グレースーツ=勝負下着説をここ数回熱弁してきましたが、自分でも少し飽きてきたので、趣向を変えてジャケパンの着こなし術を紹介しましょう。
今回は僕が敬愛するイタリアンクラシックの巨匠へのリスペクトを込めつつ、干場流のアレンジを加えたコーディネイト。エロスへの言及は少なめですが、そこはご想像にお任せします!
アイテム
ジャケット/カルーゾ
シャツ/アルコディオ
ネクタイ/タカシマヤ スタイル オーダーサロン
パンツ/ロロ・ピアーナ
サングラス/ペルソール
ベルト/ジョンロブ
時計/パテック フィリップ
リング(右)/フィクサー
リング(左)/アスプレイ
ソックス/グレン・クライド
靴/WH
前回からの“ジェントルマン”つながりで、このコーディネイトは英国調スタイルにモダンなイタリア風の解釈を加えてみたらどうなるのか、という実験です。
ジャケットは英国調を象徴する柄ともいえるグレンプレイド。3年前にイセタンメンズで購入したカルーゾ別注の一着です。
カルーゾといえば、イタリアのパルマ近郊を拠点とする実力派ファクトリーブランド。伝統的な手仕事の良さと最新マシン技術を融合させた、現代的なものづくりで有名ですが、僕が何より気に入っているのは、デザイン的にこれ見よがしな主張がなく、あくまでも控えめに徹しているその美学なんです。
このジャケットも、一見いたってオーソドックスに印象を受けますが、触ってみると信じられないくらい柔らかくて軽い! 100%キャメルなのに、最初はビキューナと勘違いしたほどでした。
この生地はロロ・ピアーナがゴビ砂漠をイメージした「ゴビーゴールド」というカルーゾのエクスクルーシブ生地。しかも、こういうチェックで茶と黒の配色ってあんまりないんですよね。本来、チェック柄は、カントリーサイドで着るものとされていますが、これだったら黒い靴でもおかしくないし、都会でも似合いそうじゃないですか。
イタリアのテーラードウェアには、素材や色に独特の柔らかさや優美さがあります。それが彼らの匂い立つような色気につながると思うんですよ。
実はこのコーディネイトにはお手本がいらっしゃいまして、それがフィレンツェの名店「タイ・ユア・タイ」の創始者であるフランコ・ミヌッチさんです。というのも、15〜20年ほど前はミヌッチさんに憧れて、身につけるものを何から何まで真似ていた時期があったほど。僕にとって、イタリアのジェントルマンといえば、ミヌッチさんなんです。
ただ、さすがにそれを今やるのはトゥーマッチかなと……。あの当時から自分もちょっとは成長したと思いますし、現在の僕に寄せた感じにアレンジしてみました。
例えば、ミヌッチさんの場合は、Vゾーンはブルーのシャツにセッテピエゲ(7つ折)のネクタイの小剣をズラしたスタイルがおなじみですが、僕にはちょっとくずし過ぎな感じがするので、白シャツに7センチ幅のブラックタイを選んでモノトーンで統一。でも、シャツの襟型はミヌッチさんの好きなセミワイドスプレッドにしました。
靴もミヌッチさんなら茶色だと思うのですが、僕は黒を選んで全体的にシャープな感じに。グレーフランネルのパンツはミヌッチさんにとっても定番中の定番です。
あと、細かい部分だとミヌッチさんって胸ポケットにチーフを挿さないんですよ。その代わり、レストランに行くときなんかに柔らかなネクタイを外して、それを無造作にチーフみたいに胸ポケットに突っ込むんです。
で、あるとき本人にその理由を聞いたら、「ネクタイをしたままだと、一緒にいる女性がくつろげないだろう」って。それを聞いた瞬間、やっぱりミヌッチさんは神だと!
男ながら、ミヌッチさんを見る目がハートになりましたよ。以来、僕もこのテクニックはパクり続けています(笑)。あとチーフは挿さないけれど、サングラスを胸ポケットに入れるのもミヌッチさん流。こんなふうに、どんな格好をしていてもどこかに彼らしさを必ず香らせるんですよね。
さっき、何から何まで真似していたと書きましたが、当時は「ミニ・ミヌッチ」と呼ばれていたほどモロパクリ状態(苦笑)。そうやってクラシックの上級着こなし術をいろいろと学ばせてもらっていたのですが、あるときはたと気づいたんです。真似するだけだったら、いつまでも自分なりの着こなしを体得できないと……。
それからですね、自分と向き合って、自分らしい着こなしとは何なのか考えるようになったのは。でも、あるステージまでは真似することも大事。そうすることで、自分の基本となる型が見つかると思いますよ(今回は、いつになく真面目です)。
今回のスタイルのキモは……。
●たまにはジャケットで正統派ジェントルマンを気取る。
●イタリアのエッセンスと加えると艶っぽさと色気が出る。
●レストランでネクタイをしていたら、相手の女性がくつろげないだろ、と言いたい。
●そんな気遣い(妄想)も、いちいちカッコいい。
●今回は栗Pに注意されたから、エロスの直接的表現は抑えめ。
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
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【エロサバ】-Hoshipedia
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