20代の頃にファッションの師と仰ぐ大先輩から教わったエロスの極意を、真面目な英国スタイルとガッチャンコ。
普通ならハレーションを起こしそうな組み合わせですが、今回はあえてそこに挑戦してみました。英国人がエロいかどうかはわかりませんが、きっとエロい英国人はこんな格好をするんだろうな(妄想です)。
アイテム
スーツ/カスタムテーラービームス
シャツ/アルコディオ
ネクタイ/タカシマヤ スタイル オーダーサロン
チーフ/ムンガイ
ベルト/ジョンロブ
時計/パテック フィリップ
リング(右)/フィクサー
リング(左)/アスプレイ
ソックス/グレン・クライド
靴/WH
コート/ES:S
ファッション業界でよく耳にする、“ジェントルマン”という言葉を、自分なりに解釈して手持ちの服で表現してみたのがこのスタイルです。イメージは、英国的モダン。
要は、伝統的な紳士服のルールやマナーは踏まえつつ、それを現代的に合わせてアレンジしてみようというのが今回の趣旨となります。
公開は延期になってしまいましたが、映画『007』のジェームズ・ボンドだってスーツにスリッポン靴を合わせる時代です。“〜ねばならぬ”的な堅苦しさは、今とはちょっとかけ離れた気分かなと……。
スーツはいつものグレーですが、チョークストライプが入っているのがポイント。かつてロンドンの金融街では、この柄を「バンカーストライプ」と呼んで、エリートビジネスマンの象徴とされていたエピソードにあやかってみました。
靴はオーソドックスな内羽根式のストレートチップですし、ベルトや時計も華美なものを避けて(とはいえ、ゴールド使いでエロスは意識)、コートは「ブリティッシュグリーン」のトレンチコートをチョイス。
ちなみに、この色の呼び名は、1950年代のF1で車体色が国別で決められていた時期があり、英国がグリーンだったことに由来するんだとか。
と、ロジックの部分でも自分で納得できるように、いろいろと組み合わせてみたのですが、このスタイルにおける最大の見せ場はやはりスーツの生地。まったくエロスを狙っていないように見せかけて、素材に色気を忍ばせるは僕の得意ワザなのは、皆さんもご存じのとおり。
だってこれ、英国の老舗ミル、バウアーローバック社のカシミアなんですよ! トロットロの手触りは、マジで昇天しそうになります。この優しい風合いのおかげで、チョークストライプなのに柄が主張し過ぎないのがいいんですよね。無地感覚で着られるのに、ちょっと違うみたいな感じが気に入っています。
このスーツをオーダーしたのは10年ほど前。実は、20代のときによく着ていたブリッラ ペル イル グストのストライプスーツがあり、これもイタリアのカルロ・バルベラ社のカシミア生地を使ったものでした。
同レーベルのディレクターは、ビームスのアルバイト時代の先輩である無藤和彦さん。その無藤さんに、一見、地味で普通に見えるのだけれど、触ったらエロいのが大人のセクシーだということを教わったんです(僕のエロスの原点です!)。
でも、あまりに着過ぎてしまったせいで、最後はお尻の生地が薄くなって穴が空いてしまうという大失態を犯してしまいまして……(笑) そのときのお話は、こちらの動画でどうぞ。
で、あの色っぽさが忘れられず、グレーとネイビーを2着つくったというわけです。パンツは若干、丈と裾幅を修整しましたが、それ以外はほとんどお直しなしで、いまだ現役。
以来、無藤さんの教えを自分流に熟成させてきましたが、そこから導き出した結論が、エロスは派手なアクセサリーや胸元を露出してアピールするものではなく、己の中にあるものということ。他人にはわからないようにひた隠しにしながらも、漏れてしまうのがその真髄だと思うのです。
例えば、きちんとした女性と高級レストランにディナーに行くとき、セクシーアピールが逆効果なのは火を見るよりも明らかですよね。
つまりエロサバとは、禁欲さを保ちながら、それでも色気を香らせる知的なゲーム。ここのところ毎回のように言っている勝負スーツの最上級版がこれなのです(カシミアだから頻繁に着られないという理由もありますが……汗)。
あれ、これって英国スタイルの話でしたっけ?
今回のスタイルのキモは……。
●一応、こじつけでも英国的な気分にはあやかってみる。
●デザイン的に華美なものは避け、真面目に見せる。
●とはいえ、ゴールドをちょっとちりばめる小ワザは大事。
●一見、地味でも触ったらエロいのが、大人のセクシー。
●無藤さん、ありがとうございます!
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
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【エロサバ】-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。