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LIFESTYLE ここがヘンだよ日本のクルマ社会

自転車がクルマをあおる時代! なぜ彼らのルールはファジーなのか。「ここがヘンだよ日本のクルマ社会 第七回」

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日本はクルマ先進国だとされているが、果たして本当なのだろうか? 欧米がすべて正しいわけではもちろんないのだが、明らかに日本のクルマ社会でおかしいな~と思うことがあることも事実。というわけで、どこがヘンなのか、その解決策は?にジャーナリスト森口将之がお答えします。

信号無視、歩道走行、逆走……なんでもあり!?
自転車がクルマをあおって、自転車の運転者が逮捕されるという事件が起こった。クルマのあおり運転は何度もニュースになっているので、良くないことではあるが珍しくないと思っている。しかし自転車のあおり運転は、筆者にとっては初耳だ。

新型コロナウイルス感染拡大に伴って、都市部では公共交通による感染を避ける人たちが自転車移動に切り替えた。さらに多くの飲食店がテイクアウトのサービスを始め、それを自転車でデリバリーする人も増えた。このあたりはかつてウーバーを取り上げた際にも書いたが、筆者が事務所を構える渋谷区でも、自転車の数は本当に多くなったと感じており、ルール違反も目立つようになった。
ウーバーについての記事はこちら

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なぜ日本のサイクリストはここまでルールを守らないのか。1970年に道路法に基づいて改正した道路構造令が原因だと思っている。改正と書いたように、道路構造令は1919年に初めて制定されたもので、この時は2度目の手直しであり、1970年以降も5回以上改正している。

ダブルスタンダードが自転車を危険にする
日本の道路交通法では、自転車は軽車両になる。馬車や人力車、リヤカーと同じカテゴリーだ。軽車両は車両の1ジャンルなので車道を通行する。自転車以外のラインナップを見れば、歩道を通行する乗り物でないことは理解できるはずだ。さらに道路交通法では、車道の左端を走行することも定めている。

1970年の改正は、高度経済成長時代に自動車が急速に増え、交通事故が多発したことを受けたものだった。ここで初めて自転車道と自転車歩行者道(自歩道)が制定された。同時に自転車道の整備等についての法律も作られている。

筆者がスピードメーター付きの自転車で、普通のペースで走ったときの速度は15km/hぐらい。制限速度40km/hの道路だとすると、歩行者と自転車の速度差より、自転車とクルマの速度差のほうが大きい。これが事故につながると考えたのだろう。こうして全国各地に自歩道が生まれ、自転車は歩道を走るようになった。

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しかし、道路交通法では軽車両であり、自転車は原則として車道左端を走ることは変わらない。つまりダブルスタンダードになってしまったわけだ。

しかも、20世紀終わりに電動アシスト自転車が登場し、環境問題への関心や健康志向の高まりなどもあって自転車利用者が増える中、自転車道や自転車レーン(車道や歩道の一部を自転車用にしたもの)の整備はなかなか進まなかったこともあり、最近は歩道での歩行者と自転車の接触事故が目立つようになった。

そこで警察庁は2007年、「自転車安全利用五則」を発表した。通行場所については、車道が原則、歩道は例外とし、車道は左側を通行、歩道は歩行者優先で車道寄りを通行するように定めた。さらに交通ルールを守ること、子供はヘルメットを着用することという内容も含まれている。

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ただこのとき示された歩道を通行して良い場合には、自転車歩道通行可(自歩道)の標識があるとき、13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者が運転するとき、身体の不自由な人が運転するとき、道路工事や連続した駐車車両がある時、左側通行が困難なとき、著しく自動車の通行量が多いときがあり、例外というにはあまりに多い。

しかも、自歩道は歩行者だけでなく自転車にも、進む方向は示していない。車道は左端と決めておきながら、歩道に上がると左右どちらでも走行していいというルールに変わる。細かい部分までこだわったはずなのに、抜け穴がいくつも開いている。

これでは状況によって車道と歩道を使い分け、クルマ用信号と歩行者用信号を使い分けるなど、自由な解釈で勝手な走りをする輩が出てきてもしかたがないし、自転車道やレーンの整備がなかなか進まず、警察の取り締まりが甘いのも、このファジーな状況が関係しているのではないかと思っている。

自転車先進国オランダではどうか?
海外が完璧かというと、そんなことはない。自転車というとまず思い出すオランダの首都アムステルダムにも、狭い道には自転車レーンはないし、信号無視はあるし、路上駐車車両もいる。日本の一部の専門家は、自転車レーンであっても車道左側にあるべしと力説するが、アムステルダムには対面通行のレーン、歩道上のレーンもたくさんある。何よりもレーンを作ることを大事にしているようだ。

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でも、ルールはシンプル。自転車道やレーンがある場所はそこを通行し、なければ車道右側(オランダは右側通行なので)を走る。子供から高齢者まで共通。路肩に駐車車両があれば進路を変えてよければいいし、工事現場で狭くなっていたら、日本でも自転車を降りて歩行者として通るのが普通だろう。

国はちょうど半世紀前に生まれた自歩道が誤りだったと認めたくないがために、例外をいくつも作って、歩道通行を許し続けているような気がしている。ここは意を決して頭を下げて「自歩道やめます」と宣言し、ルールをゼロから見直してシンプルにしてほしい。そうすれば違反は減るし取り締まりもしやすくなるはずだ。

Text & Photos:Masayuki Moriguchi

森口将之プロフィール

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モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員などを歴任。著書に『Maas入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』(学芸出版社)など。

 



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