寒い時季にジャケットの上に羽織るコートが多様な時代です。トレンドや価格に踊らされることなく、10年着られる基準で選べば間違いありません。
初期投資はそれなりにかかりますが、安物買いの銭失い、とならない堅実な買い物がそこにはあります。この冬からずっと先の冬まで着られる一着をぜひ見つけてください。

最もオーソドックスなビジネスコートは、チェスターフィールドコートと呼ばれるものです。ウール製でジャケットのように上下の襟があるもの。英国貴族のチェスターフィールド伯爵が着用していたものに端を発し、ブラックタイのドレスコードにも対応するコートです。

これを少しくだけさせたものがポロコート。上下襟、腰のフラップ&パッチポケット、ダブルの前合わせ、背面腰にベルトがつき、袖が折り返されたものです。

ポロプレイヤーが競技外中にユニフォームの上から羽織っていたことからそう呼ばれるようになりました。こちらもウールやキャメルが素材の主流です。

次にトレンチコート。カジュアルでも人気のこのコートは、トレンチ(塹壕)でも汚泥や雨水から着用者を守り、また多くのベルトやリングを配すことで装備品を身に付けられるようにしてあるのも特徴。当時の英国軍がバーバリーやアクアスキュータムに作らせ、戦後、それらはファッションアイテムとして普及していきました。

生地はコットン製が主なので、春先や秋に着ることが多いでしょう。同じようなコットン製でトレンチコートほど装飾のないステンカラーコートも春秋に着るコートです。ちなみにステンとはフランス語、カラーは英語という和製語。ただしくはバルカラーコートといいます。
以上の4着が定番のコートです。ウールのチェスターフィールドとポロ、コットンのトレンチとバルカラー、どちらか一着、計二着は必携でしょう。しかし、各時季に一着しかコートが使えないというのは何とも心持たない。同じようなデザインのものを複数着持つ、というのが常套ですが、新たなデザインのコートでいつもと印象を変え、また実用性も上げるというのも一手だと思います。
先に挙げた4着はどんなビジネスシーンにも対応します。つまりフォーマル性が高いということです。ですので、次に揃えるコートはもっと実用性の高いものにしてみてはいかがでしょうか。
汎用性つまりスーツにもジャケパンにも合う着回し力が高いのが大前提。そこに防寒性、収納性(ポケットの多さ)、軽量、撥水という実用性を加味したい。

私のおすすめはアウトドア由来のコートです。ダウンジャケットとマウンテンパーカがその代表。ダウンジャケットはモコモコしていないものがビジネスにはいいでしょう。裾の短いブルゾン型のデザインもビジネスには不向きでしょう。ジャケットの裾がコートからはみ出さないものがいいのですが、あまり長すぎるものもかさばるのでパス。ひざ上くらいの着丈がベストです。

アウトドア由来のダウンジャケットにはフードとファーがついているものも多いのですが、あまり大げさなものはビジネスシーンには過剰に見えます。また色はアウトドアウエアに多い原色を避けるようにするのも当然。ネイビーやチャコールグレイがジャケパンとスーツに合います。
トレンチやバルカラーの代替コートとしておすすめしたいのが、マウンテンパーカです。このアウターはその名のとおり、登山用ウエアで、お尻が隠れるくらいの着丈、胸と腰の4つのフラップ&パッチポケット、フードがデザインの特徴です。
素材は風防と防水にたけたものが使われます。マウンテンパーカの魅力はデザインと素材に凝縮されています。機能的でいながらそれが過剰に見えないのです。もちろん、最新技術を使ったもっと機能性の高い登山用アウターがありますが、ビジネスシーンで使うには大げさすぎるように思います。
ミリタリー由来のアウターにもダウンジャケットやマウンテンパーカに匹敵するものがあります。たとえばN3-BやM-65がそれです。が、この二着は少し遊び心を感じさせるもの、つまりビジネスシーンには不要のおしゃれを感じさせるアウターだと私は考えます。










Photo: Ryouichi Onda
Styling:Takahiro Takashio
Text:Takashi Ogiyama
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