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LIFESTYLE Dr.ノリシゲの妄想ドライブ

【早く観たい】名優クリスチャン・ベイル×マット・デイモンが挑むノンフィクション映画『フォード vs フェラーリ』

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説明しよう! 妄想ドライブとはヴェテラン モータージャーナリスト・ノリシゲセイイチが「このクルマにのったら、こんなことをしたい。こんなところに行きたい。この街道でぶっ飛ばしてチャンネーとこんなことがしたい!」と妄想の世界に遊ぶ気絶コラムである!

“フェラーリをぶっ壊す!”フォードの戦い

某国政政党のキャッチフレーズじゃありませんが、1960年代のル・マン24時間レースを舞台に繰り広げられたフォード対フェラーリの戦いを描いたノンフィクション映画、『フォード vs フェラーリ(邦題)』が2020年1月に全国ロードショーされます(配給:20世紀フォックス映画)。

タイトルから妄想すればコアな作品だけに劇場公開は期待薄かと思っていましたが、どうやら大きなスクリーンで迫力の映像が楽しめそうです。原題は『FORD v FERRARI(2019)』。米国では11月公開予定で、しかも、主演のマット・デイモンは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997)』以来のアカデミー賞ノミネート作品になるのでは? とのウワサも。

getty images 左)クリスチャン・ベイル 右)マット・デイモン

ちなみに2020年の第92回アカデミー賞(オスカー)ノミネート候補は公開順に、エルトン・ジョンの伝記である『ロケットマン』、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』など。そして、もっとも下馬評が高いのはこれから公開されるマーティン・スコセッシ監督+ロバート・デ・ニーロ&アル・パチーノというビッグネーム揃いの『アイリッシュマン』という作品です。

ヒューマンドラマなくしてオスカーは取れず……という定石に照らせば、フォードのPRバリバリとも思えるこのタイトル、どこにドラマがあるのでしょうか? ワタシも予告編しか見ていませんので想像の域を出ませんが、サクッと検証してみましょう。

物語は1963年辺りのスタート。時のフォードはライバルに対しスポーティなイメージに乏しく、戦後ベビーブーマーに対し訴求力に欠けていました。そこでトップのヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)は「モータースポーツで世界一になる!」と決意します。

で、考えたのが、当時、ル・マン24時間レースで連覇中の「フェラーリ丸ごとお買上げ作戦」です。そして、いよいよ交渉の席についたものの、財政難にもかかわらず、エンツォ・フェラーリ(レモ・ジローネ)に後ろ蹴りを喰らいます。さすがコメンダトーレ!

怒り心頭のヘンリー・フォード2世は、エンツォ・フェラーリを叩きのめすことを誓い、エンジン供給で縁のあった英ローラ・カーズ他数社を束ねフォード・アドバンスド・ビークルズ社を設立。ル・マンで勝てるマシンの開発に取り掛かります。リーダーはリー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)。ところが、コレがうまく行かず、後にクライスラーの会長に就任することになるアイアコッカを解任します。

次に白羽の矢を立てたのが、ACコブラで北米のレースを席巻していたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)です。このパートナーシップが実を結ぶのですが、しかし、映画の物語は相方がいなくては盛り上がりませんね。そこで登場するのがキャロル・シェルビーの相棒であるケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)です。

英国人のケン・マイルズはバイクからモータースポーツの世界に入り渡米。移住後、米国でレーシングドライバーとして、また、優秀なコンストラクターとしてSCCAで大活躍。また、英サンビームからシャシー供給を受け本格的なクルマ作りを目指していました。

一癖あると評判のケン・マイルズを口説き落としたのは、キャロル・シェルビーでした。彼もまたドライバー&コンストラクターとして名を馳せていましたが、開発能力に長けたケン・マイルズというパートナーを得て躍進します。英ACカーズと提携し、後に名車ACコブラを誕生させますが、その功績はケン・マイルズ抜きに語れるものではありません。

ヘンリー・フォード2世から好かれていなかったケン・マイルズですが、キャロル・シェルビーはなんとか彼を説き伏せ、ル・マンで勝てるマシンの開発に乗り出します。その時に誕生したマシンがフォードGT40です。ちなみに車名の数字は車高の高さで、40インチですから1m+αという低いレーシングマシンです。

1969 Tribute GT40 Gulf Ford GT40 P/1075
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参戦3年目。1966年のル・マンでフォードGT40はついに表彰台を独占。1-2-3フィニッシュを飾ります。優勝はブルース・マクラーレン&クリス・エイモン組でしたが、F1ドライバーのデニー・ハルムとコンビを組んだケン・マイルズも2位でフィニッシュ。彼はこの大会の最年長ドライバーでありながら見事に24時間を走りきります。

1969 Tribute GT40 Gulf Ford GT40 P/1075
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ケン・マイルズ組は前哨戦である他のレースではチームオーダにより2位に甘んじていましたので、ヘンリー・フォード2世にはかなり嫌われていたようです。映画では息子さんや奥様も登場しますが、この辺のドラマがどれだけ描かれているか不明です。ケン・マイルズはこの年、テスト中の事故により他界します。享年47歳。

1969 Tribute GT40 Gulf Ford GT40 P/1075
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1967年のル・マンはフォードGT40 が2連覇を達成し表向きワークス活動を中止。翌1968年からJWAE(ジョン・ワイヤ・オートモーティブ・エンジニアリング社)他、プライベートチームにマシンを託します。そして、1968年、1969年と連勝記録を更新。有終の美を飾ります。

1969 Tribute GT40 Gulf Ford GT40 P/1075
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見事に名車の殿堂入りを果たしたフォードGT40ですが、じつは今なお継続生産されています。いわゆるレプリカの仲間と思われがちですが、「GT40」の商標権、図面、生産治具などはオリジナル。その気になればFIAのペーパーも獲得できます(正式なクラシックレースに出場可能)。ちなみに、事情は少々複雑ですが、フォードが商標登録するのは「フォードGT」だったはず。つまり本家フォードは「GT40」を名乗れないのです。

1969 Tribute GT40 Gulf Ford GT40 P/1075
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正式に「GT40」を名乗れるのは米スーパーフォーマンス社が手掛ける車両のみ。工場は南アフリカにありハイテック社といいます。世界中にあるディストリビューターはスーパーフォーマンス社から代理店の権利を獲得する必要があります。

このスーパーフォーマンス社の英国代理店である「ル・マン クーペ社」から、1969年に1.5秒差で追いすがるポルシェ908(ワークス)を下し優勝したシャシーナンバー「GT40P/1075」のマシン(1968年も優勝)、ジャッキー・イクス&ジャッキー・オリバー組のマシンを細部まで忠実に再現した「THE SUPERFORMANCE GT40 50TH ANNIVERSARY」が現在発売中。その限定数は50台。ユニークなことにガルフカラーのギターのおまけ付き。

Gulf Guitar
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このマシン、レースファンにはおなじみのガルフカラー、右ハンドル&右シフトと本格的なレース仕様を再現します。エンジンはナスカーなどフォード系チューナーの大御所ラウシュから289、301、351と3種類選べるそうですが、こだわるならレースカーと同じ289(約4.8リッター)でしょうか。エントリー価格は25万ポンドから。

この限定車とは別に、映画にちなんだケン・マイルズ&デニー・ハルム組みのマシンもリクエスト可能です。こちらはクーリング対策でエンジンカウルのエアダクトが大きくなりますが、本格的レースシャシーも選べるのでマニアにはたまらない一台が作れそうです。ちなみに両車ともにエアコン装着可能。

間もなくやってくる8月17日はケン・マイルズの命日です。困難に立ち向かうキャロル・シェルビーとの友情、家族愛、レースシーンなどなど、どのように描かれているのでしょうか。過去に脚本まで手掛けたキャリアをもつ俳優たちが名を連ねるだけに、今から映画の公開が楽しみでなりません。

Text:Seiichi Norishige

Le Mans Coupes

■映画『フォードvsフェラーリ』予告編 2020年1月公開

 


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