FASHION ― 赤峰塾!間違いだらけの洋服選び

【今回は特に読まないとソン】藍や紅花、草木染めの奥深さを語る!

2018.12.21 2018.12.21
2018.12.21
ジェントルマン道を極めるドクトル赤峰とファッション界のレジェンドたちが、イマドキファッションの風潮やヤワな着こなし、ガッカリスタイルなどをスパッと一刀両断! 男として、あるいは女として、「清く、正しく、美しく」生きるために必要な服装術や、服を着ることの意味・意義をストレートに語り尽くします。

最初に「自然物と人間の関係を知りたい」と思った

今回は、50年以上の交流がある株式会社シオンテック代表の菱川恵介さんに登場していただきます。菱川さんは1966年に婦人服のデザイナーとしてスタートし、80年代にはホンダF1のチームウェアやレーシングスーツを開発。90年代に入ってそれまで趣味にしていた自然の恩恵の研究を本格化させ、98年に草木染めの量産化技術を研究するシオンテックを設立しました。菱川さんは自分の仕事を、「繊維の技術を15年、クルマ産業を17年、草木染を20年」と言います。


ビンに入っているのは「ラピスラズリ」の粉末。今日挿してきたポケットチーフと合わせてみて、ご満悦のドクトル赤峰
「自然物と人間」。その関係を知りたくて

赤峰 菱川さんと知り合って、早いモノでもう50年以上になりますね。

菱川 赤峰さんが市谷田町の会社で紳士服のMD(マーチャンダイザー)をやっていたときに、赤峰さんの下に僕の大学の後輩がいて、僕は婦人服をやっていて、よく喫茶店で会って生地や機屋の話をしましたね。当時から赤峰さんはダンディでいろんなことを知っていて、勉強のつもりで会っていました。

赤峰 お互い20代でしたね(遠い目)。

菱川 赤峰さんにはアメリカのファッションのことをよく教えてもらいました。当時はアイビーでしたが、メンズはウィメンズと違って基礎がありますから、それを習いました。赤峰さんは、その頃から「神さま、赤峰さま」で有名でした。それからしばらく会わない時期がありましたね。

赤峰 デザイナーを辞めて何をされていたんですか。

菱川 あの頃、糸川英夫先生の『システムエンジニア』という本を読んで触発されて、新潟に織りの勉強をしに行って織工をしていました。それから三菱レーヨンでテキスタイル開発を担当した後、本田技研が「ラッタッタ」というフレーズで有名なロードパルというスクーターを発売するときに、ブランドを立ち上げて安全に着られるウェア類を作りました。

赤峰 そうでしたか。それから7~8年前にオンワード樫山の「SHARE PARK(シェアパーク)」というブランドの展示会でバッタリお会いして。染めの研究をされていることも知らず、「今、何しているの?」と訊いてしまいましたね。ちょうど7~8年前にサスティナビリティ(持続可能性)やトレーサビリティ(追跡可能性)などが注目されて、オーガニックやボタニカルダイ(染め)など有機的なものがグッとフォーカスされました。菱川さんはなぜボタニカルダイの研究を始めたのですか。

菱川 「自然物と人間の関係を知りたい」という思いが抑えられなくて。遡るとかれこれ38年前でしょうか。


植物から抽出した染料で布を染めた見本
草木染めを知り尽くす菱川さんに教えてもらったこと

赤峰 菱川さんに教えてもらったことはよく覚えていて、そのひとつが「背守り」です。背守りとは江戸時代から昭和にかけての一般家庭で習慣だった赤ちゃんを守る「しるし=魔除け」です。生まれたばかりの幼児の背中から魔が入り込まないように、着物のネック部分に赤い糸でしるしを縫いましたが、その糸は紅花から抽出したものです。

菱川 日本では「赤」は魔を祓う神聖な色で、中でも紅花から取れる赤=紅は人生の節目に用いられる習わしがあります。

赤峰 また昔の産着(うぶぎ)は麻の葉柄の着物でしたが、それは麻が雑草の中に交じってもすくすくと丈夫に真っ直ぐ育つ植物ということにあやかっています。

菱川 紅花も麻の葉柄の産着もどちらも植物が本来持つ力を上手に使った、親心の賜物ですね。


すべて植物の実や幹、茎などのサンプルが瓶詰めされている
400種類の植物がある部屋で、染めの由来と面白さを知る

赤峰 この部屋すごいでしょ? こういうのを見ると、僕は燃えちゃうんだよね。菱川さん、FORZAの読者に何かわかりやすいボタニカルダイの例を教えてくれませんか?

菱川 そうですね。「ミロバラン」というクルミのような実がありますが、「ブリティッシュカーキ」の元の実で、軍服やトレンチコートのカーキ色は、このミロバランの実を砕いて染料に使います。

赤峰 これは「実=身を守る」ということで、この実で染めれば弾が飛んでこない、死なないとも言われていました。

菱川 それからこれは「ログウッド」というメキシコにある木で、プレスリーの赤いギターのボディはこれで染めていました。このログウッドに木酢酸液を混ぜると黒になり、ナポレオンの黒の服はこの黒で染めていて、ブルーにもなるので、イギリスのネルソン提督のピーコートはこれのブルーです。

赤峰 ログウッドはとても貴重な木で、ロッグウッドの権利を巡って無敵艦隊時代の英国がスペインと戦争をしたそうです。

菱川 中国ではこれで染めた黒の服は「神界・霊界・人間界の三界に通じる」と言われ、喪服ならお清めになるとされています。塩いらずですね。

赤峰 本当にこういう話をし出すと尽きることがないのですが、菱川さんの会社はその草木からの染めを研究し、データ化して、膨大な資料をお持ちなわけです。


ログウッドの赤い溶液に木酢酸液を混ぜると……

混ぜると真っ黒に。まさに化学の実験のようだ
菱川さんのボタニカルダイ研究の価値とは?

赤峰 自分は、「本来は、元来は、もともとは」という「元来を訪ねて三千里」のような生き方をしていて、「染める、紡ぐ、織る」のルーツを辿っていくと、菱川さんの存在と知識は僕にとって非常に大切なものです。また、僕にとって一番大事な生き物は植物で、梶が谷の『めだか荘』でも、自然に話しかける気持ちでへちまを育てています。

菱川 このボタニカルダイを研究する会社を20年前に作った理由は、何十年か後に、人間が自分たちが作ったものに飽きてしまって、「自然を見直す時期に入るんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

赤峰 すごいですよね。予言者のようですよね。

菱川 植物の中にどういう物質がどれぐらい入っていて、どんな役割をしているか、そしてその効果や効能は何かということを調べるわけです。そして、今の技術を使って新しい付加価値を調べることも重要だと思っています。

赤峰 なんだかすごいことを簡単に言っていますが、たとえば「藍染め」をすると虫がつかない、ヘビが寄ってこないんですよ。藍染めの中にポリフェノールが入っていて、抗菌性があるからでしょう。

菱川 そして藍は温かいので、江戸時代以前の冬には藍のふとんが使われていました。海外では、アイルランドで漁に出るための服は海風や潮で繊維が腐ってはいけないから、海辺にあるタンニンの多い植物で染めています。

赤峰 どれも「先人の素晴らしい知恵」ですね。今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。

(fin.)

「ドクトル質問箱」では、赤峰さんへの質問をお待ちしています。こちらforzastyle@kodansha.co.jpまで質問をお送りください。

ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com

Photo:Riki Kashiwabara
Writer:Makoto Kajii

KEYWORDS
赤峰幸生

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