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LIFESTYLE

【ドクトルの書生が行く英蘭客船の旅】vol.2
1930年代のディナースーツでガラ・イブニングへGO

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終日航海日最大のイベント、ガラ・イブニング!

さて、今宵は私も楽しみにしていたガラ・イブニングです。毎回様々なテーマが設けられ、服装や小物などを楽しめるようになっています。例えば、エリザベス女王主催のアスコット競馬をイメージしたアスコット・ボール(ボールとはダンスパーティーのこと)では女性は華やかな帽子、男性はシルクハットなど、1920年代をイメージしたローリング・トゥウェンティーズでは男性はイブニングテイルコートなどが活躍します。クリスマスやニューイヤーなど季節に合わせたテーマナイトも。今回はビッグバンド・ボールと題し、イギリスよりシンガーとビッグバンドが乗船しており、迫力の生演奏でダンスパーティーをさらにエキサイティングなものに格上げしてくれます。

ロイヤル・アーケードでは今宵のためにアクセサリーや小物、衣装の調達をする方たちの姿も。私も自室へ戻りディナースーツに着替えます。ディナースーツといってもシングルとダブルのジャケットがあったり、シングルにはピークド、ノッチドラペル、ショールカラーのものがあったり、1930年代頃まではウェストコートを着る習慣もありました。

私は今回、船内の雰囲気に合わせて1930年代製の古着を持ってきました。フォーマルウェアに身を包むと、いつもの倍は背筋が伸びる気がして、心も踊ります。写真はグランド・ロビーにて。背景は、エリザベス女王の甥で世界的な寄木細工の彫刻家であるリンリー子爵が製作した初代クイーン・エリザベス。黒檀やウォルナット材などの無着色の天然木のみを使用した豪華な造りに目を奪われます。

まずはディナーへ繰り出しましょう。昨日と同じブリタニア・レストランなのに、今日は違う熱気を感じます。きらびやかに着飾った女性たち、その背景を務めるディナースーツ姿の男性たち、彼らの抑えきれない期待や興奮が漂い、まったく違った空間のようです。

メインは旨味の詰まった上質なラムを堪能

ディナーが終われば、ビッグバンド・ボールが行われているクイーンズ・ルームへ出かけたり、船旅の記念に写真撮影会へ向かったりと船内の活気はピークに。ビッグバンドの演奏のスタートともにダンスがスタート。「Cheek To Cheek」や「Ain’t That A Kick In The Head」などの往年の名曲に会場は大盛り上がりです。さすがは生演奏、迫力あるビートに勝手に体が動きます。シンガーも3人交代で様々なナンバーを披露してくれます。

昼間のクイーンズ・ルームとはすっかり様変わり。ドレスアップした紳士淑女で溢れかえるこの光景、日本ではなかなか見られません!

演奏の第一部が終わり、ミッドシップ・バーでボタニカルなテイストのカクテルを飲みながら暫しの休憩を。

ガラ・イブニングは何もクイーンズ・ルームだけが会場ではないようです。カジノはいつも以上の盛り上がりを見せているし、ロイヤル・コート・シアターではブリティッシュ・コメディのショーが開かれており観客の笑い声が聞こえてきます。私も覗いてみましたが、観客参加型になっており、この時は最前列に座っていたご夫婦が盛大にイジられていました。

夜は更けていきますが、船内の盛り上がりは収まりそうにありません。ボールはやっと中盤、バンドが一度下がり、スローなナンバーが続きます。私はここで失礼することに。船が目指す、僕にとっては未踏の国オランダに思いを馳せながら、期待とともに床へ就きました。

寄港地エイマイデンへ到着── アムステルダム観光スタート!

まだ日も昇らない早朝、 エイマイデン、フェリソン・クルーズターミナルへ接岸するため、大きく旋回するクイーン・エリザベス。エンジンをAhead(前進)からAstern(後進)に入れPort Side(右舷側)に接岸。私もこの最中になぜか目が覚め、バルコニーから一部始終を見守っていました。私も部屋も右舷側だったので、暗くはっきりとは見えなかったのですが港の様子を認め、日が昇るまでもう一眠りするのでした。

朝の下船ラッシュを避けるため、観光の計画を練りながらリドでゆっくり朝食をとっていた私は少し嫌な予感がしていました。ウィンドウから外を見るとものすごく寒そうなのです。現地の最新の天気予報を見ていると、なんとこの日の最高気温はエイマイデンで10度、アムステルダムではなんと9度! 日本でいうと12月並みの寒さです。しかもアムステルダムは大雨だとか。

流石にツイードジャケット1枚では寒いだろうし、トラウザーズもミディアムウェイトのものでは心許ない。そこでふと思い出したのが出発当日の朝、ロンドンのポートベロー・マーケットで買った1950年代のイギリス海軍のレインコート。偶然の産物ですが、持っていかない手はありません!

エイマイデンからアムステルダムの中心部へは約29km、車で45分ほどですが、船からはキュナード・ラインの用意したアムステルダム行きの無料シャトルバスが15分おきに出ており、手厚いサービスをここでも実感します。お昼前に乗り込んだバスは数人の乗客を乗せ、エイマイデンの工業的な街並みを抜けていきます。15分もすると道路は街路樹に囲まれ、古き良きヨーロッパの都市の香りが漂ってきます。道もあまり混まず予定より早く市街地に到着、アムステルダム中央駅の脇で下車します。温かいバスを降りると衝撃的に寒く、早速コートに感謝することに。

オランダの首都、アムステルダムは運河の街。イギリスに端を発する産業革命の到達でライン川や北海へ直結する運河を建設、このおかげで欧州各地と通商を行い栄えることができました。市内に横たわる5つの大きな運河を中心に、蜘蛛の巣状に張り巡らされた運河網がアムステルダムの景観をユニークで魅力的なものにしていると言ってもよいでしょう。運河の両脇には無数のボートが停泊しており、そこで生活している人たちもいるのですが、現地では人気の高い生活方法の一つです。天気の良い日には運河クルーズに参加すると、可愛らしいアムステルダムの街並みをボートの上から楽しめます。

さあ行動開始です。市内は路面電車網も発達していたり、自転車大国であるためレンタルサイクルのシステムも充実したりしてはいますが、ここは敢えて歩いてみることにしました。威風堂々とした佇まいのアムステルダム中央駅を背に、大通り「ダムラク」を南下すると王宮のあるダム広場へ出ます。王宮とはいうものの、元々は市庁舎として建てられており、歴史上、王室が所有しているだけのこの建物には宮殿としての機能はありません。実際の王宮は国会や中央官庁とともにデン・ハーグの街にあり、アムステルダムには実質的な首都機能がないのが特徴です。

ランチはダム広場の近くにある「Haesje Claes(ハーシェ・クラース)」というお店でとることにしました。伝統的なオランダ料理を食べさせてくれるこのレストラン、なんと創業は1520年! 日本は室町時代、戦国時代の真っ只中、ヨーロッパはルネサンスの時代です。

そんな歴史あるレストランでいただくのが名物「スタンポット」。ポテトや人参のマッシュの上に巨大なミートボール、ソーセージ、ベーコンが載っている、オランダの冬の伝統料理です。肉ばかりでいかにもヘビーな印象でしたが、ミートボールは魚肉ソーセージに近い味わいで意外とあっさりしていて、ソーセージも脂身が少なめの配合。付け合わせのピクルスの酸味で食欲がさらに駆り立てられ、かなりのポーションですがあっと言う間に食べられてしまいます。冷えた身体もすっかり温まり最高のランチでした。英語で「美味しかった!」と女将さんに告げると「ありがとう、口にあってよかったわ!」と流暢かつ完璧なアクセントの英語で返ってきました。オランダ人は英語がとても上手で、オランダ観光の際は英語が話せれば困ることはほとんどないのだそうです。



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