日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。
御年76歳でInstagramのフォロワーは3万3000人超、服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。
そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。第10回目は、茶色の着回し編です。
ひとくちに茶色といっても千差万別です。今回は日本の食卓の豊かさを象徴する料理の1つ、”煮たくあん”から色をひろった茶色の着回しスタイルを5つご紹介していきます。
”煮たくあん”は、干して、煮込むことで甘さを増したたくあんのことです。
【1】ヘビーウェイトなツイードのスーツ
まずは、コチラのスーツを軸にしながらコーディネートしていきます。フラップがついてブリティッシュカントリー的なスーツです。
このスーツに合わせるシャツは、言うまでもなく茶系かベージュの色を被せていきます。
ドレススポーツという考え方をすると、このコーディネートではネクタイをします。軸となるスーツのツイードをよく見ると、グリーン、茶色、カーキ、オレンジが入っています。
さらに、ボタンの色も意識することで、ネクタイの色が必然と決まります。今回はブラウン系からカーキのような色です。
靴はスエードを選び、ネクタイとの色を合わせます。また、ホーズも同じようにネクタイと色を合わせていきます。このように、ワントーンで色合わせをしていきます。
また寒くなってきた際は、バーバリーのローデンコートを合わせて羽織ります。
いかがですか? ワントーンで色合わせを行い、小物使いも揃えているコーディネートです。
【2】トラウザーズを軸にして、白と合わせるスタイリング
次は、トラウザーズを基軸としたコーディネートを考えていきます。
まずは、茶色のトラウザーズに対して、白のハイネックを合わせていきます。
また、赤みがかった茶色のニットを上に合わせていきます。首元にはチェック色を合わせたマフラーを合わせましょう。
最後の仕上げに、バブアーのジャケットを上に羽織ります。中は白のハイネックにしていることによって、スッキリした合わせ方になります。
靴は、ベロアの無地のスリッポンを合わせます。ここに、あえてアーガイル柄のホーズを合わせていきます。
上は無地にしているため、ホーズで柄を取り入れるところがポイントです。
茶系で色合わせをしていきながら、中は白のタートルネックでスッキリとみせている、2つ目のコーディネートが完成です! マフラーを外しても、首元が映えるコーディネートになっています。
【3】ジャケットを軸としたスポーティーなコーディネート
まず、ジャケットにどのトラウザーズを合わせるのか、ジャケット自体がヘビーウェイトで上にコートを羽織る必要の無いがっちりとした生地でできています。
モールスキン、通常コットンスエードと言われるトラウザーズを合わせていきます。
そしてシャツはやや大柄のギンガムチェックを選択します。ニットはクルーネック、つまり丸首のニットを合わせることで、シャツの襟の部分が少しだけ出るように合わせます。
また、ベルトはドレスにもカジュアルにも応用できるメッシュのものを合わせます。色はもちろんニットの色と合わせていきます。
ここで、スポーティーな表現をするために、サイドゴアのスエードの靴を合わせます。ホーズは茶色を選択。
ジャケットがヘビーウェイトなのでコートはいらないですが、寒くなった時のために、マフラーを巻き込むことでまとめていきます。
スポーティーさを演出したコーディネートです。コートを羽織らずとも、少し暖かみを感じる合わせ方になっています。
【4】トラウザーズを軸として冬物シャツを合わせたコーディネート
今回は、トラウザーズを軸にして、スタイリングを組み合わせていきます。
ビンテージのペイズリー柄のシャツを合わせていきます。バイエラという英国もののシャツで、ウールとコットンが入っている冬物を合わせます。
このペイズリー柄の中にグリーン、茶色などの色が全て含まれていることがポイント。
ここに、バルスタリーノ、いわゆるドライビング用のジャケットを上に羽織ります。ロールスロイスなどのレザーのシートを作る、コノリー社のレザーを採用していて、ペラペラなカーディガンのようなレザー生地になっています。
また、ビンテージもので、チャーチのハンティング用の靴を合わせていきます。裏のソールはブッシュの中に入れるように、ビブラムのようなソールになっています。ここに、ややアクセント強めの明るいホーズを合わせます。
マフラーはシャツの柄と色合わせをして、被せていきます。
ドライビング用のグローブではないですが、色合わせをしたグローブを合わせていきます。コートなしではありますが、少し暖かい季節向けのコーディネートの完成です。
【5】トラウザーズを軸としてカーキを取り混ぜたコーディネート
最後のスタイリングは、トラウザーズを軸に、薄めのカーキ系のシャツを最初に合わせていきます。
ここで赤峰氏のちょっとした冒険。カーキ、ベージュの濃淡が入っているボーダーのニットを合わせます。
寒くなったときに羽織るものを考えておきたいので、アウターはバブアーのジャケット、第二弾のものを合わせていきます。
襟は立てて着て、ウエストをぎゅっとベルトで締めて着ると非常にかっこいいつくりになっています。チョコレートブラウンと言うよりは、カーキに寄った色を合わせていきます。
マフラーを巻き、ホーズはボーダーのニットに合わせていきます。グリーン、カーキに合わせたスペルガの靴を選ぶことで、色の濃淡を上手く組み合わせることができます。
以上が、カーキを取り混ぜながらブラウンのスタイリングが完成です。
以上が今回の5つの着回し編です。ブラウンシリーズはいかがでしたでしょうか。赤峰氏はいつか”Mr.ブラウン”と言われたいと思っています。
「茶色に始まり、茶色に終わる」
ブラウンを制覇した人が一番かっこいいと言われておりますが、まだまだ発展途上です。ぜひ茶色をどのように着回すのか、合わせていくのか、悩んだ際はぜひ参考にして下さい。ブラウンを制する日も遠くはないかもしれませんね。
Text:FORZA STYLE
プロフィール
赤峰幸生
イタリア語で「出会い」を意味する、インコントロ代表。大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年から『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界から注目を浴びる日本人のひとり。