日中の疲れをリセットするため朝までぐっすり眠りたいなら、仰向け寝がいい? 横向き寝? あるいはうつ伏せ? どんな寝姿勢がベストなのか、今回は快眠できる姿勢についてお話しします。また、寝相の悪さが目立つようなら、病気のサインかもしれません。
翌日の仕事がうまくいく寝姿勢とは?
スマホをいじりながら寝落ちしてしまう場合はともかく、布団やベッドにもぐりこんだら、どういった姿勢で目を閉じて眠りにつくことが多いでしょうか?
人それぞれ特徴や好みがあり、顔の向きや体の形がいつも同じでなければ寝つけない人もいれば、どんな姿勢でもすぐに眠ってしまうという人もいるかもしれません。
20~60歳代の約5000人の男女を対象にした「ぐっすり眠れる姿勢」について調査したデータがあります。その結果は1位「横向き 46%」、2位「仰向け 34%」、3位「うつ伏せ 18%」。ほかの調査でも同じく「横向き」と答える人が多いと報告されています。
横向きで寝る人がおよそ半数という結果だからといって「快眠できるのは横向き寝である」ということではありません。自分が好きな姿勢で寝るのが一番睡眠の質を上げることができる、つまり、翌朝すっきり目覚めて仕事もスムーズにできる、と考えられます。
熟睡すれば、行儀よく眠っていられない!?
自分のお気に入りの姿勢で寝ると睡眠の質が上がる、ということにはきちんと理由があります。まず、自分にとって窮屈に感じる姿勢では寝つきが悪くなってしまうからです。
先ほどの調査では「座って眠る」という回答も1%ありました。座ったままぐっすり眠ることができるとは驚きますが、本人が好んでそのように寝ているのですから、ムリに矯正する必要はありません。
もうひとつは、眠ってしまえば、自分の姿勢をコントロールすることは不可能です。「健康によい寝姿勢」や「行儀のよい寝姿勢」を意識しても、寝つくときの姿勢と最初の深い睡眠が終わったときの寝相は、多くの場合、異なっています。寝相が悪くなるのは、熟睡の証しとも言えるのです。
「仰向けで眠るのが正しい眠り方だ」「うつぶせ寝が健康にいいらしい」といった思い込みや情報により、実践しようとがんばってしまう人もいるようですが、何より、自分が心地いいのかどうかを考えることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群やレム睡眠行動障害のことも
パートナーや家族に「寝相が悪い」と言われても、恥ずかしいと思う必要はありません。先ほどもお伝えしたように、熟睡すれば寝相が多少悪くなってしまうのは自然なことです。
ただし、子どものころよりも寝相の悪さは落ち着いているはずです。というのも、たとえば子どもは睡眠中にベッドから落ちることがありますが、大人ではあまりないですね。成長するにつれ、睡眠中でも脳の中のいわゆる「見張り番」が働いていて、ベッドの縁を感知できるようになるからです。
ところが、大人になっても寝相の悪さが目立つ場合は要注意! 病気が潜んでいる場合があります。たとえば、睡眠時無呼吸症候群やレム睡眠行動障害などの可能性が考えられます。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気で、10秒以上の無呼吸状態が一晩のうち何度も繰り返されます。そのため熟睡できず、何度も寝返りをうつなど寝相が悪くなりやすいのです。
睡眠時無呼吸症候群の人は仰向けで眠ると気道が狭くなりやすいため、なるべく横向きで眠るように意識しましょう。市販の口閉じテープやマウスピースを使うことで、快適に眠ることができるようになる人もいるようです。
レム睡眠行動障害は、夢でしていることと同じように身体が動いてしまう病気です。たとえば、夢の中で格闘していると、寝ているにもかかわらず実際にそばで寝ている人を殴ってしまいます。また、夢の中で誰かに追いかけられて逃げていると、ベッドや布団から起き上がり、部屋の中を立って歩いて家具にぶつかってしまうことがあります。
人にケガをさせたり自分もケガをしたり、という場合には、早めに睡眠障害の専門医を受診してください。単に寝相が悪いだけ、寝ぼけ方がひどいだけ、とスルーしないようにしましょう。
仰向け寝、横向き寝、うつぶせ寝……と、眠るときの姿勢は人それぞれでいいのです。自分が眠りたい姿勢でリラックスして布団に入ることこそ快眠への近道、翌日、仕事もプライベートもベストパフォーマンスを狙えるのではないでしょうか。
text:Satoru TSUBOTA
photos : Getty Images