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LIFESTYLE 妻のトリセツ

逆気絶しないための【妻のトリセツ】§8. それでも別れないほうがいい理由

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 こんなに手間暇かけて、機嫌をとって、それでもきっと文句ばかり言う妻。もう、別れちゃってもいいかもしれない?
 同居期間が20年以上の熟年離婚が増えている。厚生労働省が発表しているデータによると、同居期間が20年以上の離婚件数について、1985年には2万434組だったが、2015年には3万8641組に変化。つまり、この30年で熟年離婚は2倍近く増えていることがわかる。同居期間30年以上の離婚件数に至っては、この30年で約4倍に増えている。

ともに人生を歩む自信がなくなる「妻からの理由」とは?

 離婚の原因・理由は、異性問題、浪費や借金、肉体的暴力、精神的暴力、経済的虐待など、客観的に見てはっきりわかるもの以外に、長い年月をともに過ごした夫婦ならではの原因・理由がある。
 それが、「この先もずっと、この人と一緒に人生を歩んでいく自信がない」というもの。人生100年時代になり、60歳で定年退職を迎えても、人生はあと40年近く残されている。その年月を「この相手とともに過ごしていけるかどうか?」と考えたとき、自分らしく生き直すために離婚という選択をするケースが増えているのだ。
 ここでは、ともに人生を歩む自信がなくなる「妻からの理由」を挙げてみる。

● 夫が家にいることがストレス
夫が定年退職し、一日中家にいることで、今まであまり気にならなかった生活習慣の違いが、妻のストレスになる。

● 性格の不一致
結婚当初から性格が合わないことに気づきながらも、子どもや生活のためにずっと我慢していた。しかし、一緒に過ごす時間が増えることで、我慢の閾値を超えて何もかもが嫌になってしまう。

● 会話がない
子どもがいるうちは気がつかなかったが、夫婦ふたりになると会話が続かない。寂しいだけでなく、一緒にいる意味がわからなくなる。

● 価値観の違い
歳をとるに従い、価値観のズレがどんどん大きくなってきた。

● 義理親の介護問題
介護の負担が妻に偏る。また、それに関しての感謝がない。いたわりの言葉がない。夫や義理親に対する積年の恨みが噴出する。

● 家事に関する不満
夫は退職してのんびり過ごしているのに、妻には退職がない。夫が家にいるようになって家事が増える。また、家事に対して無関心、家事に口出しをするなど。

これらが、妻が長年連れ添った夫と離婚したくなる「夫に見えにくい原因や理由」である。妻にとっては、昨日今日、別れを思い立ったわけではなく、夫の定年、子どもの独立、親の介護などをきっかけに引きずり出された、過去のネガティブトリガー総決算の結果なのだ。

「責務を果たす」という愛は女性脳には通じない

 しかし、夫にとって不幸なのは、男性脳の「愛の証」と女性脳の「愛の証」がまったく違うことにある。
 男性脳にとっての愛の証は、責務を果たすことだ。小学生は、小学校へなんの疑いもなく通う。「将来のために必要だから」とか「好きだから」とかいちいち考えない。男の愛は、これに似ている。
 小学校のほうも、小学生を裏切らない。どんな小学生でも「君は、小学校が好きじゃないようなので、今日の給食、君の分はありません」とは言われない。毎日行きさえすれば、毎日教室に席があって、毎日美味しい給食が食べられる。男が思い描いている女の愛も、そういうものである。だから、男は、雨の日も風の日も、二日酔いの朝も当たり前のように仕事に向かい、家に帰り、稼ぎを渡す。それが男の「愛している」だ。

 ところが、女という「小学校」は、男の気持ちを勝手に探る。男たちは思いもよらないことで「誠意がない」「心がない」と判断されて、席が教室の外にあったり、給食がなかったりする。女という小学校は、けっこうひどい

夫を救う、女性脳のリスクヘッジ能力

 しかしそれでも、妻がいたほうがいい理由がある。現実的なことを言えば、まず、健康寿命が違う。『人口学研究』第33号「日本の配偶関係別健康余命」(小松隆一・齋藤安彦)によると、妻と離別した男性は、妻がいる場合と比べて、40歳時での健康余命が約10年短くなるという結果がある。

 また、東洋経済オンライン「なぜ『離婚男性』の病気死亡率が高いのか」(荒川和久)によると、既婚・未婚・死別・離別で比べた場合の死因と死亡率では、病死・不慮の事故・自殺のすべてにおいて、離別の男性がダントツで高い。病死の場合、悪性新生物・白血病・糖尿病・心疾患(高血圧症を除く)・脳血管疾患・大動脈瘤及び解離・肺炎・肝疾患・腎不全のすべての項目で、離別が高く、特に糖尿病は妻がいる男性の10倍以上、肝疾患は8倍以上という結果もある。このことから、離婚後の男性の生活のサイクル、食生活の乱れ、アルコールへの依存が浮かび上がる。

 さらに、妻に対する心の依存度も夫は高い。内閣府の『第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果』で「心の支えとなる人」の調査結果を見ると、日本人男性は、1位が配偶者あるいはパートナーで78.8%となり、2位の子ども(養子を含む)48.3%を大きく上回る。ちなみに、日本人女性の場合は、1位が子ども(養子を含む)で65.0%、2位が配偶者あるいはパートナーで54.0%である。

 日本、アメリカ、韓国、ドイツ、スウェーデンの5ヵ国の調査結果が出ているが、韓国、ドイツ、スウェーデンも男性の1位は配偶者あるいはパートナー(アメリカは2位)。女性が配偶者あるいはパートナーを1位にした国はなかった

 女性の察する能力は、本人の想像をはるかに超えて、本人も無意識のうちに大切に思う存在のわずかな変化に気づいている。
 目の前のものを舐めるように見て、ちょっとの変化を見逃さない能力で、もの言わぬ赤ん坊の健康状態がわかるし、子どもや夫の病気も察知するし、嘘も見破る。「なんとなく気になる」というのが、女性脳のリスクヘッジのトリガーであり、夫はそれに命を救われているのだ。

口うるさいのは、一緒に暮らす気があるから 

 女性脳のリスクヘッジトリガーは、一日中、あらゆる場面で発動される。「歯磨きした?」「お風呂に入って」「ソファじゃなくて、ちゃんとベッドで寝て」「一口目は野菜から」「ビール飲みすぎ」「タバコはやめて」といった生活習慣から始まって、「テーブルに直接熱い鍋を置かないで」だの「お風呂から出たら換気扇を回して」といった、家庭の決まりごとまで、事細かに注意・命令を繰り出してくる。

 うるさいことこの上ないが、妻がガミガミ言うのは、夫と長く一緒に暮らしたいからなのだ。歯磨きをサボって歯周病になれば、歯を失うだけでなく、心疾患や糖尿病のリスクも高まる。テーブルだって同じ。1回熱い鍋を置いただけでは、なんの変化も起きないテーブルも、長い文脈で物事を見る女性脳は、2回、3回と夫が同じことを繰り返しているのが見える。そして繰り返すうちに、テーブルの塗料がはげて、ダメになっていく未来も見える。

妻は男の守り人なのである。

 察することが愛だと思う女性脳。褒めて、認めてもらいたい女性脳。自分だけを特別扱いしてほしい女性脳。ときには、愛の言葉や甘い優しい言葉も欲しがる女性脳。どれもこれも、男性脳からすると難儀な脳ではある。しかし、女性脳がすねたり、怒ったり、口うるさかったりするうちは、まだ夫に惚れている証拠。妻のためと思わずに、自分のリスクヘッジのために、妻の女性脳をせっせと慰撫しようではないか。

 

 photos:gettyimages

 

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