クラシックとモードの中間点を狙ったフツーの一枚
Tシャツと同様に、シャツも白と黒は僕のワードローブに欠かせません。例えば、日中は白シャツにタイドアップのスタイルで働いて、夜のパーティでは黒シャツに着替えてノータイで 首元のボタンをふたつ外すとか……。僕にとっては、香水の使い分けと似ていて、それだけで印象も気分も随分と変わるんですよね。
そんなわけで、僕が大好きな白シャツ専門の「アルコディオ(ARCODIO)」に、無理を言って自分好みの黒シャツを作ってもらいました(苦笑)。

少しモードっぽい印象に仕上げたかったので、襟型をセミワイドショートポイントの「GINO(ジーノ)」に、ボディはスリムな「ARBERTO(アルベルト)」を選びました。生地は新疆綿を使用した3ファンクションのブロードを使っています。

昔から黒シャツは好きで、いろんなブランドのものを買って試してきましたが、モードブランドのシャツは、カフスのかたちがスクエアだったり、襟のかたちに特徴があったりと、少し主張が強いものが多いんですよね。それに加えて、素材のクオリティに納得できないことがあったりして……。一方、クラシックなシャツでは、そもそも黒が少ない(苦笑)。
だから、このシャツではできるだけディテールで主張せず、日常の生活のなかで着こなしやすいことを最優先に考えました。言うならば、あえてデザインしない(!)ことをする。僕が考えるフツーの黒シャツを表現したつもりです。

これは自分のファッション観に通ずることだと思いますが、これ見よがしだったり、大袈裟に見えるデザインが苦手なんですよ、そもそも。思春期に渋カジにどっぷり浸かっていたとは言え、実家が代々続くテーラーだったこともあり、質が伴っていない服にはどこか信用が置けない性格でして……。
大好きなイタリアのクラシックも、現地でするのはいいのですが、それ以外の土地では陽の光も背景となる街並みも全然違います。強い陽射しと歴史ある風景のなかにはすんなり溶け込むスタイルも、東京ではコスプレっぽい印象を受けてしまうんですよね。そういったことを考えると、東京ではもう少しモダンに見えるスタイルのほうが馴染むんじゃないか、というのが僕の持論です。

5500円(税抜)/ARCODIO(MINIMAL WORDROBE)
とはいえ、そういうモードとクラシックの中間のようなデザインというのは、探してみるとなかなかないわけでして……。仕立てや素材はクラシック。クラシックが7の割合で、モード3というのが僕なりの黄金バランスなんです。それを表現したのが、今回の別注シャツ。わかりにくいかもしれませんが、こういう細かな部分が僕には大事なんですよね。
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MINIMAL WORDROBE





Photo:Ikuo Kubota(OWL)
Text:Toshiaki Ishii