とある夜、のらりくらりと千鳥足。
あぁ呑みすぎちゃった。夜風で酔いをさましながら一駅分歩いていると、ぼんやりと、ちょうちんの灯火が。あれ、こんなところに屋台あったっけ。もう一杯呑んじゃおっかなぁ〜と思い近づいてみたら、なんとお花を売っている屋台でした。
広告や空間装飾、アレンジメントブーケ活動をされているフラワースタイリスト「花泥棒」さんという方が、深夜都内の路上で神出鬼没にお花を販売されているストリート花屋さんなのです。
「可愛い! お花売ってるんですね!」などとお話をしていると、カメラをかかえた背の高い男性がいらっしゃいました。
この方はフォトグラファーのTさん。真心ブラザーズや東京スカパラダイスオーケストラなど様々なアーティストの方を撮影。昨年には、1999年に大阪で結成されたサイケデリックロックバンド「オシリペンペンズ」との写真展を開催されたとか。
2人は学生時代からのお友達で、ご一緒に作品撮りもされているのです。今回は、そんな素敵な2人と乾杯したとある夜のご紹介です。
■一歩入れば江戸時代にタイムスリップ!
昭和47年頃創業の地元に愛される人気の酒場「洒落亭(しゃれてい)」。店の外観もさることながら、店内には御神輿や歴史を感じる調度品の数々があちらこちらに。
江戸時代、京都・大阪で文字通り大きく花開いた園芸文化。
その一端を担っていた『花売り』という職業があった事をご存知ですか?
当時はまさに歩くトレンドで、一年通して季節の花を売り歩く彼らは園芸界の流行の最先端を熟知していました。店売りしてるのではなく、天秤棒に 花をのせて移動しながら 売りさばいていたんだそうです。
更に『花売り』には男性が多かったので、『花売り』男子=ステキ!
というモテる男の方程式が江戸女子の間で広がり、お洒落で粋な職業でした。当時のアイドル的存在の歌舞伎役者と『花売り』を掛け合わせた浮世絵もあり、この職業の人気ぶりが伺えます。
そんな歴史と花泥棒さんはぴったり!
まさに江戸時代にいるような、こちらのお店で乾杯です。
小田急線梅ヶ丘駅南口から徒歩1分程度にあり、お祭り好きのベテランマスターが創造する料理は、素材の味を引き立てながら一手間加えられた手料理を肴に、お酒が進みます。駅前の喧騒を忘れ、ゆっくりと酒場時間を楽しむことが出来る地元の名店。
花泥棒さんがスケートボードで登場! なんと、今日のためにお花を即興で生けていただきました。
テーマは「赤提灯酒場」。花泥棒さんのフラワーアレンジメントの特徴は、花によっては後ろ姿を綺麗と思ったら、あえてメインで使う点にあります。
そしてフォトグラファーのTさんも揃ったところでカンパ〜イ。
「茄子!茄子!!茄子!!!(¥650)」から。定番人気メニュー、焼きナス&ナストマト&おしんこ。
「秋刀魚のハーフ&ハーフ(¥800)」、「刺盛3種(¥800)」。
「里芋と豆富の揚げ出し(¥750)」。
1年前からスタートした花泥棒。 ロマンチストなところがあり、漠然と前からお花があるシチュエーションがお好きだったようです。
でも、もともとはファッションが一番お好きで、自分のブランドをデビューさせるために、カジュアルウェアの仕立て屋に弟子入りされていたようです。とくにカフスへのこだわりが強く、糸をキャンドルで蝋引きたりボタン付けがお得意だとか。一枚のシャツを仕立てるの何日もかけた事があったのだとか。
服へのこだわりが強すぎて、
チャーミングなお店の大将の創造料理は、繊細で最高に美味しい。
「立山/本醸造(¥850)」と「天狗舞/山廃仕込 純米酒(¥850)」。
二人の思い出の好きな曲、19の「たいせつなひと」を歌いながらそろそろ、〆のあたたかい数品を頂きます。
”キミとすれ違っていたら 咲かない花もあったろう”
”胸をくすぐる思い出と風を 大きく吸い込み駆け出してゆく”
「葺(フキ)と鱈子の煮もの(¥650)」。
「長芋酒盗煮(¥650)」。
人はそれぞれ、咲ける場所があるなあ。としみじみ思いました。
皆さんも、何気ない日常の中で大切な方へお花をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?
今宵もそろそろおいとまです。
洒落亭 (しゃれてい)
東京都世田谷区梅丘1-21-11
■営業時間 18:00~24:00
■定休日 日曜日(臨時休業あり)
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
掲載価格はすべて税抜き
花泥棒
フラワースタイリスト
花•植物を使った空間装飾、生け込み、撮影、広告、花束、アレンジメント活動の側
深夜都内の路上でストリート花屋を行っている。
フォトグラファーのT
ポートレートを軸にファッションや音楽の分野を中心に活
Photo&Text:Misaki Kobayashi
Edit:Takashi Ogiyama