HEALTH ― 「超名医に聞け!」

40男のセルフケア「超名医に聞け!」

【パパの悩みを解決】小児科の名医が提唱する、父性の育児とは?

2019.7.31 2019.7.31
2019.7.31

「仕事が忙しくて、いつも寝顔しか見られない」「子供が飽きっぽくて習い事が続かない」——。パパの子育てに悩みはつきません。頑張れば頑張るほど空回りしている気もします。

「どの子も親から受け継いだ、素敵な才能を持っています。あたたかく見守りましょう」

 こう語るのは、桐和会の岡本和久理事長から紹介の慶應義塾大学医学部小児科医の高橋孝雄教授。初の著書である『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(マガジンハウス)は12刷り6万部を記録。36年間の小児科医の経験を誇る高橋教授から子育ての秘訣、虐待の現実、小児科医療の現場についてシビレるほど素敵な話を聞きました。

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——ご著書の『最高の子育て』を拝読すると、「心配しなくて大丈夫。子どもの力を信じよう」と伝わってきました。

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「最近、「子育て」ではなく「子育ち」という言葉を聞く機会が増えてきました。 子どもは本来、すくすく育つ力を持っている、という意味あいです。逆境に打ち勝って育つ。酷い環境のように見えても、子ども自身は「生まれてきてよかった」と感じていることも多いものです。

ですから働き盛りのお父さんが、いい子に育てるために あれもこれもやらせなければ、 後で後悔しないためにも今できるだけのことを、と慌てる必要はない。 親として子どもに何かをしてあげたい、と思う気持ちは当然ですが、行き過ぎは自己満足に終わるだけです」

——仕事中心の生活で育児に手が回りづらく、子どもの寝顔しか見られないお父さんも多いと思います。

「子育てに参加できないことを 深く悩み、悔いる必要はないと思うんです。 子どもの存在が仕事の原動力になっていませんか。「申し訳ない。でもかわいいお前やお母さんのためにお父さんは仕事がんばるよ」と思う気持ちは子どもにも伝わるはずです。動物のオスだって自らの危険を顧みずに外に出て狩りをする。血まみれになってテリトリーに帰ってくるわけです。

仕事と育児のバランスにあまり悩むことなく仕事に没頭する、それもある意味、子育てでは。 働き盛りの男性は、とかく育児参加が間接的なものになりがちです。 でも、奥さんが孤立感や疎外感に苦しんでいないか優しく見守り、 折に触れ感謝の言葉を忘れないようにさえしていれば、 「知らぬ間に息子が歩いていた!」でもいいのかもしれない。大事な家族を働くことによって守る。これは父性による育児です」

——ご著書でも父親の持つ父性と母親の持つ母性の役割分担がある、と述べておられます。

「例えば病気を抱えた子ども。お母さんは「大丈夫?辛くない?」と共感する。子どものすぐそばに寄り添う。そのような母性によって子どもは、 たとえ重い病気と闘っていても大きな安心感を得ることができます。

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 他方お父さんは、どういう理由で病気になったのか、治療には何が必要でどのくらいの時間や費用がかかるのか、と理論的に子どもの病気と闘う。情と理の違いがはっきり出る。医師も、お父さんに は理路整然とありのままに病状を話したとしても、お母さんには心を込めて「大丈夫ですよ」と大船に乗ったかのような安心感を与えるように言葉を選ぶ。

 もちろん、豊かな母性を持つお父さんに出会うことも珍しくないし、たくましい父性を持つお母さんもたくさんいます」

——36年間、子どもを診察されて最近の変化、気がつくことは?

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「最近、ニュースなどで虐待がしばしば取り沙汰されます。昔から児童虐待はあったわけですが、殴る蹴るの 身体的暴力に加えて、 精神的な虐待、例えば子どもの面前で激しい夫婦喧嘩やDVが行われるなど、虐待が多様化し、巧妙になり、深刻になってきていると感じます。笑わない、能面のように無表情で意思を示さず、誰とも話したがらないなど、 重い虐待の被害者が増えてきているように感じます。

 到底理解できない ような行為におよぶ親もいます。子どもを 黒いビニール袋に入れて 空気銃で撃ったり、舌にタバコの火を押しつける。 まだ歩けもしない 赤ん坊の両足を熱湯につけ火傷させる。 病院では「勝手に 熱いお風呂に入ろうとして火傷した」と見え透いた嘘をつく。熱い焼き肉用ホットプレート の上に立たせた 例もあります。足の指のほとんどが紫色に内出血していた子もいました。おそらく金槌か何かで潰されたのでしょう。

 虐待を受けている小さな子どもたちの多くが、加害者である親たちを庇うことも悲しい驚きです。 タバコの火を押し当てられて 火傷した舌のことをたずねても「アッチッチしちゃった」と 繰り返すのみで、とにかく親を庇おうとする

——親を庇う?

「親が悪意から自分を苦しめるわけがない、と信じているからです。 足の指を潰されていても「重い本、落としちゃった」と自分のせいにする。自分が悪い子だから仕方ない。お父さんがお母さんを叩くのは、私がお母さんの言いつけを守らないからだ、と信じている。

  穏やかに微笑みながら「自分のせいだ」と 親を守る。 その心の葛藤は凄まじい。葛藤が続き、それでも虐待が続くと、やがて子どもは表情を失うことになる」

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——やるせないお話で愕然としますが、ごく少数なのでは?

「子どもが 大けがをしたり、亡くなってはじめて大きく報じられますが、それらは氷山の一角です。救急外来に運ばれたり、衰弱して入院患者としてやってくる子どもはずっと多い。 さらに、児童相談所や医療機関が特定できる虐待は一部に過ぎない。なかなか表面化しないのは、子どもが親を庇うからかもしれません。

そんな優しい子どもたちの心理に付け込んで、虐待の加害者たちはますます 増長します。 反省文を書かせ、それを証拠として使おうとした親もいましたね。あなたが悪いから叩いている、いい子にすれば叩かないんだよ、と本人に思い込ませる。支配するための洗脳といえる。虐待を受けた子の心のケアには長い長い年月を要します」

—— 子どもの身体に虐待の痕跡を見つけた場合はどうされていますか。

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「急に熱が出たという理由で緊急外来に連れてこられた子がいました。4歳の男の子で身体にいくつもの痣がある。舌にも火傷の跡がある。お母さんの頬にも痣がある。熱が出たというのは 救急外来を訪れるための口実で、父親から逃れるために違いないと判断し、すぐに入院させ保護しました。父親には入院の事実を伏せ、病室の入り口のネームプレートも違う名前にします。父親とは一切、連絡とらせないようにする。 後に、別居や離婚を勧めることもあります」

——狡賢い父親なら弁護士を連れてきたりしませんか

「親が代理人を使って、面会させろと迫ってくることもあります。突っぱねます。 裁判沙汰にまで発展したこともありました。でも、面会は認めない。 子どもの権利、生命を守るためです。 家に帰してしまえば殺されるかも知れないのに帰しますか。医師は子どもを守るために、その力を存分に発揮すべきです警察が来ても怖くない。弁護士が来ても関係ない。守るべきは、その子の命ですから ある意味、医師も看護師も、父性の強さをもって力を尽くします。もちろん、母性のやさしさをもって被害者に寄り添うことも忘れませんが。

——シビレますね。高橋先生のご自身の子育ては? 

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「初めての子が12月20日に生まれて、クリスマスイブの24日まで会いに行かなかった。 片道たったの30分の距離です。子どもに会い に行きたい、 家内に 労いの言葉をかけに行くべきだ、とよぎりましたが、担当だった小学生の女の子の病状が急に悪化していった時期でもあった。脳 梗塞を起こし 意識がなくなり、どんどん衰弱していった。生死の境を彷徨っている子ども の主治医として、自分の子が生まれたのでちょっと会いに行ってきます、とは言い出せなかった。

残念ながら、その子はまもなく天に召されました。クリスマスイブの夜に ぬいぐるみか何かを買って会いに行ったようです。ようです、というのは私自身には記憶がなく、後になって家内からそう聞いたのです。女の子が亡くなったショックを引きずっていたのか、記憶が定かではない」

——壮絶ですね。

「家内から「子どもが生まれてもお父さんが来ないから、相部屋の他のお母さんたちからはシングルマザーだと思われて、腫れ物扱いだったのよ」と聞かされた。

 これも記憶に無いのですが、生まれて4日後にのこのこやってきて、娘の体に聴診器を当て、「うん健康な子だ」と言ったようです。相部屋の他のお母さんたちとはクリスマスイブ以後やっと打ち解けられた、と聞きました。

 ひどい父親だな、と我ながら思うのですが、職場を離れなかったこの判断は、小児科医を生業にしている者として 止むを得ないものであったのかも知れないと思っています」

——高橋先生のような小児科医の見分け方は? うちの娘を病院に何度も連れて行っていますが、パソコンの画面をひたすら見ているだけの医師って多くないですか。

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「診察記録が全てが電子化された今の時代、ある程度は仕方がないと思います。私が患者さんたちと向き合って話ができるのは、外来に若い2人の医師が付き添ってくれるからです。一人の医師は 、子どもやご家族の話の内容、私の説明などを 電子カルテに打ち込んでくれます。もう一人の医師は、検査の準備、薬の処方などを進めてくれる。この2人がいるので、私は患者さんに集中できる。 電子カルテの記録は医療が正しく行われていることの重要な証拠となります。ですから、電子カルテにキーボードで入力することは医師の義務となっています。書類を作成する際のミスも許されない。私は例外的で、多くの医師はこれらの作業を一人でほぼ全部やらないといけないわけです。

 子どもやお母さんと話しながら、電子カルテを書き、検査の準備も行う。薬の処方、次の外来の予約とすべて をパソコン画面の中で進めていく。手一杯なんです。この医師も本当はこちらを見て話をしたいのに、ままならないのだ、と思っていただければ幸いです」

——電子化された実態を存じ上げませんでした。一瞬、こちらを向いてくれるのは頑張ってくれていたのですね。

「一瞬でも目を合わせようと頑張っています(笑)。
若手の医師には、患者さんが入ってこられる時に「お待たせしました」「大きくなりましたね」と何か一言声をかけるようにしなさい、と教育しています。また退室される時にも、 一言添えて見送るように伝えています。「一ヶ月後また」「お待たせして申し訳ありませんでした」と言うその言葉に「どうかお元気で」という思いを込め、頭を下げる」

——逆に患者も医師に頭を下げなくなっていますか。

「患者さんで診察室を出ていかれる時に振り返って会釈をされる方は慶應病院では半分強でしょうか。病院によってはずっと少ないところもある。たとえ相手が振り向いてくれなくても、それでもお見送りのお辞儀は大事にしています。患者さんやご家族が振り返ってくれた時に、パソコン画面で次の患者さんの準備を始めているのと、「お大事に」「また、会おうね」と声をかけるのでは雲泥の差だと感じませんか。お迎えとお見送りに気持ちを込める」

——大変、含蓄深いお話をありがとうございました。さてFORZA的には先生のお洋服選びについてもお伺いしたいのですが。

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「スーツはビスポーク。やはりテーラーが自分に合わせて仕立ててくれたスーツを着ると身が引き締まる。『ペコラ銀座』の佐藤さんが生地の選定、採寸、型紙起こし から最後まで責任をもって仕上げてくれる。手縫いですので、夏のスーツが欲しい時は早春には店に行かねばなりません。高価ですが、擦り切れてもお直ししながら10年は着られる。10年、体型を維持しないとならないわけですが(苦笑)。

 エルメスも コートやジャケットも好きです。独特の女性的なライン、 優れた縫製、そしてある程度の体型を維持しないと着こなせないところに魅力を感じます。そのためにマラソンをしているという面もあります」

——50歳でマラソンを始め、8年後の東京マラソンで自己ベストの3時間7分を記録した。今、どれくらい走っていますか。

「週3日、1回に20〜30km走ります。朝4時に起きて野菜ジュースを1杯飲んで3時間走る。低血糖、脱水状態のまま病院に向かいます(苦笑)」

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 マラソンを始めたことで 足の裏にも筋肉が付き、ビスポークの靴が入らなくなってしまった。世田谷区・成城にある靴工房『ベンチメイド』で大川バセット由紀子さんと素材やデザインについて話し合いながら作っていたのですが、ビスポーク故に履けない(涙)。

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オリジナルのシューツリーも作ってくれて一足30〜40万円ほど。ジョンロブでビスポークとなれば100万円ですから、大川さんが丹精込めて作ってくれるのであれば高くない。マラソンを始めてからというもの足の大きさが定まらず、足底筋膜炎にもなり常に中敷きを敷いているので、大川さんのビスポークを諦め、いまは丸の内ジョンロブ の既製品にお世話になっています

——時計は

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「大事にしているのは1951年製の『パテックフィリップ』です。手巻き時計ですが、ちっとも狂わない。裏面に、英語の筆記体で、旦那さんから奥さんに贈られたようなことが書いてある。私は手首が細いので女性用のほうがしっくりくる。白衣にも映えるので気に入っています」

——ネクタイは?

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「ブルガリが好きです。 遊び心のあるプリント柄と布を6重に折りたたんだネクタイ本来の作り方が気に入っています」

——最後に千葉県市川市で住宅地に保育園を建設しようとすると地元の老人の反対の声で中止に。港区青山に児童相談所を建設しようとすると「資産価値が下がる」と反対の声があがるなど自分の都合が第一で、子育て、子どもに寛容ではない。

「このような考え方が虐待の素地になるのではないでしょうか。いつの時代でも子どもの存在は特別なものです。もし本気で反対しておられるのであれば、人間の本能のどこかがズレているとしか思えない。なぜここで「資産価値」というさもしい言葉が出るのか理解できない。不登校で苦しんでいる子、虐待から逃れて駆け込んできた子どもを守る場所があることこそ資産価値。その地域にとってイメージアップ、ブランド力になると私は思う。

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世界中どこを見ても、子どもをないがしろにして自分たちの暮らしを優先したい、と公言する街など聞いたことがない。子どものいない社会を想像してみてください。あなたはそんなモノトーンな社会で生きていきたいのですか」

次回の「名医に聞け!」もお楽しみに。

Photo:Sono Aida
Text:Daisuke Iwasaki

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(プロフィール)
1957年、奈良県生まれ。61歳。1982年、慶應義塾大学医学部卒業。35歳でハーバード大学医学部講師を務め、帰国後44歳で教授就任。現在、2万2千人の会員を擁する日本小児科学会会長も務める。趣味はランニング。2016年の東京マラソンで3時間7分の自己ベストを記録。別名、「日本一足の早い小児科教授」。

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名医に聞け

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