FOOD 田舎で楽しむ英国的衣食住

イギリスのクリスマスを味わう──シュトーレンやパネトーネに負けない本格「ミンスパイ」とは〈田舎で楽しむ英国的衣食住〉vol.7

ドライフルーツに洋酒、スパイスを“熟成”させて──

気がつけば12月も半ば。多くの困難に直面した本年にもクリスマスがやってこようとしています。クリスマスを宗教行事というよりは文化やイベントとして捉える方が多い日本ではその過ごし方は多種多様に思われます。

昨今ではドイツのシュトーレンやイタリアのパネトーネなど欧州のクリスマス菓子も多く出回っていますが、英国のクリスマス菓子はどうもあまり注目されていないようです。

英国のクリスマス菓子といえば、クリスマス・プディングやミンスパイ(Mince pie)などが挙げられます。両者ともドライフルーツとスパイスをふんだんに使用したお菓子ですが、クリスマス・プディングは、調理に時間や手間がかかるのと好き嫌いの分かれる味わいで、英国人でも苦手な人も多いです。

一方、ミンスパイは食べやすく、調理も簡単でMincemeat(ミンスミート)というジャムのようなものをパイ生地で包み、オーブンで焼くだけです。英国のクリスマス気分を気軽に味わうにはミンスパイがおすすめです。

ミンスミートは日本でも市販されていますが、今回は手作りのミンスミートの作り方からご紹介したいと思います。熟成に1〜2週間ほどかかりますが、しっかり時間をかけるとその分味わいも豊かになります。英国では11月末頃に大量に作り、12月いっぱい楽しみます。

◆学食の不味いミンスパイが教えてくれた材料の重要性◆

12月に入ると英国は一気にクリスマスムードに包まれ、デザートとしてミンスパイを提供するカフェやレストランも多々。私がミンスパイを初めて試したのは確か通っていた大学の食堂のものでした。食べ物が不味いことで悪名高かった食堂なので、驚くようなことではなかったのですが、あるランチタイムに食べた、初めてのミンスパイがショッキングなくらい不味かったのです。

以来、ミンスパイを敬遠するようになってしまった私を大のミンスパイ好きにしてくれたのは、親友のお母さんでした。あるクリスマスに親友が実家に招待してくれ、ロンドンから到着した私を手作りのミンスパイと温かいスパイスティーでもてなしてくれました。

仕方なく食べたミンスパイは私が知っているものとは全然違っていて、ドライフルーツの豊潤な甘味や酸味、スパイスの心地よい刺激が、バターの風味豊かなパイ生地と非常に良い塩梅で同居しています。滞在させてもらっている間にその秘密を聞いてみたところ、良い材料を使うこと、特にスエットとブランデーは良いものを使うことが重要だそうです。

スエットとは牛の腎臓の周りの脂肪のことで、英国にはバターの代わりとしてスエットを使うお菓子があり、クリスマス・プディングやミンスパイはその代表といえます。日本ではケンネ脂と呼ばれており、店頭に並ぶことは稀ですが、精肉店で尋ねるとわけてくれることが多いです。新鮮で上質なスエットを使うと風味が豊かになるのですが、私が学食で食べたものはフリーズドライの廉価なものが使われていたようです。

◆混ぜて、寝かせて、焼く。手作りミンスパイの作り方◆

1, レーズンをブランデーに漬けておきます。1時間から可能であれば一晩が理想です。

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2, ブランデーの染み込んだレーズンに黒糖を加えます。

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3, 刻んだピールとみじん切りにしたりんごを加えます。

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4, みじん切りにしたスエットとすりおろしたレモンの皮を入れます。

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5, しっかり混ぜ合わせて、ジャーなどに移して涼しい場所で1〜2週間ほど寝かせます。

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6, パイ生地を作ります。ボウルに薄力粉をふるっておき、冷たいバターをサイコロ状に切っておきます。

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7, 指やフードプロセッサーでパン粉状になるまで混ぜ合わせます。

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8, 砂糖と溶き卵を加えて混ぜ合わせ、生地をまとめあげます。まとまらない場合は冷水をごく少量ずつ加え様子を見ます。

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9, ラップをして1時間ほど生地を寝かせます。

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10, 作業台や麺棒に打ち粉をし、型にバターを塗っておきます。

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11, 生地を3mm厚に伸ばし、8cm径の型で型抜きします。

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12, 型に生地を入れ、形を整えたらミンスミートを加えます。入れ過ぎると水分が出るので少なめを心がけます。

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13, 7cm径の型抜きで作った蓋をします。ふちに卵を塗っておくと綺麗にくっつきます。分量外の砂糖を表面にふって、220度に予熱しておいたオーブンで15分焼きます。

◆大きさや形を工夫しても楽しいミンスパイ◆

今回ご紹介したのは大きめのミンスパイですが、小ぶりなものや、蓋の代わりに星型に型抜きした生地をミンスミートの上に載せて焼くスタイルもあります。ドライフルーツやスパイスの香りがクリスマスを雰囲気あるものにしてくれます。

《材料》

ミンスミート(600mlのジャー2個分)

レーズン     75g
サルタナレーズン 75g
(なければ普通のレーズンでもOK)
ドライカシス   150g
ブランデー    60ml
レモンの皮    1個分
レモン果汁    1個分
砂糖漬けのピール(レモンやオレンジなど) 50g
黒糖       120g
シナモン     小さじ1
ナツメグ     小さじ½
ドライジンジャー 小さじ½
*スエット      130g

*手に入らなければ省くか、溶かしバター50gほどを混ぜる

パイ生地

薄力粉      360g
バター      120g
砂糖       115g
卵        1個

photos&text: Kohki Watanabe

 

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◆渡邉耕希(わたなべ・こうき)◆
愛媛県出身の1992年生まれ。ロンドンの大学でクラシック音楽を学ぶ。現地でヴィンテージ・アイテムの魅力に取りつかれ、服や靴を中心にアイテムの歴史的背景まで探求するようになる。無類のスイーツ好きが高じて開設したYouTubeチャンネル「The Vintage Salon」にて料理や英国菓子作りを通して日本で実践できる英国的生活を発信している。



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