輸入車の販売推移に見るブランド力の不確かさ
2020年度も上半期を終了。とても日本的な振り返りとなりますが、4月～6月がコロナ真っ盛り、7月～9月が戻りの業績という雰囲気でしょうか。輸入車の場合、自粛大国日本とは異なり強制力のあるロックダウンでした。よって、クルマも作れず物流も停滞。国産車と比較して少しハンデがあるかと思います。
ということで、まずは日本自動車輸入組合の発表値に注目。いまはランキングよりその中身が重要。持続化給付金にまつわる世間一般の嘆きじゃありませんが、“2割落ちても死活問題なのに5割ダウンじゃあ逝ってまうやろ”というのが庶民の常識。大企業だって同様です。
データの見方は2020年度上半期の新車登録台数（台）、シェア（％）。そして、（ ）内が前年度上半期のデータ、最後の数字は前年対比（％）なので、まあ達成率と解釈してよろしいかと思います。
【ドイツ】
Mercedes-Benz ●25,274 / 18.56 (31,742 / 17.94) ▲79.6
Volkswagen ●16,414 / 12.05 (23,526 / 13.30) ▲69.8
BMW ●15,812 / 11.61(24,136 / 13.64) ▲65.5
Audi ●9,881 / 7.26 (13,162 / 7.44) ▲75.1
Porsche ●3,452 / 2.53 (3,688 / 2.08) ▲93.6
BMW Alpina ●54 / 0.04 (122 / 0.07) ▲44.3
smart ●13 / 0.01 (1,013 / 0.57) ▲1.3
輸入車No1.のメルセデスだって2割ダウンです。直近の3ヵ月はAクラスとCクラスがベスト10入りしていますが、今後の動向が気になります。VW、アウディは数が見込める新型車のローンチが遅れているとはいえ3割以上のダウン。安泰なのはポルシェだけ!?
【フランス＆スウェーデン】
Peugeot ●3,964 / 2.91 (5,343 / 3.02) ▲74.2
Renault ●2,809 / 2.06 (3,218 / 1.82) ▲87.3
Citroen ●2,033 / 1.49 (2,195 / 1.24) ▲92.6
DS ●412 / 0.30 (506 / 0.29) ▲81.4
Volvo ●6,736 / 4.95 (9,173 / 5.18) ▲73.4
ドイツ・プレミアム御三家＋1を追うボルボとフランス車軍団。なかでも、シトロエンが怪気炎で増殖中です。唯一のラグジュアリーブランドDSも2車種しかないラインナップを考慮すれば健闘したといえるでしょう。コロナさえなければルノーは前年比越えだった可能性さえあります。一般ユーザーはレバノン情勢と商品の魅力は別ですよねと分別ある判断をしたようでワタシも一安心。
ボルボの実情は60シリーズが一番売れていて、それを追うのが価格的に低い40シリーズというのは興味深いところ。XC40のように納期がかかる人気車もあるので、まあイーブンといった気もしますが、2車ともにトップ10にランキングされるのがミソ。ボルボは人気ありますね。
【イタリア】
Ferrari ●459 / 0.34 (511 / 0.29) ▲89.8
Lamborghini ●304 / 0.22 (396 / 0.22) ▲76.8
Maserati ●395 / 0.29 (668 / 0.38) ▲59.1
Alfa Romeo ●554 / 0.41 (1,195 / 0.68) ▲46.4
Fiat ●2,560 / 1.88 (3,197 / 1.81) ▲80.1
ABARTH ●1,194 / 0.88 (1,403 / 0.79) ▲85.1
フェラーリはやはり強かった。さすがのブランド力です。いまやフェラーリだって一部のモデルを除けば1年過ぎてもまだ来ない、なんてこともありませんので実態を表しているかと思います。そして、アバルトも強い！ というのが正直な感想です。
北部工業の中心地ロンバルディア州から大混乱に陥ったイタリアですが、いまのランボルギーニも大丈夫メンバーの1社だと思います。再建中のマセラティはまあこんなものでしょうか。新型車の投入スケジュールも判明しています。ひとつ気になるのは日本でのアルファロメオの訴求力。やはり300万円台で乗れるモデルがないと先細りかも。
【イギリス】
Aston Martin ●80 / 0.06 (162 / 0.09) ▲49.4
Land Rover ●1,285 / 0.94 (2,031 / 1.15) ▲63.3
Jaguar ●636 / 0.47 (1,360 / 0.77) ▲46.8
BMW MINI ●9,459 / 6.95 (12,677 / 7.16) ▲74.6
Lotus ●100 / 0.07 (97 / 0.05) △103.1
Rolls Royce ●98 / 0.07 (125 / 0.07) ▲78.4
McLaren ●91 / 0.07 (219 / 0.12) ▲41.6
Bentley ●237 / 0.17 (260 / 0.15) ▲91.2
Morgan ●21 / 0.02 (16 / 0.01) △131.3
日本で一番売れている輸入車のミニ。上半期も1位……のような見出しの記事が先週目立ったと思いますが、その実情は約25％ダウンというデータです。ただ、一口にミニといってもボディタイプは様々。なのにダウンと見るか、だから踏み留まったと解釈するのか、大いに議論の余地がありそう。
コロナが一気に拡大したイギリスなので、この数字が単純に操業停止によるものならいいのですが、商品力がモンダイなら深刻です。絶対数は少ないながらロータスが堅調。また、コロナが収まればベントレーの未来は明るいといえるでしょう。それにしてもジャガーは心配ですね。
【アメリカ】
Jeep ●6,228 / 4.57 (7,954 / 4.50) ▲78.3
Chevrolet ●222 / 0.16 (324 / 0.18) ▲68.5
Cadillac ●214 / 0.16 (253 / 0.14) ▲84.6
Chrysler ●10 / 0.01 (11 / 0.01) ▲ 90.9
絶対数は少ないもののキャデラックは底堅い感じ。ラインナップが広がったいまのジープなら、いい意味でこの数字も納得です。じゃあシボレーは？ 現状、カマロしかないのですから当然のデータかと。それよりもいまだ延命中の300Cが10台も売れたなんて、日本のクルマ好きも芯があると思いました。
なるべく不安をあおらぬように書き記したつもりですが、皆さんがデータをご覧になった感想はいかがしょうか？ 今回は輸入車を取り上げましたが、国産車だって明暗クッキリといった結果になります。ワタシが思うに、せめて年度末まで諸税を凍結するとか、大胆な手段を講じないと日本の7割は気絶するんじゃないかと危惧しております。
日本の経済界ではひとり自工会の豊田章男会長が声を発するだけ。他の方々はテンヤワンヤでフリーズしているのでしょうか？ それともマスメディアにその声が乗らないだけ？ 今年も実質的に残り70日少々。いまこそムーンショットを決める時なのではないでしょうか。
Text：Seiichi Norishige
