平成から、令和へ。媚薬から、純へ。
★★★
ようこそ、お越しくださいました。
ここは繁華街にひっそりと佇む 『純喫茶ぺぺ』。
昭和レトロでどこか懐かしさを感じる、恋に迷える大人達のユートピア。
このお店は、純喫茶の雰囲気を大切にしており、
一風変わった店主が、お客様をイメージした「珈琲カップ」の代わりに、
お悩みにぴったりの「恋のナンバー」を硬派にお出ししております。
刺さりすぎて気絶なさらないよう、お気をつけくださいませ。
どうぞ、最後までおくつろぎの上、ゆるりとおたのしみください。
純喫茶 ぺぺ
★★★
本日のお客様からの恋のお悩みは、
「ちょっと聞いてください!
同棲している年下の彼、SNSではデキる彼氏アピールが凄いですが、実際は真逆の人間。『共働きだし家事も一緒にやるよ〜』と言いながら、全部私に押し付けて……。甘えれば許されると勘違いしてます。
SNSは自分を偽れる世界だと思うのですが、彼を甘やかしたのは私の責任なので、別れる覚悟でビシッと言ってやるべきでしょうか?」
──あーちゃん 会社員 (34)
あーちゃん様、いらっしゃいませ。
いかにも今時な恋のお悩みをいただきまして、ありがとうございます。嘘や偽りで自分を誤魔化せてしまうSNSの深い闇を感じました。心中お察し致します(逆気絶)。貴女の時間は限られておりますので、お急ぎくださいませ。
さて、年下の彼を甘やかしたとありますが、近頃 世の中が甘いムードでぷんぷんニ・オ・イます。人に甘えたり、甘やかしたりする事って簡単ですが、果たしてそれが世の中を良くするのか、大変疑問です。
「優しさ=甘やかす」と勘違いされがちですが、男を甘やかすのが女の優しさではありません。自分から都合の良い女に成り下がるのは、もったいないです。
「恋愛は惚れた方が負け」と云いますが、可愛さ余って母親の様に世話を焼き過ぎていませんか。同棲中の失敗あるあるですが、こちらが良かれと的外れなお節介を押しつけてしまうと、案外値打ちをわかってもらえないうえ、無駄な体力を消費。いつの間にか、彼の母親代わりになってしまい、男にとっては 攻略したゲームの如く、異性としての興味も失せてしまうのです(集団気絶)。
松下幸之助さんの言葉にも、この様な言葉があります。
” 甘えを進めるような世の中に確かな未来があるはずがない。
甘えていないか。甘えさせていないか。(『若葉』 1976)”
この「甘え」という物質は、人間関係において厄介な存在です。女性に一方的に甘えるだけの男は、結局は自分の都合でしか物事を考えませんから。自分の思い通りに事が運ばなくなると、子供の様に拗ねて目の前の問題から逃げ出してしまうのです。
このだらし無さを許すか許さないかは貴女次第! というワケですが、愛する彼を想っての事でしたら、厳しく突き放すのも愛かもしれません。甘やかしてしまったのも私の責任だ! 私がケリをつけてやる! そんな姐さんの意気込みすら感じます。どうかお気張りください。
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【お答え】
ママゴトからは足を洗ってください。
獅子の子落としの如く、崖から突き落とすのも「愛」。
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貴女にぴったりな恋のナンバーは、伝説の歌姫 中森明菜さんの『十戒』かしら。人生、甘さだけでは、どうも味が引き立ちません。この曲を珈琲に例えると、口に含んだ瞬間、重厚でロースティーなアロマとシャープな苦みが訪れ、やがて深いコクのある力強いテイストを感じ、後味はスッキリです。刺激強めですが、どうぞお愉しみください。
“愚図ね カッコつけてるだけで
何もひとりきりじゃ できない
過保護 すぎたようね
優しさは軟弱さの 言い訳なのよ
発破かけたげる さあカタつけてよ
やわな生き方を変えられないかぎり
限界なんだわ坊やイライラするわ
すぐに愛を口にするけど
それじゃ 何も解決しない
ちょっと甘い顔をするたびに
ツケ上るの悪い習性だわ
優しいだけじゃ もう物足りない
今の男の子 みんな涙見せたがり
甘えてるわ 止めて冗談じゃない”
十戒 〈1984〉 歌:中森明菜. 作詞:売野雅勇. 作曲:高中正義
参照:『うたまっぷ 歌詞無料検索』
お客様、選曲はお口に合いましたでしょうか?
またのご来店、心よりお待ち申し上げております。
純喫茶 ぺぺ
Photo:Yuta Takamatsu, Shuhei Kato
Text:RIKAPEPE(ペペ)
Illustration:Eri Sakai