愛とは、どんなに高額を貢いでも手に入るようなものではない
★★★
ようこそ お越しくださいました
ここは繁華街にひっそりと佇む
『純喫茶ぺぺ』
昭和レトロでどこか懐かしさを感じる
恋に迷える大人達のユートピア
ここは純喫茶の雰囲気を大切にしており
一風変わった店主が
お客様をイメージした珈琲カップの代わりに
お悩みにぴったりの「恋のナンバー」を
硬派にお出ししております
刺さりすぎて気絶なさらないよう
お気をつけくださいませ
どうぞ 最後までおくつろぎの上
ゆるりとおたのしみください
純喫茶 ぺぺ
★★★
本日のお客様は、
私は巷で言うホス狂いです。
担当ホストに、総額1,000万円ほど貢ぎました。
彼をナンバーワンにしたら、私と結婚してくれると言ってきたのですが、他のお客にも優しくする姿を見ると病みます。
エース(担当の一番の太客)になる為、パパ活したり地方に出稼ぎしたり、必死に頑張ってきたので。
このまま彼の言葉を信じて頑張っていいですか?
──ヤメロン・ディアス サービス業(24)
ヤメロン・ディアスさん、ご来店ありがとうございます。
まだまだお若いのに、色々とご苦労なさって。複雑なご事情をお察し致します(気絶)。
人生って本当に十人十色ですので、貴女の今までの生き方を否定する訳でもなく、まずは貴女の幸せをお祈りさせてくださいね。
【答えというのは最初から出ている】
今回は、「彼の言葉(結婚してくれる)を信じていいですか?」というお悩みですが、その答えを一番知っているのは「貴女の心」だと思いました。
女性の相談の大半って、自分の中でもう答えは出ているのに、誰かに話して答え合わせしたい人が多いのです。
もしくは、「馬鹿者! そんなのやめとけ〜!」って厳しく叱って背中を押されたいか(気絶)。
【理想と現実】
「お前が頑張って貢いで、俺がナンバーワンになったら、結婚出来るから」
という風に、目の前にタラレバの結婚というゴールをチラつかされて、店ぐるみで貴女の恋心を利用している気がするのは気のせいかしら。
そういう見え透いた色恋営業も含め、貴女が楽しめているのであれば良いのですが、貴女が苦しんでいるのであれば、「そろそろやめとけよ」と言いたくなります。
【愛はお金で手に入るの?】
お金を使えば、彼に必要として貰える。お金を使えば使うほど、彼にとって一番の存在になれる。
そんな風に自分の都合が良い解釈をしていませんか?
「いつか彼に裏切られるかもしれない」
その現実を受け止めるのが怖いのではないでしょうか。
こんなに頑張った貴女を前にして、先に謝っておきますが、どんなに高額を貢いでも、愛というのは手に入るようなものではないのです。
逆に愛があるなら、本来はお金なんて1円も払わなくても、自然と一緒に居てくれる筈なのです。
色恋営業あってこそのホストクラブだと言われるかもしれませんが、恋愛ゲームに飲み込まれ、貴女が闇落ちするまで働かせる男が、貴女を幸せに出来るとは到底思えないのです。
【何故、女は闇落ちするのか】
新宿歌舞伎町には、1ヵ月に7人も飛び降り自殺をしたビルがあるというのを聞いたことありますが、ほとんどがホス狂の若い女性だそうです。
何故、キャバ嬢にハマって自殺する男性というのは聞いたことがなく、ホス狂の若い女性ばかりが自殺に追い込まれるのか。
男というのは、心と身体の棲み分けが出来る生き物。一方で、女というのは心と身体が運命共同体である人が多いからだと推測いたします。
【本当の漢は、好きな女を泣かせない】
本来のホストクラブは、女の子たちにプラス・アルファの生きがいを与える場所なのだと思うのですが、女性の弱みにつけこむ“心の弱いホスト”が増えたというのも事実だと思います。
本当に貴女を愛しているなら、ダークサイドに落ちてしまいそうな貴女を引き上げてくれるでしょう。
貴女の明るい未来をご提案するならば、1,000万円稼げるその努力と熱量を、違う仕事に活かしてください。
そんな男、捨ててしまえ。
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【答え】
そんな男に油を売ってる時間は無いのです。
1,000万円稼げる努力と熱量を、違う人生に活かしてください。
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今回ご紹介するナンバーは、昭和の大スター鶴田浩二さんの「傷だらけの人生」。
藤圭子さんの女の怨歌では無く、良薬口に苦しということで、厳しいことを言ってくださるこちらの曲に致しました。
任侠映画に欠かせない昔気質の侠客ばりに、軽佻浮薄な人情への憤りと、日陰育ちのやくざ者の哀しみを歌った重厚な作品で、鶴田さんの語りから始まるドラマティックなナンバー。
「古い人間」が「今の世の中」を憂う詩にご注目ください。
“
好いた惚れたとけだものごっこが
まかり通る世の中でございます。
好いた惚れたは、もともと心が決めるもの…
こんなことを申し上げる私も
やっぱり古い人間でござんしょうかね。
”
「傷だらけの人生」
歌:鶴田浩二. 作詞:藤田まさと. 作曲:吉田正
参照:『Uta-Net』
お客様、選曲はお口に合いましたでしょうか?
またのご来店、心よりお待ち申し上げております。
純喫茶 ぺぺ
Photos:Yuta Takamatsu, Shuhei Kato
Text:RIKAPEPE(ペペ)
Illustration:Eri Sakai