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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION 赤峰塾!間違いだらけの洋服選び

「ドクトルはこんなに怖かった!」愛弟子2人がかわいがりを告白!

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ジェントルマン道を極めるドクトル赤峰とファッション界のレジェンドたちが、イマドキファッションの風潮やヤワな着こなし、ガッカリスタイルなどをスパッと一刀両断! 男として、あるいは女として、「清く、正しく、美しく」生きるために必要な服装術や、服を着ることの意味・意義をストレートに語り尽くします。

「40になったら、男は質」。あなたな〜らどうする〜♫

良いモノの作り手というのは、自分の中に「良い原酒」があって、それをどうブレンドすれば「自分の味」になるのかを知っています。今回登場していただいたファッションデザイナーの中村三加子さんは、お父様は友禅作家、お祖父様は山岳画家という「芸術家系」で、テキスタイル(生地)を学んでアパレルに入りましたが、テキスタイルという服作りの基本を知っている強みが、彼女が手がけるブランド『MIKAKO NAKAMURA(ミカコ ナカムラ)』から伝わってきます。60年代のパリ・オートクチュールの考え方を踏襲しながら服作りをしている中村さんの“エレガンスの考え方”に触れます。


『MIKAKO NAKAMURA(ミカコ ナカムラ)』2019年春夏コレクションより

独立して、会社を立ち上げて、ブランドをローンチ

赤峰 対談の前編からの続きですが、中村さんから相談を受けたビジネスパートナーの堀越(重弘)君は、ブランドの立ち上げのときにこう言うんだね。「一点も売れなくていいけど、絶対に人真似ではない服、本当に作りたい服を作って」と。

中村 そうです。それで最初にサンプルを5着作りました。当時は、自分の好きなモノと、お客さまが好きと言ってくれるモノをどうリンクさせるかでかなり悩みました。

赤峰 どうして悩んだの?

中村 お客さまに「どんな服が欲しいですか?」ばかり言っていると、ただの洋裁屋になってしまいます。最近は、お客さまが考えている以上に似合うモノを生み出すことを考えていますね。

赤峰 なるほど。御用聞きではダメだからね。それで堀越君、2004年にブランド『ミカコ ナカムラ』をローンチしてどうでしたか?

堀越 初年度の売上は2着でした。今では笑い話にできますが、本当にビックリしました(笑)。もう大変です。

中村 最初からオートクチュールとセミオーダーだったので、苦戦は覚悟の上でしたが……。

堀越 翌年は10着売れましたが、営業として悩むわけです。それで赤峰さんに相談すると、「言い訳は言うな! 考えるのがお前の仕事だ!」と言われ続けて15年(笑)。

赤峰 でも、答えは出ているじゃないか。

堀越 そうですね、赤峰さんは答えを出してくれませんでしたが、答えは「15年続けられたこと」です。


南青山サロンでは、株式会社オールウェイズが展開するブランド『M・fil(エムフィル)』『NUMBER M(ナンバーエム)』も揃える

男の服と女の服の決定的な違いと、服作りの原点

――赤峰さんは、男の服と女の服はどこが違うと思いますか?

赤峰 男の服は「英国や欧州の貴族階級」が着る手縫いに始まって、それから産業革命が起きて、軍服を縫っていた英国のサヴィルロウの仕立屋が背広を縫うようになっていったという風に「テーラード=ビスポーク」という基本がある。それに対して婦人服は「デザイン=造形」していくのが仕事で、ドレープを出す、バイアスで作るなど身体のシルエットを強調するのがクチュールになるわけ。

――中村さんが手がけている婦人服のオートクチュールというと、どうしても皇室をイメージしますが。

赤峰 英国皇室をイメージする「王室の文化」が基本にあるからね。でも中村さんが作る服は、ある種開放的で堅苦しくない。『ミカコ ナカムラ』のベストセラーの「ルナ」というカシミアコートがあるけど、何にも縛られていない、リベラルな感じを受けます。

――中村さんは服作りにテーマは設けますか?

中村 シーズンテーマは必ず設けますが、単なるイメージソースではなくて、「こういう思想を強く出していく」という大元になるものです。今、このサロンにあるのは2019年春夏コレクションですが、今季のテーマは南アフリカのズールー語の「ウブントゥ(ubuntu)」です。他者への思いやりとかみんながあってこその自分という意味ですが、「人と和をもって暮らしていこう」、「チームワークを強めたい」、「洋服で人と人を繋げていきたい」という思いから選んだ言葉で、デザインではリボンや輪がそれを表しています。

――中村さんの服作りの興味や関心が、今そこにあるということですね。

中村 私たちは、いわゆる大量に作って、残ったら捨てて、また数を作ってという従来のアパレル産業の構造に参入する気持ちはまったくありませんが、アパレル産業自体がこれから大きく変わっていくだろうなと思います。ファッションビジネスが変わっていくときに、どういうモノを作っていけばお客さまに喜んでいただけるか、自分が何を作っていくべきなのかを強く感じています。自分たちが大事に服を作って、お客さまにお届けしていきたいという思想に挑戦していければいいなという気持ちですね。

赤峰 それは、モノと同時に想いも込めて作っていけるかということですよ。

装いは自分のためだけではなく、人のためにあるもの

――FORZA STYLEは40代の働き盛りのビジネスマンの読者が多いのですが、今の40代のスーツの着こなしを見ていかがですか?

中村 故十八代中村勘三郎さんの有名な「型破り」の話がありますが、自分流に変化させる、ちょっと崩すというのを「型がない人」がやると「型なし」になってしまいます。ヨーロッパではテーブルマナーと同じように、親から「ディナーの時にはジャケットを着用する」、「女性をエスコートするときはコートを持つ」など様々な“服育”を受けますが、日本にはその文化はありません。だからこそ、20代、30代のときにいろんな洋服を着ながら「型=基本」を学ぶべきで、なんでもかんでも勝手にやることがカッコイイというのは、私は好きではありません。装いは自分のためだけではなく、人のためにもあるものなので、一緒にいる人が不快じゃない格好であるべきです。

赤峰 クールビズが始まってから余計酷くなったね。チコちゃんに「ぼーっと着てるんじゃないよ!」と叱られたほうがいい。

堀越 自分は、赤峰さんと一緒にいて若いときから「きちんとしろ」といつも言われてきましたが、自分が40歳になったときに、「おまえな、40になったら男は質だよ」と言われたのが、自分の人生に大きなインパクトを与えました。中村さんが「自分のブランドを始めたい」と言ったときに思い出したのが赤峰さんのその言葉で、「だったら好きなことをやりましょう」、「だったら誰にもできないことをやりましょう」、「だったら売れなくて結構です」と中村さんに言ってしまった(笑)。

赤峰 堀越君は立場上、「売ってナンボ」の営業責任者なのにね。

堀越 「男40は質だからな」と言われて、「質とは何か?」は今でも考えています。それで、自分が55歳を越えたときに「その答えは、身の丈か」と。「身の丈」は赤峰さんがよく言う言葉で、これでいいのかなと。

中村 私も堀越さんも、身近に怖い人がいてよかったと本当に思っています。


『ミカコ ナカムラ』は、雑誌『Precious(プレシャス)』などでよく紹介されている

2019年の赤峰さんへメッセージ

中村 若い頃にモノの考え方やモノの見方など教えてくれた赤峰さんには本当に感謝しています。あの時にグレンオーヴァーに入って、赤峰さんがいなければ入社していなかったし、ここまでやってこられたのはそれが原点。いつまでも変わらずにいてください。

堀越 食事のときのテーブルマナーから洋服の着方、商売まで、親よりも生きていく方法を教わった人で、いつも規範になっている存在です。健康で長生きしてください。

『MIKAKO NAKAMURA』南青山サロン
東京都港区南青山5-5-25 T-Place(南青山郵船ビル)A棟203
03-6427-2435
11:30~20:00
定休:月曜(月曜日が祝日の場合は、翌火曜休)、年末年始

ミカコ ナカムラ
http://mikakonakamura.com/

 

「ドクトル質問箱」では、赤峰さんへの質問をお待ちしています。こちらforzastyle@kodansha.co.jpまで質問をお送りください。

ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com

Photo:Riki Kashiwabara
Writer:Makoto Kajii



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