二次元のイラストを 完璧に立体化させる再現度に感動!
2020年に20周年を迎えたディストリクト ユナイテッドアローズのオープンから店頭に立ち続ける顔的な存在で、ブログやコラムにてマニアックで役に立つ、素敵な話題を提供してくれる森山真司さん。
基本的に服を捨てることはなく、自宅のクローゼットや収納には収まり切れないくらいの服を所有する森山さんが、なかでも思い入れが強くて捨てられない服をご紹介する企画の第2回目は、ジンターラのシューズです。
このジンターラは、当時ディストリクトでバイイングを手伝って頂いていた村松規康さんが持ってきてくださった別注企画で誕生しました。
シルヴァノ・ラッタンジさんは、かつてジル・サンダーのシューズを手掛けていたとあって、単純な手縫いのクラシコ イタリアなシューズブランドとは一線を画す、モダンな解釈もできる靴職人。その感覚がディストリクトにも合っていたので、別注をしてみることになりました。
それでお店で あぁだこうだと話し合いながらカタチを決めて、お願いしたものが本当にそのまま現物となって やってくる。ただ二次元のイラストを渡しているだけだったのに、それが立体物となって出来上がってくる再現度には感動しましたね。
もちろん、ハンドウェルトの作りの良さとか、修理した方が「開けたら中まで綺麗な靴」と褒める丁寧な靴づくりも素晴らしかったです。
ブーツにあった木型を短靴にアレンジしているので、ブーツみたいにロングノーズですが、ラウンド(エッグトゥ シェル)になっていたり、ストレートチップでパーフォレーション(穴飾り)が大きくなっていたり、ホールカットなのに その穴飾りでフェイクの切り替えっぽく表現して貰うとか、他では見かけないデザインに仕上がっていると思います。
当時まだタンナーだったグイディのバゲッタレザーを使っていてラフな雰囲気なので、カジュアルにも履けたから素足で履いてみたり。ちょっとインソール汚れてますかね…。
油染みができて味が出た感じも良かったですし、じつは自分でサドルソープで水洗いして、油分足したりもしています。
ただ、このロングノーズな感じなので、すごく尖ったビジネスシューズを履いているサラリーマンの方がいらっしゃる限りは履くのが難しそうで いまは眠らせています。
しかし、時代を見てきた目というか、感覚が変わったら また新鮮に見えて、履き始めるかもしれませんね。
そして、いまは既に靴を作っていらっしゃらないラッタンジさん本人のサインもありますので、これも手放すことはないと思います。
Photo:Shimpei Suzuki(Item)
Edit:Ryutaro Yanaka
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター
森山 真司さん
ファッション業界で30年に及ぶキャリアを誇り、ディストリクト ユナイテッドアローズにおいては2000年の立ち上げ時より在籍する名物スタッフ。『スター・ウォーズ』をこよなく愛する、“自称ジェダイ”は、服・革靴など莫大な量を所有。1968年生まれ。