LIFESTYLE ― 妻のトリセツ

逆気絶しないための|妻のトリセツ

§3. ゴミ捨てには10工程もあったなんて!「名もなき家事」って知ってる?

2019.2.12 2019.2.12
2019.2.12

朝、目玉焼きにウースターソースをかける。トイレに入ってトイレットペーパーを使う。歯ブラシに歯磨き粉をつける。曇りのない鏡に向かって髭ひげを剃り、清潔なタオルで顔を拭ぬぐう……。夫である男性諸君は、毎朝の自分の行動になんの疑問も抱いていないはずだ。いつもあるべきものがそこにあるだけなのだから。

「平成28年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」(総務省統計局)の、6歳未満の子どもを持つ夫婦のデータによると、夫の一日の家事関連の平均時間が83分(家事や育児時間などの合計)であるのに対し、妻は454分。ちなみに、共働きで子どもがいる夫婦の場合、夫は46分、妻は294分。妻側の離婚理由にこの不公平感が大きく関わっているのは、この数字からもよくわかる。
 洗濯は洗濯機が、掃除はお掃除ロボットが、食器洗いは食洗機が担う家庭が多くなった現在、夫としては「家事にそんなに負担がかかるか?」というのが本音かもしれない。しかし、料理、洗濯、掃除、窓拭き、ゴミ捨てといった「名前のある家事」以外に、「名もなき家事」があることに、目の前の観察力の低い夫はほとんど気づいていないのが現実だ。

ゴミ捨てには10段階(以上)ある!

 たとえば、「夫がしている家事」の上位にくるゴミ捨て。この場合のゴミ捨ては、ゴミの入った袋をゴミ置き場に移動させることを指す。しかし実際にゴミがゴミ袋に収まり、移動可能な状態になり、次の新しいゴミ袋がセットされるまでに必要な手順は以下の通り。

①分別の仕方を理解し、それぞれのゴミに合ったゴミ箱を複数用意し、動線や見た目を考えて設置する。
②ゴミ袋を分別の種類ごとに用意する。
③分別種類ごとの収集曜日を把握する。
④分別してゴミ袋に入れる。
⑤不快なゴミが外側から見えていないか確認する。
⑥袋に破れがないか、持ち手は汚れていないかチェックする。
⑦空気が入らないように、または抜きながらゴミ袋の口をしっかり結ぶ。
⑧ゴミ捨て場に持って行く。
⑨ゴミ箱が汚れていたら洗う。
⑩新しいゴミ袋をゴミ箱にセットする。

 たいていの夫が「ゴミ捨て」と思って行っているのは⑧のみ。妻からすればほかに9工程もある。さらに言えば、④の分別には、生ゴミ、可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミがあり、資源ゴミには、ビン、カン、ペットボトル(ペットボトルのふたは別に集める、ペットボトルに巻きついているラベルははずす)、新聞紙、雑誌、段ボール、牛乳パック、布などなど、さらに細かい分別が必要となる。それらを洗ったり、つぶしたり、縛ったりする作業が必要だ。

 洗濯もしかり。用途に合わせて洗剤を揃える。白物と色物に分ける。普通洗いの洗濯物とおしゃれ着洗いの洗濯物を分ける。えり、袖口、靴下など汚れがひどい場合は、洗濯機に入れる前に予洗いをする。洗い上がったら、一つひとつシワを伸ばして干す。色物は裏返して干す、など。ただ汚れものをポンと洗濯機に放り込めば、清潔な衣類となって目の前に出現するわけではない。
 調味料や日用品をチェックして、切れる前に買い足す、詰め替え用のものは詰め替えるといった家事も、黙々とこなす。

 また、妻たちは、日々「ついで家事」を行っている。トイレに立つついでにリビングのテーブルに置かれたコップをキッチンに持っていく、歯を磨くついでに鏡も磨く、出入りのついでに玄関の靴の埃ほこりを落として下駄箱にしまう、など。これもリストアップしていくとキリがない。

名もなき家事が妻を追い詰めている

 これらの家事は、子どもが生まれると、飛躍的に増え、しかもまったく思い通りにいかなくなる。コレをやろうと思っているところで、投げたおもちゃが取れないと癇癪を起こす。アレをしようと立ち上がると、牛乳をこぼす。ようやくソレをし始めると、吐いたり、ウンチをしたりする……。結果、名もなき家事はどんどんたまり、できないことに妻はストレスを募らせていくことになる。
 そこに、夫の無神経な行動と発言である。夫はトイレに立っても、目の前の汚れたコップを下げようとはしないし、トイレの帰りに、キッチンに寄って水を飲んで、そのコップをそのまま放置して、家事を増やしさえする。

 さらに、調味料や日用品が切れようものなら、「ママ、ソース切れているよ~。一昨日からないじゃん」などと、平気で口にする。
 妻の怒りは、こうした名もなき家事に、実は夫は気づいていながら(実際は気づいていないのだが)、どうせ妻がやるだろうと思っているということにある。たとえ、夫が気づいていないことがわかっても、それはそれで非常に腹立たしい。
 いずれにしても妻は、キリのない名もなき家事に、じわじわと追い詰められ、絶望感にさいなまれるというわけだ。

毎日じゃなくていい、とにかく妻をねぎらおう

 ここで、男性脳のために弁明するならば、男性脳に、女性脳が求めるレベルの家事を要求すると、女性脳の約3倍のストレスがかかるということだ。男性脳は、女性脳に比べて行動文脈が短い。女性脳は、「トイレに立ったついでに、ここのものをあちらに持って行き、そして、トイレに行って、帰りにこれをああして、こうして」と比較的長い行動文脈を常時紡ぎ続けているのだが、男性脳は、空間認知をして危険察知することに神経信号を使っているために、この能力は低い。低い能力を駆使すると、当然、ストレスがかかる。

 というわけで、男性脳は、トイレに行くのなら、行く、出す、戻る、しかない。キッチンにコップを持って行くなら、それしかできない。妻から「コレをやるならついでに、アレとソレもやって」と言われると、非常に大きなストレスになる……と解説したところで、妻が納得するとも思えないが。

 名もなき家事に太刀打ちできない男性脳が、名もなき家事と戦っている妻を助けることは、不可能に近い。それでも、毎日毎日、チリのように積もり続けている妻の怒りが、いつか大爆発するのを防ぎたければ、とにかくねぎらうことである。

 夏の昼時、妻がそうめんをゆでていたら、「こんなに暑い中、台所仕事は大変だよね。ありがとう」と声をかける。休日に一緒に買い物に行ったら、「牛乳1本だって、赤ちゃんを連れてたら、運ぶの大変だよな。いつも一人で頑張ってくれてありがとう」と言う。

「うちは、小さな子がいるのに、本当によく片付いてるなぁ。おふくろなんて、しっちゃかめっちゃかだったよ」なんて、この際実母を悪者にしてもいい。何もできない妻でも、「笑顔でいてくれて嬉しいよ。ほっとする」とねぎらう。とにかく、ねぎらい、感謝する。
 毎日じゃなくていいのである。毎日じゃ、かえって噓くさい。月に一度だって、かまわない。ぜひ、心がけてみよう。

実現可能なタスクを決めて、“プロ夫”を目指せ

 さらに格上の「夫のプロ」を目指すなら、「名もなき家事」の存在を知覚することから始めよう。休日の朝、ウースターソースを使いながら、「よく考えると、いつもこれがちゃんとあるってすごいことだ!」と言ってみる。そこから、怒濤のように「あなたは気づいていないかもしれないけれど」と、名もなき家事を列挙されることを覚悟の上で。
 そして、妻がしてくれている名もなき家事の一つを自分のタスクにすることを申し出よう

 猫砂を切らさない、冷蔵庫の製氷機の水は切らさない、要冷蔵食品が食卓の上に残っていたら素早く冷蔵庫にしまう、といった実現可能なものをまずは一つ。
 妻は「名もなき家事」に夫が気づいて、ねぎらってくれただけで、かなり気が晴れるし、その中のどれかを担おうという夫の気持ちが嬉しいものなのだ。
 ただし、妻の反応に期待しすぎるのは厳禁。「今まで10個飛んできた弾が、7個に減る」くらいに思っておこう。その代わり、定期的にくる大爆発はかなり防げるようになるはずだ。

 ここで、男性でもできそうなタスクをリストアップしておこう。

● お米を切らさない(妻的には運ぶのに重くて大変なので助かる。夫的には頻度が低いのがいい。牛乳などの生鮮食料品は、頻度が高く失敗リスクが高いので、自分からは申し出ないほうが無難。ただし、頼まれたら覚悟を決めよう)。
● 猫砂を切らさない(同上)。
● 冷蔵庫の製氷機の水を切らさない。
● コーヒーを切らさない(嗜好品のキープは忘れがちなので助かる)。
● トイレの黒ずみを防ぐ薬を週1で投入する。
● 毎朝、ペットに水とご飯をやる。

● 毎朝、ベランダの植物に水をやる。
● 洗面所の鏡をきれいにキープする。
● 肉を焼く(あれこれ並列して家事をこなしているときに、集中力のいる家事はストレスなので助かる
● そばをゆでる(同上)。
● コーヒーを淹れる(同上)。
● 寝る前に米を研いで炊飯器にかける(お風呂上がりの一仕事、朝の心配事が消えるのでありがたさが大きい)。
● 我が家だけの、名もなき家事を見つけて引き受けられたら、それが最高!

失敗はつきもの。かわいげでごまかそう

 さて、自分で家事のタスクを決めて、宣言しておきながら、すっかり忘れてしまうこともある。自分でも「しまった」と思っているところを、妻に指摘されて逆ギレ、なんてことにならないように気をつけよう。
 家事のタスクを夫が自ら引き受けてくれた時点で、妻はかなり満足しているので、数回忘れたからといってそれほど腹を立てたりはしない。
 ただし、「必ず今日やってね」と念をおされた用事を忘れてしまうのは論外。度重なる「忘れてた」は、女性脳にとって「あなたにとって、私は簡単に忘れられるような存在」と同じ意味だからだ。単に牛乳を買い忘れただけなのに、妻は自らの存在意義まで疑い始めるから要注意。

 そこで、失敗してしまったときに、妻を怒らせず、うまく切り抜ける方法がある。余計なことを言わずに真摯に謝る。これが一番被害が小さい。しかも、ちょっと大げさなくらいがちょうどいい。「あ~もう~どうして。がっくり……」などと声に出して、ガックンとうなだれてみせる演出も効果的。
 いい歳のオジさんが、失敗にうなだれている図はかわいげがあり、「バカじゃないの」と言いながらもクスッとさせたら夫の勝ちだ。何度もやると効果半減だが、時には、かわいげで切り抜ける方法も覚えておきたい。

photos:gettyimages

14万部突破!妻のトリセツ』著・編:黒川伊保子 定価:本体800円(税別)/講談社+α新書

Author profile

黒川 伊保子
黒川 伊保子
Ihoko Kurokawa

株式会社 感性リサーチ 代表取締役
人工知能研究者、脳科学コメンテイター
感性アナリスト、随筆家

1959年、長野県生まれ、栃木県育ち。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI (人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した“世界初”の日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『前向きに生きるなんてばかばかしい 脳科学で心のコリをほぐす本』(マガジンハウス)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)など多数。

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