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EV(電動車)にMT(マニュアルトランスミッション)は無意味と言える理由

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

■電動化がすすむとMT車は消滅するの?

■電動化がすすむとMT車は消滅するの?

世界的に車の電動化が進む中、2020年末、遂に日本でも「2030年代半ばまでに新車販売を全て電動車とする」との政府の方針が示されました。これによって、国内自動車メーカー各社は、電動化への流れを加速せざるを得ないこととなったわけです。が、単純にエンジンをモーターに置き換えればいい、というものではなく、電動車となることで、様々な部品に影響が出てきます。そのひとつが、トランスミッションです。

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プリウスのトランスミッション・シフトはもはや電気のスイッチのように小さい

近年の日本では、新車販売されるクルマの99%がAT(オートマチックトランスミッション)、という状況ではありますが、絶滅したわけではなく、一部のスポーツモデルや、商用車などで、現在もMT(マニュアルトランスミッション)がラインナップされています。この理由については、「ATよりも低コストですむ」ことや「趣味性」などが挙げられ、わずか1%の需要とはいえ、MTは現在も必要な装備ではあります。

ハイブリッド車であれば、トランスミッションの機能は必要ではありますが、BEV(Battery EV:日産リーフのようにエンジンがなくバッテリーに充電した電力で走行するクルマのこと)にはトランスミッション自体が不要。はたして、クルマの電動化によってMTは絶滅してしまうのでしょうか。

 

■ストロングフルハイブリッドと、MTの組み合わせは無意味

エンジン始動を伴わずにモーターのみで走り出せるストロングフルハイブリッドと、MTの組み合わせは、「できなくはないけれど無意味」です。

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ハイブリッド車の代名詞「プリウス」、トランスミッションはCVTとなる。

ストロングハイブリッドやEVの駆動用モーターは、発進直後から強いトルクを発生し、かつ1万rpm以上の回転数まで上げることができます。そのため、通常のガソリン車のように、必要なトルクを出すためにギアを変速していくMTは無意味なのです。また、シフトチェンジのたびに、エンジン音が変化する楽しみも、感じにくくなるでしょう。

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BEV(バッテリーEV)の場合だと、トランスミッション自体が不要となる

ただし、MT操作の雰囲気を味わいたいけど、ゼロ発進時のクラッチ操作が苦手なので、1速はエンスト知らずのモーターがよい、という方でしたら、好ましい設定になるかも知れません。

 

■マイルドハイブリッドとの共存は可能

しかし、マイルドハイブリッドであれば、MTと共存することができます。かつて、ホンダCR-Z(2010-2017、1.5L i-VTECエンジン+ IMAシステム)が、ハイブリッドシステムとMTを組み合わせたシステムを採用していました。ドライバーがギアを選んで、エンジンのおいしい回転数を維持するといった、マニュアル車特有の運転操作においては、エンジン回転をアシストするモーター方式であるマイルドハイブリッドならば、何の問題もありません。もちろんアイドリングストップも共存可能です。

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CR-ZのMT仕様車の内装

ただし、これまでのMT車に対して、モーターが足される分、コストアップは免れません。現時点、商用車などでマイルドハイブリッド方式のMT車がないのは、コスト的なメリットが出せないためでもあると考えられます。

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CR-Zは、マイルドハイブリッドシステムとMTを組み合わせたシステムを採用していた

しかし、MTの「趣味性」という長所は、マイルドハイブリッド化では味わいにくくなるかもしれません。1速、2速とシフトチェンジを行うのは、そもそも「トルクバンドを生かした走り」のためにおこなっています。1速の時点から、モーターが強いアシスト力を発揮するならば、MT車を選んだドライバーにとっては、面白みが感じられなくなると思われます。

 

■とはいえ、縮小は避けられない

しかしながら、自動運転化が進めば、MTのさらなる縮小は避けられません。自動運転技術には、加速、減速、ステアリング操作はコンピュータが判断し、制御することが必要です。ドライバーの意図でギアを選ぶMTはかえって「邪魔」となるのです。

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S660の内装。小排気量車をMTで操る楽しみは格別

また、ゼロ発進時からフラットで強力なトルクを発生するモーターをもつBEVにおいては、複数段のミッションを持つ必然性がありません。

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2022年での生産終了が発表されたS660。6速MTの軽スポーツカーが新車で手に入るのはこれが最後かもしれない

しかし、もし仮に、「モーター駆動+多段ミッション」に、新たな可能性を見出し、「限られた環境でそのパフォーマンスが発生できる」ような使い道が見いだせれば、こうしたクルマが誕生する可能性はゼロではないと考えられます。

クルマが電動化、そして自動運転化へと進む中で、それらの性能を磨き上げるのはもちろんのこと、「低コストで供給」すること、そして「クルマの趣味性」をどう残していくかも、今後の課題といえそうです。

Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:Getty Images,TOYOTA,NISSAN,HONDA
Edit:Takashi Ogiyama

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吉川賢一ポートレート吉川賢一(自動車ジャーナリスト)1979年生まれ。元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けています。


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