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LIFESTYLE

【ドクトルの書生が行く英蘭客船の旅】vol.2
1930年代のディナースーツでガラ・イブニングへGO

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大満足のランチの後はシガーショップへ。この「P.G.C. Hajenius」は、船内のチャーチルズ・シガーラウンジでシガーをふかしていた紳士に「ぜひ建物だけでも見ておきなさい」と勧められたショップです。

「P.G.C. Hajenius」は1826年創業の老舗で、1914年より現在地に

重厚な入り口を潜ると濃厚なシガーの香りが漂ってきます。アール・デコ調の店内のインテリアはとても美しく、予想以上に奥行きがあり、巨大なウォーキングヒューミドール内には手に入らないものなどないだろうと思わせるほどの量のシガーが。お店の奥にはテイスティングルームがあり、購入したものをその場で試すことができます。換気システムも秀逸なのか、店内に煙が漏れてくることはありませんでした。

こちらのお店で特筆すべきなのが、職人がシガー葉を手作業で巻いていく様子を見学できたり、パイプを嗜む方にはおそらく夢のような自分のオリジナルブレンドをその場で作ってもらうことができる点です。

この後は国立博物館へ向かいます。オランダといえばゴッホやレンブラントを輩出した国、当美術館にもレンブラントの『夜警』を始め、17世紀の絵画が多く所蔵されています。
入場料は大人€20。この日は日曜日ということもあってチケットオフィスは大変な混み具合。オンラインでEチケットを買っておくと、€1のディスカウントを受けられ、並ばずにギャラリー内へと入ることができます。すべて見てまわるとなるとかなりな時間がかかりますが、今回は時間が限られていたので、レンブラントやフェルメールの作品にフォーカスして見てまわりました。

建物内は荘厳な印象で、カトリックの大聖堂に迷い込んだかのような錯覚に陥ります。

フェルメールの『牛乳を注ぐ女』

フェルメールの作品の中でも最も有名なものの一つ。ラピスラズリから精製されて作られた青、通称「フェルメール・ブルー」に目を奪われます。かなりの人だかりができていました。

レンブラントの『夜警』

レンブラントとオランダ黄金時代の絵画を代表する作品。今後大規模な修復が予定されており、私の訪問した際は3Dスキャンで作品の状態を精査しているところでした。逆に貴重な光景を目にしたのかも?

オランダの繁栄を支えた海運の歴史を帆船の模型たちが伝えています。鎖国時代の長崎・出島にもこのような帆船たちが大海原を渡り出入りしていたのでしょう。急に親近感が湧いてきます。

美術館を後にし、土砂降りの街中へ傘もささず飛び出します。ちょうどアムステルダムに滞在している友人と会う約束をしており、「The Hoxton Amsterdam」というホテルへ。ラウンジには感度の高い若者たちが集うとても活気のあるホテルで、料理もハイクオリティと聞いてここで早めの夕食をとることにしました。世界の様々な都市を訪れて現地のアーティストとともにポストカードを作成している彼女の話に耳を傾け、私は今回のクイーン・エリザベスでのクルーズの素晴らしい体験を話しました。

明日の朝もアムステルダムで時間があり、なかなか興味深いカフェの情報を彼女にもらったので明日の朝食をそこでいただくことにしました。やはり、なんでも現地に詳しい人は頼りになります。

アムステルダム1日目はここで終了。あまりの悪天候で多くは周れず、他の乗客の皆さんとバスでツアーに出ればよかったと思った瞬間もありましたが、500年前から続くレストランで食事ができたり、世界的名画を目の前で見られたり、友人と語らう時間もとれたりと充実した1日でした。アムステルダムという街の不思議なパワーを感じながら、シャトルバスの待つ中央駅方面へ向かいます。その足取りはどこか軽やか。実は僕にとっての1日はまだ終わっていないのです。

船上で観劇、感激。あの名作映画をミュージカル版で!

昨晩のこと、船内新聞を眺めていると気になるアルファベットの一塊が。Top Hatの文字に目が釘付けに。映画の上映か?と新聞に穴が開くほどの目ヂカラで内容を読んでみると、なんと今夜ミュージカルを上演すると書いてあるではありませんか。しかも演目は1935年、稀代のウェルドレッサーであるフレッド・アステア主演のミュージカル映画『Top Hat』。

売れっ子ブレードウェイダンサーが、ロンドンで知り合い一目惚れしたモデルの女性と、勘違いという壁に阻まれながらもハッピーエンドを勝ち取るというコミカル・ラブストーリーです。劇中歌の『No Strings』、『Isn’t This A Lovely Day』、『Top Hat, White Tie And Tails』、『Cheek To Cheek』は大変な人気を博し、後にスタンダードナンバーとして多くの歌手がカヴァーすることになります。実際に昨夜のビッグバンド・ボールでも『Cheek To Cheek』が演奏されていましたね!

また本作品はイギリスで2011年に舞台化され、2019年ロイヤル・コート・シアターに初登場となりました。私もスーツなどのテーラードガーメントに興味を持ち始めた頃、何度も繰り返し観た映画です。なんというタイミングでしょう。しかも無料で観劇出来るなんて贅沢の極みです。2回公演にも関わらず、シアターは予想以上の大賑わい。幸運なことに前方に席を見つけることができ、ひと安心です。聴き慣れたイントロが流れ、幕が開くとまさに映画の世界です。ストーリーが不自然にならない程度に数シーン省略され、1時間程度で終演。さすがはプロの役者さんたち、素晴らしい歌声やダイナミックかつプリサイスなステップを披露してくれ、最高のエンターテイメントを体験できました。生の音楽やミュージカルをこんなにも身近に享受できる環境に自分がいる幸せを噛み締めた夜です。

早いもので旅は折り返し地点を過ぎ、最終日は朝のうちに下船のため、翌日が実質、船の上で過ごす最後の1日になります。乗船前に予想していたよりも遥かに大きな刺激を受け、その興奮は未だ冷めやらぬままです。そして、まだ船から降りたくないという気持ちの芽生えに気づきます。クイーン・エリザベスでの最後の2日がどのように過ぎるのだろうか考えているうちに、一日中歩きまわった疲れのせいか深い眠りについていました。

最終回では4日目アムステルダムでの朝と、船上での最後の晩餐、5日目の下船後までをお伝えしたいと思います。

Text: Kohki Watanabe
Photo: Cunard & Kohki Watanabe



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