれにくいなど、さまざまなメリットを備えた伝統的な「バルカナイズ製法」で底付けされています。
バルカナイズ製法は古い製法ながらも、靴の機能を最大限に引き出す最善策。スニーカー本体とゴムソールの境目を補強するために巻かれたラバーテープもいいアクセントになっています。
なぜ、こんなに耐久性に優れているのか不思議に思い、ちょっと調べてみたんですが、スペルガにはこのスニーカーによく似た「2390」というイタリア海軍のセーラーシューズをつくっていた歴史があるんです。それゆえ無骨というか、男らしい印象があるのかもしれません。
ちなみにスペルガという名前は、誕生当時の工場がいまでは世界遺産にもなっているトリノのスペルガ聖堂の真下に位置していたため。ソールにも、その文字が刻印されています。
現在も本社(現在の生産工場はベトナム)はトリノにあり、社屋の屋上から高台にあるスペルガ聖堂が見えるんだとか。そんなロマンティックなストーリーが語れるのも、何だか素敵ですよね。
各6300円(税抜)/SUPERGA(カメイ・プロアクト)
【問い合わせ】
カメイ・プロアクト
03-6450-1515
Photo:Ikuo Kubota(OWL)
Text:Toshiaki Ishii