歴史的名作や幻のモデルを蘇らせた「復刻版」は、いつも大人気のジャンル。そのため毎年いくつもの復刻版が発表されています。
そしてそんな復刻版のいちばんの見どころが、どこまでオリジナルを再現できたか、ということ。復刻版の究極は、オリジナルの完全再現ですからね。
そこで近年はデジタルスキャニング技術によりオリジナルを計測し、細部までまったく同じに再現した完全復刻版も登場。
たとえば、2017年にはオメガが「シーマスター」「レイルマスター」「スピードマスター」のマスター3部作のファーストモデルをそれぞれ完全復刻。2019年にはブライトリングが歴代の「ナビタイマー」のなかでも人気の高い1959年製モデルを完全復刻。
どのモデルも、まさしくオリジナルの完全再現がなされているところが、時計マニアを歓喜させました。
ですがそれとは異なり、あえてオリジナルとは違う、現代的なアレンジをした復刻モデルというのも、復刻版の醍醐味のひとつ。オリジナルのデザインを踏襲しつつ、素材や性能をアップデイトするといった、いわば「いいとこ取り」が完全復刻版にはない大きな魅力なわけです。
ということで、ここでご紹介するのは、そんな現代的なアレンジをした復刻版の新作たち。どれも魅力的で、個人的に「欲しい!」となったモデルばかり。本当に大おすすめですよ。
BVLGARI ブルガリ
ブルガリ アルミニウム クロノグラフ
自動巻き、アルミニウムケース、ケース径40mm、ラバーブレスレット、100m防水。45万5000円(税抜)
2020年は「ブルガリ アルミニウム」のデビュー20周年。それを記念して復刻モデルが発表されました。
ラインナップは、3針とクロノグラフの2種。アルミニウムとラバーの斬新な素材使いや、ブラックとホワイトのグラフィカルなカラーリング、ミニマルなデザインなど、オリジナルの魅力をほぼそのまま踏襲。オリジナルをリアルタイムで見ていた世代であれば、懐かしさと当時の憧れなんかを思い出しジーンとしちゃいます。
という一方で、3針もクロノグラフもマニュファクチュール=ブルガリの自社製自動巻きムーブメント搭載と高性能化。ケース径も38mmから40mmへと現代的にアップデイト。防水性能も以前の日常生活防水から100m防水へとアップされ、より機能的に実用的になっています。
【問い合わせ】
ブルガリ ジャパン
03-6362-0100
OMEGA オメガ
スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール
手巻き、SSケース、ケース径39.7mm、SSブレスレット、50m防水。151万円(税抜)
「スピードマスター」は時計好きなら誰もが知る歴史的名作。アポロ11号による人類初の月面着陸で使用され、世界で唯一の月に降り立った時計=ムーンウォッチです。
そしてその最初期の搭載ムーブメントであり、すべての月面着陸で使用されたのが「Cal. 321」。その名作ムーブメントを2019年に完全復刻。
それを搭載した2020年の新作がこれ。ベースに選ばれたのが、リュウズガードなし、ダイヤルに「Professional」の表記のない、サードモデルというのもポイント。ムーブメントは完全2度組みで、1つを完成させるのに2日かかる、というのも特別。
さらにケーシングと仕上げに1日かかり、年間生産本数はわずか1000本程度。でも限定ではないので待てば入手可能、というのが時計好きにはうれしい。うーむ、本当に欲しいです。
【問い合わせ】
オメガお客様センター
03-5952-4400
ZENITH ゼニス
クロノマスター リバイバル “シャドウ”
自動巻き、チタンケース、ケース径37mm、ラバーストラップ、5気圧防水。88万円(税抜)
歴史的名作クロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」が発表されたのは1969年。その翌年の1970年にゼニスは当時としては珍しいブラック仕上げを施したステンレススティールケースの手巻きクロノグラフのプロトタイプを製作。
だがわずかな本数が作られたのみで、市場には出回らず、社内でもほとんど知られることのない、幻のモデルとなっていました。
それを2019年に偶然発見、現代的に蘇らせたのがこのモデル。独特のケースや、小振りな37mm径サイズなど、全体的なデザインはほぼオリジナルを踏襲。
しかしムーブメントを「エル・プリメロ」にしたのが大きな特徴。ケースもブラック仕上げではなくチタンのマイクロブラスト仕上げのマットなダークグレーで、モノトーンでまとめたカラーリングが最高に格好いいです。
【問い合わせ】
ゼニス ブティック銀座
03-3575-5861
Text:Yutaka Fukuda