止まらない場合は病気のおそれも
ほとんどの場合、原因がよくわからない普段のしゃっくりは数分から数時間以内におさまることが多く、そのようなケースでは特に他の病気を気にする必要はありません。
しかし、2~3日経ってもまだしゃっくりが止まらない「持続性吃逆」と呼ばれる症状がある場合、また1ヶ月以上しゃっくりが出続ける「難治性吃逆」になってしまった場合は、病院を受診してみてもいいかもしれません。
①長く続く場合は病院へ
しゃっくりが何日も続くと、睡眠を妨げられたり、食事ができなくなったり、意識障害が出始めたりと、日常生活だけでなく生命活動にも支障が出るおそれがあります。医師の診断を受けると、きちんとしゃっくりを止める薬を処方してもらえます。
中枢性のしゃっくりでは脳梗塞や脳腫瘍、末梢性のしゃっくりでは脳底部や頸部、リンパ節の腫瘤、肺炎や肺がん、気管支ぜんそくなど呼吸器系の病気が関係していることもあります。また胃潰瘍や胃がん、胃腸炎や腸閉塞といった消化器系の病気が原因ということも考えられます。しゃっくりで病院に行って検査してもらったらこれらの病気が発見できた、ということもあるので、気になる場合は病院に行くようにしてください。
しゃっくりはいろいろな病気に関係しているため総合病院を受診するか、または横隔膜のけいれんであるためけいれんを専門とする脳神経内科を受診するのがよいでしょう。
②漢方薬で治せることも
しゃっくりで病院を受診した際、薬を飲むのに抵抗がある患者には漢方が処方されることもあるほど、漢方薬はしゃっくりへの効果が期待できます。病院に行くほどではないという人や、短時間でおさまるけれどよくしゃっくりが出るという人は、ドラッグストアでも買える漢方を飲むのもひとつの方法です。よくしゃっくりに処方される漢方薬をご紹介します。
・芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
けいれんを抑えることができるこの漢方は、こむら返りにもよく用いられるものです。鎮痛作用もあるため、胃痛や生理痛などにも効果があります。
・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
かつて吉田茂首相のしゃっくりも治したというこの漢方は、胃腸の調子が悪いときに用いられることもあり、消化器系が原因となっているしゃっくりやストレス性のしゃっくりに効き目があります。
・柿蔕湯(していとう)
柿のヘタを煎じたものがしゃっくりを止めるのによい、と昔からの言い伝えにありますが、その柿のヘタを含む生薬がこれ。市販されているもののパッケージの中には、しゃっくりに効能があると記載されているものもあります。
しゃっくりを100回したら死ぬ!?
しゃっくりにまつわる迷信として、「しゃっくりを100回続けてすると死ぬ」というものがあります。しかしギネス世界記録には、なんと68年間、回数にしておよそ4億3000万回しゃっくりをし続けた男性が世界最長記録保持者として掲載されています。しゃっくりが出続けること以外は普通に生活を送り、しゃっくりが止まって1年後に亡くなったそうです。
そこまでいかなくても、数えてみると100回以上しゃっくりが出たのに今も生きている、という人はもちろんいるでしょう。ではなぜこのような迷信が生まれたのでしょうか?
まず考えられるのは、そこまでしゃっくりが続くことはなかなかない、ということを逆説的に表しているというもの。それから、医学が発達する前は死因がはっきりしないことがあり、生前に変わったことといえば止まらないしゃっくりだったため、それを昔の人は結び付けて考えたのではないか、という説もあります。
そして、しゃっくりの原因には脳や消化器系、呼吸器系の病気が隠れているかもしれないため、しゃっくりがそのまま死に直結するわけではなくても、重大な場合は命に関わる病気を知らせるサインであるからこのように言い伝えられているとも考えられます。
しゃっくりがあまりに続き、身体にも不調が見られる場合は、たかがしゃっくりと見くびらないほうがいいのかもしれませんね。
まとめ
しゃっくりは、医学が進歩し続けている今も完全には原因が解明されていません。だからこそ、しゃっくりにまつわる迷信や、おまじないのような止め方が生まれていったのでしょう。
多くのしゃっくりは、続くと少し苦しかったり、真剣な場面においては支障をきたしたりすることもありますが、健康面で大きな問題があるというものではありません。無理に止めようとしなくても、少しすれば自然におさまります。どうしても今すぐに止めたい場合は、ご紹介した対処法を実践するか、漢方薬を服用してみてください。
しゃっくりが何日も続くという人は、思い切って病院を受診してみましょう。「しゃっくりなんかで病院に行くなんて大げさだし恥ずかしい」と思うかもしれませんが、実際に脳神経内科の医師には今までにもたくさんのしゃっくりを診てきたという人が大勢います。病院では薬を処方してもらえるだけでなく、重大な病気の早期発見につながるかもしれません。
「しゃっくり」と「しっかり」正しく付き合っていきましょう!
Photo:Getty Images
Text:N.M