だいぶ汚れてますが、思い入れが強くて捨てられません
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。中村達也さんに続いて登場するのは、株式会社スピラーレの代表取締役社長、神藤光太郎さん。
神藤さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第8回目は、「ラルフローレン(Polo Ralph Lauren)」のシャツジャケットです。
これは思い出深い品でして。中学生ぐらいだったと思うんですが、親父がニューヨークに行って買って来て着ていたモノを、高校生になったときに親父に「くれ」って言って貰ったんです。
さかのぼると15、6年袖を通していなかったんですが、数年前実家に帰省した際に引っ張り出して着てみたら、調子イイなと思って、持って帰って来ました。
親父から譲り受けた当時も、ジャケットだったのでそこまで頻繁には着ていなかったですし、今の家に持って帰ってきてからもあまり着てはいないんですが、とにかく思い入れの強いアイテムなんです。
襟なんかも だいぶ黄ばんでしまっていて汚いんですが、どうしても捨てる気にはなれない。親父との思い出っていうのもあるとは思うんですが、なんか生地の具合がイイんですよ。柔らかいですし、着心地も良い。
僕はイタリアサイズで48を着ているから、アメリカサイズの36を丁度良く着られるのはおかしいはずなんです。もう少し小柄な人用に作っているはずで、当時は意図してこのサイズ感には仕上げてないとは思うんですが、羽織ってみるとピッタリで、今のサイジングなんです。
ピタッと収まるし、着丈も長すぎず短すぎず、だから今でも着ているんだと思います。
今後も頻繁に袖を通すことはないとは思いますが、思い入れも強いので、捨てることはないかと思います。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
株式会社スピラーレ 代表取締役社長
クリエイティブディレクターとしてインポーター会社のメンズ部門を統括した実績をもとに、現在は新たなビジネスの準備に取り掛かる。イタリアのニットブランドを皮切りに、日本に魅力的なブランドを持ち込むべく、日夜奔走中。