既成靴においては J.M.ウエストンのクラシカルなラインでしか見られない技法がスゴい!
あなたの靴を見せて頂こう企画、通称「靴魂(くつたま)」の2020年を振り返る記事も今回がラスト。5位の発表をもって、通常のスタイルに戻ります。
というわけで、第22弾は5番目にアクセス数が多かった、J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)をピックアップ! 1891年に創業した、フランスのシューズブランドを代表する老舗です。
創業者エドゥアール・ブランシャールの息子ユージェーヌは、アメリカ靴の製造方法に関心を示し、ボストン近郊の街 ウエストンにてグッドイヤーウェルト製法を学んだことからブランドをJ.M.ウエストンと名付けて 大きく成長させ、現在に至ります。
既成靴において J.M.ウエストンのクラシカルなラインでしか見かけない技法があり、有名な割りにあまり知られていないので、今回はまず その辺のお話から。
通常 グッドイヤーウェルト製法では、中底にリブテープと呼ばれるT字形のパーツを接着します。このリブテープのおかげで、すくい縫い(靴の中底にアッパーをつり込んで、ウェルトと呼ばれる棒状の細長い革を巻きつけながら縫い付けること)が機械でできるようになり、量産が可能になりました。
しかし、ウエストンは中底に切れ目を入れて 掘り起こした通称「ドブ」を作り、ここをすくい縫いしていきます。これは 9分仕立てというハンドソーン製法と同じやり方で、時間と手間、そして職人の技術も必要なのです。
ただ、この方法で作ることによって、履き始めの初期段階から 靴の返りが良くなるため履き心地も快適になります。実際の付き方は逆さまですが、リブテープの形状を「T」、ドブの形状を「r」と考えると、どちらがチカラをかけずに折れ曲がるか想像がつきやすいのではないでしょうか。
この辺りについては、「百“靴”争鳴」企画 福祿壽 奥山武さんのインタビュー後編を読んでいただくと分かりやすいかもしれません。
J.M.ウエストンの価格も 昔に比べると上がりましたが、原皮の高騰や、上記の技術を持った職人への対価を考えると、やむを得ないのかもしれません。今後もっと値上がりしたり、クラシカルなラインですら技法が変わってしまうという悲しい事態が訪れるかもしれないので、悩んでいる方は早めに決断した方が良いと思います。
では、話をクルリンパと戻して J.M.ウエストンのクラシックラインから素敵な投稿5選をご紹介していきます!
ジェイエムウエストンの#641 ゴルフ
まずは、@kotetsu.okinawaさんの投稿から。
J.M.ウエストンの定番、「#641 ゴルフ」です。

1955年にゴルフ場の芝生で誕生したダービーシューズで、本当に何にでも合うオールマイティな一足です。
@kotetsu.okinawaさんも投稿の中で選んだ理由を丁寧に記載していますが、美しいボックスカーフに加えて、堅固な構造、クッション性とグリップ力にも優れて 減りにくいリッジウエイソールなど、褒めるポイントが盛り沢山。
とにかく有能なオールラウンドプレイヤーで、タフな行動が求められる世界中のジャーナリストに愛され、「ジャーナリストシューズ」などとも称されています。
@kotetsu.okinawaさんは靴磨きがお好きなようなので、今後このゴルフが履き込まれ、磨きを重ねることでどんなふうに経年変化をしていくのか楽しみです。ぜひ経過報告もお願いします。
ジェイエムウエストンの#641 ゴルフ
続いては、@g.g.golosoさんの投稿。
こちらも「#641 ゴルフ」ですが、タンボックスカーフと、ブラックグレインレザーでしょうか。

堅牢なつくりに黒のシボ革ですから、向かうところ敵ナシな最強の雨用革靴ですね。
エンボス仕上げが美しいので、おそらくデュ・プイ社製のチェルケスレザーを使っているのだと思いますが、適度な厚みと柔軟性もあって とにかくイイ革!
@g.g.golosoさんが記載している通り、スーツスタイルには合いませんし、女性との会食にもあまり適してはいないんですが…、履いてみると惹かれてしまう。不思議な靴です。
前述した製法で 履きやすいっていう理由もあるかもしれません。
最近は出番が減ってしまっているようですが、また頻繁に履いてあげてください! そして投稿もよろしくお願いします。
ジェイエムウエストンの#677 ハントダービー
次にご紹介するのは、ジョンロブの回にもご登場いただいた@ryuki_hさんの投稿。
ジェイエムウエストンのクラシックスタイルを代表し、時代を超えても不変な「#677 ハントダービー」です。かつては「ドゴール」なんて呼ばれていたことも。

とにかく目を奪われるのが、すくい縫いのステッチ! 蝋引きの麻糸を より合わせた太い縫い糸が、三角形になって力強く手縫いで縫製されています。
しかも、出し縫い(ウェルトと本底を縫い合わせること)のピッチに合わせてウェルト部分に刻まれた目付けは、ウィールではなく専用のコテで ひとつひとつ付けられているんです。
量産をしているメーカーでありながら、こんなにも手仕事を多用するモデルが存在し、ノルウィージャン製法の靴の中でも他に類を見ない作りっていうのがスゴい! ちなみに、専属の職人1人が1日に作れるのは、たった1ペアのみだそうです。
デュ・プイ社製のロシアンカーフもイイ雰囲気です。
ジェイエムウエストンの#180 シグニチャーローファー
続いても、 @ryuki_hさんの投稿。ジョンロブに続いて、どんだけスペシャルな靴持ってるんですか…?
「ゴルフ」と双璧をなし、ブランドを代表するアイコン的な存在で、世界で最も愛される「#180 シグニチャーローファー」のリザード、クロコ、ボックスカーフの三連星! 羨ましすぎます。

愛用者曰く、「一足手に入れると 別の色や素材が欲しくなり、気がつけばバリエーションで揃ってしまい、こればかり履く毎日」だそうですが、見事に その通り。
またもや無粋ですが、3足合わせるとお値段が……。考えないことにしましょう(笑)。
フレンチトラッドのアイコンとして1946年に誕生してから75年経った今でも人気が陰ることなく、唯一無二の存在となっている「#180 シグニチャーローファー」。とくにエキゾチックレザーは 今後生産するのがより困難になってくると思いますので、高額ではありますが早めに入手しておくのが正解かと。
もしシャークを購入されたら、すぐにポストしてください! 楽しみにしてます。
ジェイエムウエストンの#180 シグニチャーローファー
最後は、@bomber_hdさんの投稿。
こちらも「#180 シグニチャーローファー」ですが、J.M.Weston for TOMORROWLANDのコンビタイプです。

昨日2月3日に「立春」を迎え、暦のうえでは 春の始まり。そろそろブーツを脱ぐ準備をし、シュークローゼットで休憩中だったローファーを引っ張り出して、履く前メンテナンスをしてみても良いのではないでしょうか?
@bomber_hdさんの投稿は、夏の頃のものですが、やっぱり素足にローファーは気分が上がりますよね。それが爽やかなブルーとホワイトのコンビだったりしたら、なおさら!
まだまだコロナがどうなるか分かりませんが、暖かくなったら こんなローファーを履いてリゾートへ繰り出したいものです。
そんな希望を抱いて、22回目は終了したいと思います。あー、ウエストンやっぱりイイなぁ。クロコの「#180 シグニチャーローファー」とか清水ダイブしたいけど、奥方に愛想を尽かされそうなので、ここはグッと我慢のコで。…でも、とりあえず見るだけ 青山行ってみようかな。
それでは、本日はここまで。是非これからも ドレスシューズに限らず、ブーツやスニーカーなどなど、みなさんの愛用靴を「#靴魂」を付けて たくさんポストしてください! 新たな目標は、#服魂に抜かれず、#腕時計魂に追いつくことです!!
ちなみにですが、会員登録して頂けるとコメントを書き込むことができますので、#靴魂に対するご意見や感想、「オレはココの靴が好きだー」「こんな切り口で靴が見てみたい」などなど奮ってコメントしてください。それから、インスタグラムの #靴魂(くつたま)を介して、皆さんが交流してくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
投稿に関してですが、撮影の仕方は自由。靴のみ、履いている足元、その靴を中心としたコーディネートなどなど、靴が写っていれば何でもOKです。ぜひご自慢の一足をインスタグラムに投稿してください。もしかすると あなたの投稿を取り上げるかもしれません。
それでは次回の「あなたの靴、見せてください」もお楽しみに!!
Edit:Ryutaro Yanaka