イタリアのセンスが光る、異素材使いの妙
第112回はウブロのビッグ・バンです。
歴史あるものには伝統や格式という名の下に不文律が存在します。しかし、そういったいわば常識を打ち破ろうとする存在が台頭するのもまた世の常。たとえば高級時計の世界ではラバーストラップはタブー視されていましたが、それをふたつの衝撃によって覆したのが1980年にスイス・ニヨンでイタリア人のカルロ・クロッコによって設立されたウブロでした。
まず、ウブロが時計業界に与えた“小さな衝撃”。それは、高級時計にラバーストラップを採用するということでした。貴金属を使う高級時計には、同じ金属かレザーのベルトを合わせるものと相場が決まっていたため、古いスイスの時計業界で“異端児”として扱われるように。ですがヨーロッパの王族の間で人気となり、次第にその地位を高めていきます。
そして、ウブロが現在の地位を築き上げるきっかけとなったのが、2005年の“大きな衝撃”。「ビッグ・バン」コレクションの登場です。ラバーストラップだけでなく、カーボンやセラミックといった異素材を次々に採用し、爆発的に(それこそビッグバンのように!?)世界中でヒットし、セレブがこぞって愛用するウブロの定番モデルとなりました。
「ビッグ・バン スチール セラミック」は、そんな2005年のバーゼルワールドで発表された最初のモデル。ブランド名の「ウブロ=舷窓」をイメージしたビス留めのセラミックベゼルにカーボンプリントのダイアル、そしてラバーストラップを採用し、ウブロが掲げるコンセプト「アート・オブ・フュージョン(異なる素材やアイデアの融合)」を強く意識させるモデル一本です。
ウブロといえば、その個性的なデザインにばかり目が行ってしまいがち。しかし本当は、伝統的な貴金属に未来的な素材を組み合わせる“異素材の融合”というチャレンジングな姿勢こそが支持される理由なのかもしれません。オトコたるもの、いつでも常識に立ち向かっていく、そんな存在でありたいものですよね。
Text:Ryo Ishii
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