国産の現行車を改造し、60年代から70年代のクラシカルな雰囲気のクルマへと生まれ変わらせる、というクルマづくりを得意としている光岡自動車。これまでは、好き嫌いが分かれる、癖の強いクルマを作ってきましたが、2018年に登場したオープンカー「スピードスター」や、この12月に発売開始した「バディ」などは、80年代のアメリカの雰囲気を匂わせる、新しい流れのカスタムカーで、話題をよんでいます。
どちらも発売されるやいなや、年間生産枠は予約でいっぱいになり、手に入れるには数年単位で待つ必要があるほど。今回は、そんな光岡自動車が誇るカスタムカーをご紹介します。
■Rock Star(ロックスター) (2018年11月登場) 税込469万8000円~518万4000円

光岡自動車創業50周年を記念したモデルが「ロックスター」です。限定200台(※国内販売)分は、すでに申込は終了しており、今から新規発注することはできません。
開発コンセプトは「やんちゃ×スタイリッシュ×楽しさ」。ベースとされている車はオープンカーのマツダ・ロードスターですが、その姿は、1960年代を代表するスポーツカー「スティングレイ」こと、2代目「シボレー・コルベット」をモチーフにしています。アメリカ西海岸の風景に馴染むスポーツカーを開発したかった、という同社役員の思いに、デザイナーが答えた作品です。
フロントフェンダーやエンジンフードの形状など、すべてがカスタマイズされており、全く別物のクルマに見えます。また、メッキバンパーやホワイトレター入りのタイヤなども、アメリカンな雰囲気を醸し出しており、この手のクルマを好む方には、大変魅力的に映るでしょう。逆スラントノーズや、円型LEDの小型ヘッドライトなど、チャーミングなところもあります。
■Buddy(バディ) (2020年11月登場) 税込469万7000円~589万9300円

「ロックスター」につづき、アメ車ライクなデザインをとりいれた第2弾がこの「Buddy(バディ)」です。
ベースのトヨタRAV4の面影を全く感じさせない、フロント周りのデザインは、80年代のカリフォルニアを彷彿とさせる、アメリカンな雰囲気を持っています。縦目2灯のヘッドライト、格子状のメッキグリル、縦型のテールランプなど、昔のシボレーにも似たデザインです。
しかしながら、中身は最新RAV4そのものですので、快適性や使い勝手、燃費も申し分なし。まさに、デザインはクラシカル、中身を現代の技術水準に置き換えたSUVです。
ベースのRAV4に比べると、150万円~200万円ほど価格は上がりますが、このようなデザインのクルマが欲しい方にとっては、高くはないのかもしれません。ただし、職人の手組によるため生産数に限界があり、2020年12月に申し込みをしても、すでに2023年生産枠分になるそう。
■Himiko(ヒミコ) (2代目 2018年2月-) 税込516万100円~618万5740円

超ロングノーズとショートデッキをもつソフトトップオープンカーが「ヒミコ」です。ベースにしているのはマツダ・ロードスター。初代ヒミコは、3代目ロードスター(NC)がベースでしたが、現在、販売されているヒミコは、現行ロードスター(ND)がベースとなっています。
最大の特徴は、ベースモデルから600ミリも延長したホイールベースによる、超ロングノーズなスタイリングです。前後のフェンダーや、フロントバンパー、ヘッドライト、縦型のグリルなど、60年代のブリティッシュカーの雰囲気に近いデザインが与えられており、もともとが何のクルマであったのか、判別不能なほど手が加えられています。
インテリアのデザインはロードスターとほぼ変わりがなく、トランスミッションもATとMTを選ぶこともできます。前後重量配分は結果的に48:52になったようですが、ドライバーからはるか遠く、フロントノーズの先っぽにあるタイヤがどれほどの仕事をしてくれるのかは若干、未知数です。スタイリングに惚れた方に適した一台です。
■VIEWT(ビュート)なでしこ (2015年7月-) 201万3000円~266万7500円

光岡自動車の中でも最もコンパクトなクルマが、「ビュートなでしこ」です。ベースとなったのはK13型マーチ。もっともこだわったのは、全長を4メートル以内に抑え、なおかつクラシカルなデザインにすること。女性でも運転しやすいジャストサイズを狙い、控えめな専用メッキバンパーを装着して、清楚で可憐な雰囲気で作りこまれています。
丸いヘッドランプとターンランプ、葉っぱの形をした縦型のフロントグリル、フェンダーラインやエンジンフードの形など、兄弟車「ビュート」のフロント周りの造形を残しながら、リアをハッチバックスタイルとしています。
また、オプションのクラシックインパネは、ベースのマーチとは全く異なった、シンプルな内装デザインとなっており、クラシカルな雰囲気を存分に楽しめます。1トンに満たない車重と、1.2リッター3気筒にCVTを組み合わせた余裕のある走り、そして、この愛くるしいフェイス、そして200万円代からという設定もうれしい。
中身は現代のクルマ、外側はクラシックカー、こうしたクルマの楽しみ方も大いにありでしょう。光岡は、手づくり生産になるため、生産数が極端に少ない上に、納期がかかるクルマです。納車まで、1年、2年でも待つことができる方だけが、オーナーになる資格があります。カスタムカーの極みである光岡自動車は、濃厚なファンが支えているメーカーなのです。
光岡自動車
https://www.mitsuoka-motor.com/








Text:Kenichi Yoshikawa
Edit:Takashi Ogiyama
Photo:MITSUOKA
